レジェンド声優インタビュー 野沢雅子×平野文 (後編)
arranged by レジェンド声優プロジェクト
声優:野沢雅子 声優:平野文(聞き手)
- 平野:
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『ゲゲゲの鬼太郎』で初主演を務めて以降、マコさんの快進撃が始まります。調べてみると、本当にたくさんの作品に出演なさっていますよね。
- 野沢:
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あるプロデューサーさんが調べてくださったのですが、『ゲゲゲの鬼太郎』以降、主役が切れたことがないんだそうです。
- 平野:
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確かに、マコさんの出演作品を並べると主人公役がとっても多いんです。(登場作品のリストを眺めながら)ああ、『いなかっぺ大将』(1970年~)の大ちゃんとか懐かしいですね!
- 野沢:
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『いなかっぺ大将』の大左衛門もオーディションで決まった役だったんですが、そこに集まった役者が私以外、全員男性だったんですよね。「あのう、私、女なんですけど……」って言ったら「分かってますよ」って(笑)。でも、これも最終的には原作者の川崎のぼる先生に選んでいただいただきました。
- 平野:
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マコさんは、少年役がとてもお得意ですよね! 最初に少年役をやることになったきっかけは何だったんですか?
- 野沢:
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実は、それ、すごいエピソードがあるんです。テレビでアニメが放送される前、初めて洋画をテレビでやることになったとき、子供の役(吹き替え)を誰にやらせるかが大問題になりました。当時の吹き替えは生本番が当たり前でしたから、とてもじゃないけど本物の子役は使えません。でも、安心して任せられる年齢にまで成長した男性の声は野太すぎますよね。そこでそのプロデューサーは女性を代役に立てることを思い付いたんだそうです。子供の声帯と女性の声帯がとても近いということで。 そこで急遽、プロダクションや各劇団 に声がかかって、大々的なオーディションが行なわれることに。実は事前に何も聞かされていなかったので、子供役をやらされてビックリしたりもし たのですが(笑)、結果的にはテレビ初の洋画吹き替え放送に少年役として起用していただくことになりました。 というわけで私は、テレビで少年役を演じた日本で初めての女性声優ということになのかしら...?
- 平野:
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マコさんといえば少年役というイメージだったのですが、まさかそんなにすごい裏話があったとは!!
- 野沢:
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それ以降、徐々に女性が少年役をやるケースが増えていくのですが、当初はほとんどの作品で私が少年役を演じていましたね。「あの人、慣れてるから」って(笑)。 あと、私が男の子っぽかったというのもあるんでしょうね。子供の頃からそんな感じだったんですよ。おままごとよりもチャンバラが好きで。しかも切られるのは嫌いというわがままな子でねぇ……。
- 平野:
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そういう素養がマコさんの演じる少年に反映されているんですかね?
- 野沢:
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だと思います。少年役をやるときは少年になりきっちゃってますしね。アフレコの時も、身体をちょっと傾けて、いきがった感じのポーズでマイクに向かってます。自然とそうなっちゃうんですよ。
- 平野:
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そういえば、小原乃梨子さんも、ソフィア・ローレンの吹き替えをするときはドレスを着て現場に臨むっておっしゃっていましたね。
- 野沢:
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美女になりきるってことですよね。分かります。
- 平野:
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マコさんは美女役をやってみたいと思ったことはないんですか?
- 野沢:
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それがないんですよ。女性のキャラクターをやってもバイタリティのある役が多い。その方が、芝居がね、合うんですよ。その点、美女はきれいに、はみ出さないようにやらないといけないじゃないですか。 でも、毎年お正月に言うんですよ、今年は美女役を目指します、ってね(笑)。
- 平野:
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それはぜひ見てみたいですね。でも、実際に来たらどうしますか?
- 野沢:
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降ります(笑)。 ……というのは冗談で、実は一度だけ、フェイ・ダナウェイさんの吹き替えで美女役をやらせていただきました(映画『ネットワーク』)。思っていた以上に好評だったのがとても嬉しかったわ~。
- 平野:
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……さて、ちょっと話が逸れてしまったので、本題に戻しましょう。マコさんが主演を演じ続けてきた作品群、『ゲゲゲの鬼太郎』、『いなかっぺ大将』の後は、いよいよ『銀河鉄道999』(1978年~)が始まります。メーテルという絶世の美女が登場する作品ですね。野沢雅子&池田昌子というWマサコの共演、いかがでしたか?
- 野沢:
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メーテルを演じている池田さんもおきれいでねぇ……。共演の話とはちょっと違っちゃうかもしれないんですが、アニメがやっていた頃、彼女と喫茶店で談笑していたら、マネージャーから「もっと小さな声で」って注意されましてね。「ねぇ、メーテル」「なぁに、鉄郎ちゃん?」とか、お互いを役名で呼ぶもんだから、店内ですごく目立ってしまったらしいんです(笑)。
- 平野:
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それはアニメファンならずともチラチラ見てしまいそう!
- 野沢:
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つい最近も、彼女の家に電話をしたんですが、受話器を取られた旦那様に「すみません、メーテルいますか」って言っちゃいました(笑)。
- 平野:
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もう、完全に染みついてしまっているんですね。マコさんは、とても役に入り込む性格だというお話でしたが、アフレコ中以外もそんな感じだったんですか?
- 野沢:
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そうですね。なんせ、スタジオで池田さんが他の男性と仲良く話しているのを見るだけでヤキモチやいてましたから(笑)。実は、こないだ2人がそろったインタビューでその気持ちを告白したんですが、そうしたら池田さんも同じことを思っていたことが分かって……じゃあ、言ってくれればよかったのに! ってね。
- 平野:
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うふふ、本当のカップルみたいに仲が良かったんですね。
- 野沢:
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車掌役の肝ちゃん(肝付兼太さん)の3人で連れ立って遠出したり、今でも仲良くやっているんですよ。