Apr 30, 2026 column

『プラダを着た悪魔2』 ストライク・ア・ポーズ、彼女たちの気品

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魔法のような高揚感に包まれる映画。2006年に公開された『プラダを着た悪魔』は、キャストやスタッフが驚くほどの大ヒット作になっただけでなく、時間の経過と共に影響力と重要性を増していく大きな作品になっていった。長い間アン・ハサウェイとメリル・ストリープは、続編の制作に消極的だったが、20年の時を経て、感動的な“リユニオン”を果たす。

『プラダを着た悪魔2』には、2006年から2026年の間に起こった時代の変化が積極的に取り込まれている。この映画は同時代を生きてきた人たちへ贈られた映画であり、次の世代へのバトンを託そうと、ランウェイをラストダンスするような映画だ。ミランダ、アンディ、エミリー、ナイジェル、彼女・彼たちのエレガントなスタイル=生き方で。

恋愛を主軸としない女性の映画

「彼女の顔は世界地図そのもの/分かるよね、そう、彼女は美しいんだ/彼女の周りは銀色に光り輝くプールのよう/周りにいる人たちはみんな彼女の恩恵を受けている」

「突然分かったんだ/これが私のなりたい姿だって」

(KTタンストール「Suddenly I See」)

女性が主人公の恋愛を主軸としないハリウッド大作映画。2006年に公開された『プラダを着た悪魔』には、ワンショットごとにファッションが変わっていく出勤シーンの、あの魔法のような画面の高揚感と共に、創作の自由と愉快な反逆性があった。脚本家のアライン・ブロッシュ・マッケンナには、ハリウッド的なロマンチックな結末を気にせずに書く自由が与えられた。前作はアンディという若い女性の“決断”をめぐる物語だ。男性同士が会話するシーンは、ほぼないに等しい。そしてアンディ (アン・ハサウェイ) の恋人になるネイトとクリスチャンという2人の男性は、彼女を通り過ぎていく存在にすぎない。学生時代を終え、どんどん変化していく有能なアンディに、男性陣は取り残されていく。アライン・ブロッシュ・マッケンナは、これまでのハリウッド映画で女性が担ってきた役割や、そのステレオタイプを意図的に反転させていた。たとえば多忙なアンディが、恋人のネイトの誕生日のディナーに間に合わないシーン。ネイトは拗ねてしまう。仕事に夢中なアンディを責め立ててしまう。このシーンは、従来のハリウッド映画における男女の役割を完全に反転させたものといえる。料理人のネイトは、アンディが間違った方向に進まないよう懸命につなぎとめようとしているように見えるが、その行為は同時に、恋人の輝かしい未来や野心を抑えつけるリスペクトのなさを示している。

前作の公開後、“ネイトは最悪な恋人”という論調が一部で盛り上がったのも、真っ当なことに思える。しかし学生時代のパートナーが、社会に進むにつれ、価値観のすれ違いを起こし離ればなれになることは、どこにでもある悲劇ともいえる。恋人たちは、まだ若かったのだ。続編において、ネイトは登場しない(ネイトを演じたエイドリアン・グレニアーは、『プラダを着た悪魔2』とスターバックスとのコラボCMで、「ネイトに乾杯!」とさわやかな姿を見せている)。ネイトを登場させるという案もあったようだが、既にジャーナリストとして独立した人生を歩んでいるハンサム・ウーマンであるアンディと、学生時代の恋人は、もはやほとんど関係がないという、アライン・ブロッシュ・マッケンナの意見は正しいように思える。

『プラダを着た悪魔2』でジャーナリストとして活躍するアンディの朝は、鏡の前でリップを塗るところから始まる。KTタンストールが歌う「Suddenly I See」が、映画のトーンを決定づけた前作の軽快なオープニングショットと同じだ。ただ決定的に違うのは、アンディが経験を積んだ大人の女性であることだ。カリスマ的なファッション界のアイコン、ミランダ・プリーストリー (メリル・ストリープ) のランウェイ社で初めて電話をとったときのような、あのドキドキするほど瑞々しいアンディはここにはいない (社会人を経験したことのある人なら誰でも共感することができる名シーンだった)。ジャーナリストになる夢を叶え、自信に溢れた一人の女性の姿がある。アンディは別のフィールドでリーダーシップを担っている女性の一人なのだ。続編に出演するにあたり、アン・ハサウェイはアライン・ブロッシュ・マッケンナにリクエストしている。アンディを子供のいない独身の女性として描いてほしいと。新たな家族を持つという選択をせず、世界中を冒険してきた女性が、再びミランダの元に戻ってくる。本作は人生のセカンドチャンスに関する物語ではなく、アンディは若い頃の野心を持ち続けている。前作のアンディが恋人のネイトや仲間たち以上に、ミランダと家族のような関係、母と娘のような関係を結んでいたことは、この物語を豊かにしている。キャリアを積んだアンディが、再びミランダの“娘”になる。


『プラダを着た悪魔』ディズニープラスで配信中© 2006 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.