杉咲花主演最新作、映画『市子』。この度、現在開催中の第36回東京国際映画祭にて本作のジャパンプレミアとなる公式上映が行われ、メガホンをとった戸田彬弘監督が観客からの質問に答えるQ&Aが行われた。
この度上映された映画『市子』は、戸田監督が主宰を務め、全作品の作・演出を担当している劇団チーズtheaterの旗揚げ公演、舞台「川辺市子のために」が原作。第36回東京国際映画祭では、この1年の日本映画を対象に、特に海外に紹介されるべき日本映画という観点から選考された作品を上映するNippon Cinema Now部門に招待された。
本作を映画化するに至ったきっかけを訊かれた監督は「2015年に初演をやって、脚本賞をいただいて再演をした際に映像化のお話があったのですが、舞台を映像に変えるというアイディアが自分の中で無かったのでお断りしてしまったんです。その後、2018年に続編と共に再演するという話になった時に、これなら映画化できるのではという考えが浮かんできて、そのタイミングでまた映画化のお話をいただき(映画の脚本を)書き始めました。」と明かした。
オリジナルとなる本作を書き始めたことについては「SNSが流行り始めた時代に、一緒に作品を作ったスタッフさんや、大学の後輩が、若くして亡くなってしまうということがあって、だけどFacebook上では存在がある、誕生日とかの通知が届くんですね。そしてそのページに行くと、誕生日おめでとうと言う言葉が並んでいる。もういないのに、知らない方からすると生きていて、存在しなくなった人が存在しているということに奇妙な感じがし、そこから存在しているのに存在しないものとして、日本の中で市子の境遇のような人たちがいることも知っていたので、そこにつながりこの話を書こうと思いました。」とコメント。
市子というキャラクターとキャスティングについても質問が及ぶと、これに対し戸田監督は「リアリティのある作品にしなくてはいけないと思っていたので、まず年表を作りました。(主人公の設定である)1987年東大阪生まれの子供は、バブル崩壊、地下鉄サリン事件、阪神淡路大震災があって、3.11や9.11を経験した世代だと思うのですが、その年表をまず作り、その中に市子の年表を作って彼女の人生に現実味を与えていきました。
市子は多面的に様々な視点から描かれていくキャラクターなので、一面的な表現ではなく幅のあるお芝居ができる人に託したいと思っていたところ、杉咲さんの過去作を観ていて、杉咲さんの演技に市子を演じて頂く可能性をとても感じました。」と、市子という存在に杉咲を投影した背景も語った。
作品に込めた願いについては「正しさというのは一体何なのか、は生きていく上すごく考えていることです。世の中にある正しさやモラルというものは、簡単には処理できないものだと思っています。それぞれ、本作をご覧になったみなさんが市子という女性をどういう風に捉え、どういう風に考えるのか。自分の人生をフィードバックしていくきっかけになればと思い作りました。」と話した。
映画『市子』は、2023年12月8日(金)より全国公開。
川辺市子は、3年間一緒に暮らしてきた恋人の長谷川義則からプロポーズを受けた翌日に、忽然と姿を消す。途⽅に暮れる⻑⾕川の元に訪れたのは、市⼦を探しているという刑事・後藤。後藤は、⻑⾕川の⽬の前に市子の写真を差し出し「この女性は誰なのでしょうか。」と尋ねる。市子の行方を追って、昔の友人や幼馴染、高校時代の同級生‥‥と、これまで彼女と関わりがあった人々から証言を得ていく長谷川は、かつての市子が違う名前を名乗っていたことを知る。そんな中、長谷川は市子が置いていったカバンの底から1枚の写真を発見し、その裏に書かれた住所を訪ねることに。捜索を続けるうちに長谷川は、彼女が生きてきた壮絶な過去と真実を知ることになる。
監督:戸田彬弘
原作:戯曲「川辺市子のために」(戸田彬弘)
出演:杉咲花、若葉竜也、森永悠希、倉悠貴、中田青渚、石川瑠華、大浦千佳、渡辺大知、宇野祥平、中村ゆり
配給:ハピネットファントム・スタジオ
©2023 TIFF
©2023 映画「市子」製作委員会
2023年12月8日(金) テアトル新宿、TOHOシネマズ シャンテほか全国公開
公式サイト ichiko-movie