コラム 佐々木誠の『映画記者は今日も行く。』第33回
『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち/第一章「嚆矢篇」』の完成披露上映会舞台挨拶が2月6日、有楽町よみうりホールで行われた。 舞台挨拶には、シリーズ構成と脚本を担当した福井晴敏、羽原信義監督、声優キャストの鈴村健一、神田沙也加が登壇したほか、スペシャルゲストとして、お笑い芸人の平野ノラが「バブル森雪ver.」の衣装で登場した。
「最後まで謙虚でいたいです」
神田沙也加はそう語る。
本作は、SFアニメの金字塔「宇宙戦艦ヤマト」を現代風にリメイクした『宇宙戦艦ヤマト2199』の続編で、『宇宙戦艦ヤマト2202』として全七章で描かれる作品の第一章。
声優としてまだ日が浅い神田沙也加は、『宇宙戦艦ヤマト』という国民的作品に出演(テレサ役)することへの不安とプレッシャーを感じ、「最初は「私で大丈夫?」ってすごい恐縮してました。今でも緊張しています。こんな歴史ある作品の一部になれて光栄に思います」と、胸の内を明かしていた。
アフレコ現場でも謙虚さはそのままに、「大先輩ばかりで緊張しました。出来る限り肩幅を狭くして座ってました(笑)。休憩の時に小野さんと談笑していたんですが、「収録中にお腹が鳴っちゃうといけないんで何か食べた方がいいですか?」と聞いたら、『僕はおにぎりを食べますよ。パンとかも』っておっしゃってました」と、先輩である【古代進】役の小野大輔にも教えを乞うていたようだ。
神田沙也加は、俳優・神田正輝と歌手・松田聖子との間に生まれた、言わば芸能界のサラブレッド。特に、母・松田聖子の天才的な歌唱力と圧倒的なパフォーマンスには、大人になるにつれ憧れの気持ちとともに嫉妬心も芽生えていったに違いない。今ではその逆もしかりだが。
これまでに、【ALICE】【Lily】【SAYAKA】【上原純】など、様々な名前を用いて、芸能界という荒波を乗り越えようと必死にもがいてきた神田沙也加だが、なかなか思うようにいかず苦しんできた。 しかし、2004年に出会ったある人物のおかげで、今の【神田沙也加】としての骨格が形成されることとなる。
演出家・宮本亜門氏だ。
神田沙也加は、17歳の時に宮本氏が手掛けた『Into the Woods』の【赤ずきん】役でミュージカルデビュー。高倍率のオーディションを勝ち抜き、掴み取ったその役で、舞台で表現する楽しさや喜び、そして難しさを味わってしまった。
さらに、宮本氏から授かった『あなた自身を見て選んだんだから、あなたはあなたのままで自信を持って立っていいんだよ』という言葉が、これ以降の神田沙也加の心の支えになっているようだ。
また、神田沙也加は、女優業と並行して声優の専門学校にも通い、2012年にTVアニメ『貧乏神が!』の【艶光路撫子】役で声優デビューも果たした。
そして、一躍脚光を浴びる瞬間が訪れる。 2014年3月14日公開のディズニー映画『アナと雪の女王』だ。 この中で神田沙也加は、王女【アナ】の声を担当。女王【エルサ】役の松たか子とともに、[歌唱力][演技力]の両面で高い評価を受け、作品の内容以上に、その“声”に誰もが虜になり、世界中での大ヒットに続き日本でも250億円を超える興行収入をあげるなど、社会現象を巻き起こすメガヒットを記録した。 現在までに、興行収入が240億円に達している『君の名は。』が、その記録を超えるかどうかにも注目が集まっている。
『アナと雪の女王』という“当たりくじ”を引いた神田沙也加。しかし、何事においても当たり続けるというのは難しい。それは、『君の名は。』の新海誠監督にも同様に当てはまることでもある。
「最後まで謙虚でいたい」
この想いをいつまでも忘れず、困難な壁にぶち当たった時には、『あなたはあなたのまま』という宮本氏の言葉を思い出して、“ありのまま”の神田沙也加をこれからも魅せていってほしい。
今回の『宇宙戦艦ヤマト』が、【声優・神田沙也加】にとっての新たなる物語の始まり、「嚆矢篇」となるかもしれない。
映画『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち/第一章「嚆矢篇」』
映画『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち/第一章「嚆矢篇」』(松竹メディア事業部配給)は、SFアニメの金字塔「宇宙戦艦ヤマト」を現代風にリメイクした『宇宙戦艦ヤマト2199』の続編で、『宇宙戦艦ヤマト2202』として全七章で描かれる作品の第一章。
監督:羽原信義 副監督:小林誠 脚本:福井晴敏 声の出演:小野大輔、桑島法子、鈴村健一、大塚芳忠、麦人、赤羽根健治、國分和人、津田健次郎、神谷浩史、てらそままさき、神田沙也加 ほか
公式サイト http://yamato2202.net/