Jul 28, 2023 news

【先行】大友克洋「童夢」に影響を受けた映画『イノセンツ』監督が本作に込めた想い、作品制作のきっかけを語る

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観客に『イノセンツ』から何を受け取ってほしいかについては「特にこの作品ではよく観客について考えました。観客がシートから身を乗り出したり、息を飲んだりするような演出をしたいと思うものです。特に嬉しいのは、映画を観た後に、幼少期に感じた魔法について話し合ってくれることです。子供の頃の自分や善悪の限界について、誰にでもあるような思い出を語ってほしいのです。この映画が、忘れかけていた記憶を呼び起こすきっかけになってくれればと思っています。」と語る監督。

移民の子供のベンやアイシャなど4人の子供たちのルーツや、あえて曖昧に描かれていた家庭環境などキャラクター設定について聞くと「当初は、自分の子供時代を思い浮かべながら、全員北欧系の白人の子供という設定で脚本を書きました。その後、性別や人種に関係なく、幅広くキャストを公募した結果、多様性のあるキャスティングになりました。

だからといって、元々の脚本を大幅に変更する必要はありませんでした。なぜなら、作品では人種や性別にまつわる政治的なメッセージがあるわけではなく、閉ざされた子供だけの世界で起こる物語を描こうとしたからです。そして、何があっても、僕は子供たちの味方でなければいけないと思いました。子供たちは間違っていなくて、悪いのは親だ、という視点です。

これは、さまざまな度合いの親による育児放棄の話でもあります。どんな家庭でも、子供のニーズに全て応えることはできない。どうしても手が回らないことはあります。主人公の場合、お姉さんが重度の自閉症だということで、母親がお姉さんにかかりっきりで、彼女は自分の力でやっていくしかない。

他の家庭は、僕のイメージとしては、アイシャは、ソマリア人の移民の母親がいて、ノルウェー人の白人の父親が最近他界したばかり。その死と悲しみが家庭に重くのしかかっている。母親は、思いやりのある親だけど、喪失によって悲嘆に暮れているのと、シングルマザーになって、家庭を支えるために働かなきゃいけなくなったことで苦労もしている。夜も働きに出て、留守も多いけど、娘のことをとても愛していて、愛情も示している。

それに比べてベンは全く違う家庭環境で、父親は家を出ていってしまって不在。ベンを演じたサム・アシュラフには、父親はおそらく母親に暴力を振るっていたかもしれない。そしてベンはそんな父親と似ているのだろう。だから母親は彼に対立感情を抱いていて、それを彼にも見せている。と、キャラクター背景を伝えました。

物語の視点としては常に子供たちの味方であり、彼らのとる行動は、家庭環境が大きく影響をしているといえます。ベンの場合は、育児放棄に加えて、母親によって言葉による虐待を受けていることも匂わせていて、身体にアザもあるから、母親から身体的虐待も受けている可能性もあります。

子供の場合、共感力が全くないわけではなく、共感する相手を選んでいる。だから、物凄く優しく思いやりを見せる瞬間もあれば、全く見せない時もある。彼がまさにそれです。というのが、大まかな子供たちにまつわる設定ですが、ヒントが映画の各所に散りばめられていて、それをもとにどう解釈するかは、観客次第です」 と結んだ。

最後に「童夢」以外の作品で、本作が影響を受けた日本の漫画やアニメ、映画などはあるかという質問にエスキル監督は「数えきれないくらいあります。本作を作る前には今敏監督の『パプリカ』を見直しました。狂気の描き方が鮮烈で、傑作だと思います。本作にもほんの少し『パプリカ』に似た側面があります。日本映画全般に関して言うと、黒沢明監督から、成瀬巳喜男監督、溝口健二監督、鈴木清順監督。最近のものだと、90年代は、ヨアキム・トリアー監督と2人で北野武監督の作品に夢中になりました。その中でも『ソナチネ』は衝撃的でした。石井聰亙監督の『ユメノ銀河』も好きだったのを覚えています。」と日本の作品への愛をたっぷりと語った。

映画『イノセンツ』は、現在公開中。

作品情報
映画『イノセンツ』

ノルウェー郊外の住宅団地。夏休みに友達になった4人の子供たちは、親たちの目の届かないところで隠れた力に目覚める。近所の庭や遊び場で、新しい“力”を試す中で、無邪気な遊びが影を落とし、奇妙なことが起こりはじめるのだった。

監督・脚本:エスキル・フォクト

出演:ラーケル・レノーラ・フレットゥム、アルヴァ・ブリンスモ・ラームスタ、ミナ・ヤスミン・ブレムセット・アシェイム、サム・アシュラフ、エレン・ドリト・ピーターセン、モーテン・シュバラ

配給:ロングライド

©Mer Film
©2021 MER FILM, ZENTROPA SWEDEN, SNOWGLOBE, BUFO, LOGICAL PICTURES
© Christian Breidlid

公開中

公式サイト longride.jp/innocents