近代金融の基礎を築いたとも言えるロスチャイルド家の歴史がスタートし、ヨーロッパの交通や金融の中心地でもあり、ユーロ貨幣を管理する欧州中央銀行の本店などがそびえ立つビル群とマイン川に沿って緑が多く広がる地区が融合するヨーロッパ最大の金融都市、フランクフルト‥‥。ここで25年前に立ち上がったニッポン・コネクションは、今や世界最大の日本映画祭に成長した。実は、本映画祭の創設者たちが、ある1本のVHSを観たことから、この映画祭の歴史が始まったという。スイスを拠点にエンターテインメントの魅力を発信している高松美由紀が、世界の様々な映画事情などを綴る『映画紀行』。今回は、ヨーロッパにおける日本映画の潮流を、この記念すべき映画祭を通して覗いてみたいと思います。

ぶっちぎりの安定感を持つ世界最大の日本映画のお祭り
今年は、記念すべき25周年記念回。本映画祭は国内外で話題になっている長編映画はもちろん、短編やドキュメンタリーも幅広く上映しており、“若手日本映画監督の登竜門”とも言われている。商業映画からニッチな作品まで、または日本では上映される機会が少ない作品などを含めて毎年約100作品ほど、映画を通して様々な方向から<日本の今>を発信し続けている映画祭。設立当初の2000年以降、世界最大の日本映画のお祭りとして規模拡大を続けている。

実際には、映画の上映と同時進行で、日本文化に関するワークショップやセミナー、会場では日本料理や物産品の販売なども行なわれており、映画鑑賞目的以外の来場者も (コロナ禍を除いて) 増加し続けている。本年度は、満席回が多く追加上映なども実施され、開催半ばにはすでに昨年度の来場者数(1万9000人以上)を軽く越え、2万人以上の集客を記録。作品に付随するゲストの多様さも、毎年話題であり、2017年には、俳優・役所広司が「ニッポン名誉賞」を受賞、映画祭に参加して大きな話題を呼んだ。今年のゲストも『ぼくのお日さま』(2024) の奥山大史監督、日本ではまだ劇場未公開である『Black Box Diaries(原題)』(2024) の伊藤詩織監督、初年度から数回参加しており本映画祭の“シニア”でもある山下敦弘監督 (『化け猫あんずちゃん』(2024) 『どんてん生活』(1999)) や豊田利晃監督 (『次元を超える』(2025) 『ポルノスター』(1998)) など、豪華なゲストが連日参加している。
