Jun 28, 2019 mekiki

フランスの新鋭ミカエル・アース、 繊細さの秘密は“女性の視点”だった

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アースブルーは白い雲が浮かぶ夏の空の色

確かに青という色と映画は相性がいい。これまでにも青を基調にした傑作はいくつあっただろうか。『グラン・ブルー』や『ベティ・ブルー』といったヒット作もある。北野武監督も青、特に青い海を頻繁に登場させる監督として知られるが、彼の使う鮮烈な青はヨーロッパの批評家たちの間では“キタノ・ブルー”と呼ばれている。

アースのブルーは、白い雲が浮かんでいそうな夏の空の青である。さわやかだが、センシャルで繊細な青。16mmで撮影しているため(『アマンダと僕』のロンドンシーンは35mm)、親密感があり、より青は感傷的に映え、この乾いたメロドラマティックなテイストは彼の持ち味でもある。

「私は、自分の知っていること、自分の知っている感情、自分の知っている場所しか撮れないタイプです。パリは、20年来住んでいます。パリ生まれですが、郊外で育ち、その後またパリに越してきました。なのでとてもよく知っている町です。

『サマーフィーリング』で、ベルリンとNYを舞台にしたのはとても好きな街だからです。バカンスで行き、恋に落ちました。私にとっては、なにかを書きたいと思わせるような、そういう街なんです。私が映画の舞台として選ぶ場合は、必ず一度行ったことがあるか、あるいは生活していた場所で、もう一度、その場で“生きてみたい”という理由で選びます。

『アマンダと僕』はほとんど11区で撮影しました。今は引っ越しましたが、10年間住んでいた、とてもよく知っている地域です。公園も通りも。私は、この映画を通して日常的なパリも映し出したいと思いました。この映画にとって、そうした“場所”は、登場人物のひとつでもあるんです」

16mmによる撮影法や軽やかな語り口でパリの日常の風景を切り取る作風から、アースの作品を語るとき、批評家たちはしばしばヌーヴェル・ヴァーグの巨匠エリック・ロメールの名前を引き合いに出す。が、彼にそれを告げると「ロメ−ルは好きな監督ですが、私はシネフィルではありませんよ」

“シネフィル”とは映画狂、つまり映画通の意味だが、フランスの映画監督には、このシネフィルが多い。アースは、そうした監督たちとは同じ土俵にはいない、と主張する。「私の人生では音楽の方が重要な位置を占めているから」というのがその理由だ。