コラム 佐々木誠の『映画記者は今日も行く。』第5回
『SCOOP!』の完成披露プレミア試写会舞台挨拶が9月18日、渋谷ヒカリエホールで行われた。舞台挨拶には、大根仁監督、出演の福山雅治、二階堂ふみ、滝藤賢一、吉田羊、リリー・フランキーが登壇した。
「気付かれなかったですね」
吹石一恵と結婚して子どもも授かり、夫になり、そして父になった福山雅治。 数少ない大物独身スターとして、芸能界に君臨していたが、このニュースにより、女性たちによる[ましゃロス]が巻き起こり、人気も落ち着いたかと思っていた。 しかし、いざ蓋を開けてみると、会場となった渋谷ヒカリエホールには、たくさんの女性、女性、女性の姿が。ステージに福山が登場するや、割れんばかりの黄色い歓声がこだました。
そんな、相変わらず大人気の福山雅治。 本作『SCOOP!』では、中年パパラッチ【都城静】として、普段の“撮られる側”から、今度は“撮る側”へと回っている。福山演じる【都城静】は、以前は会社のスターカメラマンとして大活躍していたが、現在では、下衆な芸能ネタのみを追い掛け、車中で日夜、その眼を光らせている。
また、【都城静】が着こなすファッションも独特で、派手な柄のシャツにロックな革ジャンを羽織った街の不良タイプ。福山本人も、「衣装が、普段は着ないようなものだったので、衣装合わせで着た服を持って帰って、家でも着てみたり、その服のままレコーディングしたりもしてました。僕は、現場にパッと行って、パッと(演技が)できるような器用な人間じゃないので、衣装の力を借りて役を馴染ませようと思ったんです」と、その役作りについて語っていた。
しかし、その服のまま街を歩いていても、誰にも全く気付かれず、逆に「“イタイ”人が来た」と思われて、自分の方を見てもらえなかったらしい。
東京スカイツリーに“負けた”(?) リリーフランキーによる「証言」
その現象は、元ボクサーの情報屋【チャラ源】役として本作に出演し、福山とはプライベートでも仲の良いリリー・フランキーの言葉からも窺えた。
「福山君がいきなり、『東京スカイツリーに行ってみたい』と頑なに言ってきたので、その格好だと目立つだろうなぁと思いながらも、実際に行ってみたんですが、全然気付かれなかったですね。みんな上を見上げて、スカイツリーしか見てなかったです(笑)」
何故、そんなことが起こったのか。 こんなふうに考察してみた。
あまりテレビや雑誌で見る機会がない二流のスターは、街を歩いていても、もちろん、よっぽどのファンでない限り、誰にも気付かれることはない。
第一線で活躍している一流のスターは、マスクやサングラスでどんなにオーラを消そうとも、街を歩けば声をかけられ、店に入れば指をさされてしまう。
そして、福山雅治のような超一流のスターになってくると、「本当にこの世にいるのだろうか?」と、もはやその存在自体に疑問を持ち、街を歩いているなんてことは想像すらできないのかもしれない。
だからこそ、まさかそんなヒトが目の前にいるはずがないと思い込み、“現実に存在”しているスカイツリーにのみ目がいくのだ。
これこそ超一流スターの証。
同じく舞台挨拶に登壇した吉田羊も、冒頭の挨拶を噛み、「久しぶりの“生”福山雅治に興奮してしまいました(笑)」と、ことさらにその存在を意識している様子だった。
ちなみに、現場では福山が、“こすりつけてきたり”、アドリブで下ネタを炸裂させていたそうなのだが、それに対し吉田は、「福山さんがやるとナチュラルでした」と、何の嫌悪感も抱かず、福山の全てを受け入れていたようだ。
これも、福山雅治が持つスター性のなせる業なのかもしれない。
映画『SCOOP!』(東宝配給)
映画『SCOOP!』(東宝配給)は、1985年に製作された、原田眞人監督・脚本による映画『盗写 1/250秒』を原作に、芸能スキャンダルから社会事件まで、様々なネタを追い掛ける写真週刊誌カメラマンや記者たちの姿を描いた作品。
監督・脚本:大根仁 出演:福山雅治、二階堂ふみ、吉田羊、滝藤賢一、塚本晋也、中村育二、斎藤工、リリー・フランキー ほか