Apr 27, 2026 interview

瀧本智行 監督が語る “事実に基づいた虚構”で嫌いだった細木数子を描く覚悟 Netflixシリーズ「地獄に堕ちるわよ」

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「事実に基づいた虚構」の中にある本質

池ノ辺 この作品には、実在する方々も登場します。今回の撮影で、監督ご自身が特に大切にされていたことってなんですか。

瀧本 冒頭に、「事実を基にした虚構である」っていうことを銘打ってるんですけど、まず「事実を基にした虚構」って、それどういうこっちゃねんっていう話ですよね (笑)。ただそこは、これはやっていいのかどうなのか、という根源的なところで作り手としての倫理が問われる部分だと思うんです。それは意識していました。先ほどもお話ししたように、自分自身も何も知らなくて、さらに今の若い人たち、ましてや海外の人たちなどは細木数子さんのことを全く知らない。そういう人たちにその本質を理解してもらうにはどうしたらいいのか、ということは散々悩みました。その結果として今の形に落ち着いたわけです。

池ノ辺 具体的にはどういったところですか。

瀧本 伊藤沙莉さんが演じた魚澄美乃里という売れない小説家が、僕の分身なんです。だから僕自身が本当に、もし細木さんと会って話をしていたらという設定で、この物語の構造からセリフのやり取りから考えて、脳内で彼女と対話をしながら作ったようなところはあります。そうでもしないと「事実に基づいた虚構」なんていうことを引き受けられないですよ。ですから、「これは全部、悪いのは俺」というのを最初に宣言して (笑) 、どんな批判でも受け入れる。その覚悟でやりました。でも、この今の形でなければ、僕は「細木数子」という存在を描けない、と思って判断した結果です。

池ノ辺 細木さんのいろんな過去が出てきて、最初は驚きましたけど、細木さんが生きていた時代なども考えれば、彼女にとってはそうとしか生きられなかった、そういうことも伝わってきました。今、お話を聞いて、監督がいろいろと対話しながら一つ一つ作り上げていったんだなと、納得しました。

瀧本 そう言っていただければ何よりです。あとはもうお客さんが自由に見てくだされば (笑)。

池ノ辺 では、最後の質問になります。監督にとって映画を作ること、そして今回のようなドラマを作ることって、何ですか?

瀧本 うーん‥‥。このドラマの最終回で、僕の分身である伊藤沙莉、つまり美乃里と、戸田恵梨香さん演じる細木数子が対峙するんですね。とはいっても、もちろんこれは僕が脳内で対峙してたんですけど (笑)。美乃里は売れない小説家という設定なんですが、その時美乃里は「自分にとって小説というのは、ただの生活のための道具じゃなくて、生きるためのもの‥‥自分が生きている意味、自分が存在している意味そのものなんです」というセリフを言う、言わせているんです。彼女にとっての小説が、僕にとっての映画やドラマ、つまり仕事です。僕にとっての仕事はまさにそういうもので、僕から仕事をとったらなんの価値もないような人間です。ですから、何かと問われれば、「自分が存在している意味」かなと、ちょっと大仰ですが、そんなふうに感じています。





インタビュー / 池ノ辺直子
文・構成 / 佐々木尚絵
撮影 / 岡本英理

プロフィール
瀧本 智行 (たきもと ともゆき)

監督

1966年、京都府生まれ。2005年映画『樹の海』で監督デビュー。同作で東京国際映画祭日本映画・ある視点部門作品賞・特別賞受賞。主な作品に映画『犯人に告ぐ』(07)、『イキガミ』(08)、『スープオペラ』(10)、『星守る犬』(11)、『はやぶさ遥かなる帰還』(12)、『脳男』(13)、『去年の冬きみと別れ』(18)など。

作品情報
Netflixシリーズ「地獄に堕ちるわよ」

戦後の焼け野原で飢え、貧しさから脱するため高校を中退して夜の街で働きはじめ、20歳そこそこでナイトクラブを次々と成功させて「銀座の女王」と呼ばれた細木。夜の街で培った人心掌握術を駆使し、その後占い師として一斉を風靡する一方で、霊感商法や裏社会とのつながりなど、黒い噂が囁かれた女傑の素顔とはー?戦後復興期の新橋、銀座、赤坂の賑わい、高度成長期とオイルショックによる終焉、そしてバブル経済期に視聴率と大金を産む寵児にかしずくマスコミ業界の内幕といった、昭和から平成にかけての60年にわたる風景を鮮やかに映像化しながら、女の壮絶な闘いと欲望渦巻く虚々実々のドラマが繰り広げられる。

監督:瀧本智行、大庭功睦

出演:戸田恵梨香、伊藤沙莉、三浦透子、奥野瑛太、田村健太郎、中島歩、細川岳、細田善彦、周本絵梨香、金澤美穂、笠松将、永岡佑、中村優子、市川実和子、高橋和也、杉本哲太、余貴美子、石橋蓮司、富田靖子、生田斗真

2026年4月27日(月) Netflixにて世界独占配信

作品ページ 地獄に堕ちるわよ

池ノ辺直子

映像ディレクター。株式会社バカ・ザ・バッカ代表取締役社長
これまでに手がけた予告篇は、『ボディーガード』『フォレスト・ガンプ』『バック・トゥ・ザ・フューチャー シリーズ』『マディソン郡の橋』『トップガン』『羊たちの沈黙』『博士と彼女のセオリー』『シェイプ・オブ・ウォーター』『ノマドランド』『哀れなるものたち』『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』ほか1100本以上。最新作は『レンタルファミリー』
著書に「映画は予告篇が面白い」(光文社刊)がある。 WOWOWプラス審議委員、 予告編上映カフェ「 Café WASUGAZEN」も運営もしている。
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