Jun 28, 2019 mekiki

フランスの新鋭ミカエル・アース、 繊細さの秘密は“女性の視点”だった

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現在公開中の映画『アマンダと僕』が秘かなブームを呼んでいる。繊細でみずみずしい感性で日本を席巻している監督、ミカエル・アースに映画についての考えかたをインタビューした。

2018年秋に開催された第31回東京国際映画祭で観た作品の中で、『アマンダと僕』は間違いなく最も琴線に触れた作品だった。フランスのミカエル・アースの長編第3作である。日本ではまだ1本も作品が公開されていなかったためほとんど無名だったが、その繊細でみずみずしい、詩的な語り口にすっかり心を奪われた。

『アマンダと僕』
©️2018 NORD-OUEST FILMS – ARTE FRANCE CINEMA

テロ事件で仲のよかった姉を失ったダヴィッドは、シングルマザーだった姉のひとり娘である7歳の姪アマンダの面倒をみることになる。やはりテロで傷ついた恋人との関係、便利屋という不安定な職業で見えない未来、そんなニート世代の青年が突然、父親代わりになれるのか。愛する人を失った深い哀しみと喪失を乗り越えて、それでも続く人生を生きる青年と少女の絆の物語だ。

アマンダ役の少女イゾール・ミュルトリエのナチュラルな笑顔と泣き顔に心を掴まれた。この少女をキャスティングできるとは、アース監督はなんという才能だろう。さっそく監督にインタビューすることにした。

アース監督は「アマンダ役にはこなれた演技をする子役をキャスティングしたくはありませんでした。道や学校や体育教室の前でビラを配り、オーディションに呼び込む“ワイルド・キャスティング”をやったんです。イゾールもその方法で見つけました。彼女は演技経験がありませんでしたが、最初からとても自然な演技のできる子でしたよ」

アマンダ役の少女イゾール・ミュルトリエ 
©️2018 NORD-OUEST FILMS – ARTE FRANCE CINEMA

主演のヴァンサン・ラコストとイゾールの相性もよく、ふたりが寄り添う健気な姿はいつまでも心に残った。

昨年に続き2度目のインタビュー

それから8か月、日本公開を前にしてフランス映画祭2019に参加するため、ミカエル・アース監督は再び、来日した。今回は、ダヴィッド役のヴァンサン・ラコストも一緒である。ラコストは、ミア・ハンセン=ラヴの『EDEN/エデン』(14年)などに出演後、大ヒットコメディ『VICTORIA』(16年、日本未公開)で大ブレイクしたが、シリアスな作品での主演はこれが初めてだという。

「この映画は、冒頭から哀しい悲劇で始まります。なので優美さ、軽さ、輝きがあるような人が必要でした。ヴァンサンはこれらすべてもっていました。この映画は、最後には光があたります。ヴァンサンとイゾール・ミュルトリエの存在によって、この映画は人々に受け入れられるものになっていると思います」

ダヴィッド役のヴァンサン・ラコスト
©️2018 NORD-OUEST FILMS – ARTE FRANCE CINEMA