Apr 27, 2026 interview

瀧本智行 監督が語る “事実に基づいた虚構”で嫌いだった細木数子を描く覚悟 Netflixシリーズ「地獄に堕ちるわよ」

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独自に編み出した六星占術と「大殺界」「地獄に堕ちるわよ! 」の強烈ワードで一世を風靡した占い師・細木数子。戦後の焼け野原で飢え、貧しさから脱するため高校を中退して夜の街で働き始めた細木は、若くしてナイトクラブを次々と成功させて「銀座の女王」と呼ばれるまでに登りつめる。やがて彼女は、そこで培った人身掌握術を武器に占い師として新たな道を歩き始める。だが、テレビや出版界を席巻する一方、霊感商法や裏社会とのつながりをささやかれ、黒い噂も絶えなかった――

波乱の人生の細木数子を演じたのは、人気と実力を兼ね備えた戸田恵梨香。他に「この女の半生を小説にする」と迫る作家・魚澄美乃里を演じる伊藤沙莉をはじめ多くの実力派俳優たちが名を連ねる。瀧本智行と大庭功睦の二人が監督を務め、昭和から平成へ、激動の時代を生き抜いた一人の女の素顔に迫る。

予告編制作会社バカ・ザ・バッカ代表の池ノ辺直子が映画大好きな業界の人たちと語り合う『映画は愛よ!』。今回は、Netflixシリーズ「地獄に堕ちるわよ」の瀧本智行監督に、本作品や映画・ドラマへの想いなどを伺いました。

「細木数子」という虚構にして実在

池ノ辺 私にとって細木数子さんは、ヒーローみたいな存在だったんです。彼女の人生、いろいろあったんだろうなとわかっていたんですが、ここまで壮絶とは思わなくて、かなりショックでした。ヒーロー像が崩壊したような感じですよ (笑)。

瀧本 それは、すみません (笑)。

池ノ辺 監督はなぜこのドラマに関わることになったんですか。

瀧本 そもそも僕は細木数子さんが嫌いだったんです。

池ノ辺 そうだったんですね。

瀧本 だから最初はお断りしていたんですよ。好きでもない人のドラマなんてできないよと。ドラマにしろ映画にしろ、長丁場ですから、主人公を愛せなかったらそれはちょっときついですよね。ところが「豚もおだてりゃ木に登る」じゃないですけど、プロデューサーが、「嫌いな人が撮った方がこの作品は絶対面白くなります」って言うわけです。まあ、よくある手口ですよね、それにまんまと乗せられて「そんなもんかいな」と思って引き受けることになったんです (笑)。

池ノ辺 あらあら (笑)。

瀧本 たぶん、名だたる監督たちはみんな断ったんだと思うんです。でも、誰もやりたがらないような火中の栗を拾うっていうのもまあいいかと、最初はそんな感じで始めました。

池ノ辺 細木さんを嫌いなまま始めたんですね。

瀧本 僕は校内暴力真っ只中の世代なんです。細木さんはうちの母親と同じ昭和13年生まれで、そういう親世代、あるいは権威主義的な人たちに対してはまず反発する、というのが、僕には三つ子の魂みたいに染み付いていたわけです。細木さんの最盛期でしたけど、テレビに映ったらチャンネルを変えるというくらい嫌いだったので、逆に言えば全く知らなかったんですよ、見ていなかったので。

池ノ辺 実際にドラマを撮ってみても嫌いでしたか?

瀧本 引き受けたからにはと、一から資料に目を通していきました。そこで、こういうこともあったんだ、ああいうこともあったんだと、初めて知って。嫌いな部分も含めて、細木さんというのは本当に人間的な、人間味のある人なんだというのがわかってきたんです。そこからようやく、その切り口で愛するに至る道を歩き始めた、というところでしょうか。

池ノ辺 そうすると最後には「細木さんのこの生き様は大好きだな」と思いました?

瀧本 「大好きだ」とまでは思いませんが、理解はできました。実人生においては、人間誰しも何かしらの自分の役割を演じているということはあると思うんです。でも、細木さんは「細木数子」というキャラクターを自分自身で演じていたんだと思います。彼女の本質的な部分というのもあるでしょうけど、あの威丈高な振る舞いも、演じている部分もかなりあったと思うんです。演じるのは、観客に対してであったり視聴者に対してであったり、あるいは六星占術を信じている人たちに対しても、半分くらいは演じてらっしゃったんだろうなと。僕の目にはそう映ったという僕なりの解釈なんですけど、このドラマを作るにあたっては、そういうコンセプトで組み立てていきました。