コラム 佐々木誠の『映画記者は今日も行く。』第154回
現在開催中の「第30回東京国際映画祭」の[Japan Now]部門に出品されている『花筐/HANAGATAMI』の舞台挨拶が、10月28日にTOHOシネマズ六本木ヒルズで行われ、女優の常盤貴子が登壇した。
本作は、戦争の時代に生きる若者たちの青春を描いた作品となるが、メガホンを執った大林宣彦監督も「戦争を知らない若い人たちのために作りました。もう何回か映画を観ていますが、グッと込み上げるものがありましたね」と、感慨深い表情で語っていた。
大林監督は現在、ガン闘病中の身であるため車椅子での出席となったが、隣にそっと寄り添い、監督の発する一言一言に優しく頷いていたのが常盤だった。
常盤は、2014年公開の『野のなななのか』で初めて大林組に参加し、完成披露試写会の舞台挨拶時には「夢が叶いました!」と、喜びを爆発させていたのが記憶に新しい。
そんな常盤は今回、窪塚俊介扮する【榊山俊彦】の叔母【江馬圭子】を演じているが、「檀一雄さんの純文学も、大林監督の脳内を通すとここまで広がるのかと思いましたし、完成した作品を観た時は、なんて自由でヤンチャで好き放題な監督なんだと感動しました(笑)。映画の可能性を広げてくれたと思います」と、大林監督が繰り出す“豪腕”にベタ惚れの様子だった。
大林監督については窪塚も「榊山俊彦は16歳。僕は35歳。キャスティングに関してもここまで自由度があるのかと思いました(笑)。そして、全シーンに漂っている緊張感みたいなものが、監督の目を通して表現されてるんですよね」と、熱く語っていた。
最後に常盤は、「この間、新文芸坐(「大林宣彦映画祭2017」)で『野のなななのか』を観たんですが、時間が経ってからまた観てみたら、以前とは違った涙が出たんですよね。だから、この映画も5年、10年と経ってから観ると、感じ方もどんどん変わっていくと思います」と、観客へメッセージを届けると、大林監督へは赤いバラの花束を届けていた。
舞台挨拶にはその他、出演の長塚圭史、矢作穂香、山崎紘菜、村田雄浩、岡本太陽が登壇した。
映画『花筐/HANAGATAMI』(新日本映画社配給)
映画『花筐/HANAGATAMI』(新日本映画社配給)は、巨匠・大林宣彦監督がデビュー作『HOUSE/ハウス』(1977年)よりも前に書き上げていた幻の脚本を映画化し、『この空の花』『野のなななのか』に続く、戦争三部作の最終章として撮り上げた青春群像劇。
監督・脚本:大林宣彦 出演:窪塚俊介、満島真之介、長塚圭史、柄本時生、矢作穂香、山崎紘菜、門脇麦、常盤貴子、村田雄浩、武田鉄矢、入江若葉、南原清隆、小野ゆり子、岡本太陽、根岸季衣、池畑慎之介、細山田隆人、白石加代子、片岡鶴太郎、高嶋政宏、品川徹 ほか。