Dec 28, 2016 interview

無名の新人声優・山口勝平が『らんま1/2』『魔女の宅急便』に大抜擢!

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──『らんま1/2』終了後も、山口さんは間を置かず、多くの作品で主役級のキャラクターを数多く担当しています。シリアスキャラからギャグキャラまで、本当に幅広く演じていらっしゃるのですが、それらの中で、特に印象深い作品がありましたら教えてください。

どの役にも思い入れがあるのですが、1992年から足かけ7年かけて全7巻がリリースされたOVA『ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日』(以下、ジャイアントロボ)は、自分に取ってとても大きな作品だったと思います。

──『ジャイアントロボ』では、主人公の草間大作少年を演じていますよね。

大作役は当初、子役でいくという案もあったそうなのですが、制作が長期にわたることが予想されたため、声変わりの心配がない成人男性で少年役ができる役者ということで僕に白羽の矢が立ったのだとか。

大作を演じるに当たって、まず今川泰宏監督に説明されたのが、大作の周囲に配置される大人のキャラクターたちと同じテンションの芝居をしないでほしいということ。子供の目線の世界観を表現してほしいとリクエストされました。

──今川監督作品というと、その後の『機動武闘伝Gガンダム』(1994年)などもそうですが、大見得を切る、オーバーアクションなキャラクターが多いですよね。でも、そうはしないでほしいと言われたんですね。

そうなんです。セリフも大見得とは対局の、むしろ棒読みな感じでやってくれ、と言われました。国際警察機構とBF団の大人たちがワーーーッとやり合っている中、どこか子供が遊んでいるようなポジションのキャラクターにしたかったようです。

──たしかに、言われてみると大作のセリフは他のキャラクターたちとテンションがまるっきり違っていますね。

でも、最終話のラストでは、そこまでに彼が経験してきたことを踏まえて、一回り成長した草間大作として、「砕け! ジャイアントロボ!」を叫んでほしい、と。実は作中ではたった7日間しか経っていないんですけど、7年間の重みを込めて演じさせていただきました。

あと、この作品はとにかく、脇を固めてくださった声優陣がものすごく豪華。レジェンド級の先輩方の見事な演技も堪能してください。……実のところ、僕がどんなに気合いを入れて演技をしても、大人と子供の差はできたんじゃないかと思うくらいですよ(笑)。僕の次に若いキャストが島本須美さん(『風の谷のナウシカ』ナウシカ役など)というベテラン揃いの現場でしたから。

──こうしたレジェンド級の諸先輩方で、山口さんが強く意識されている方、尊敬されている方を教えてください。

やはり、まずはマコさん(野沢雅子さん)だと思います。一番影響を受けている役者さんです。師匠である肝付兼太さんからいただいたものもたくさんあるのですが、“目標”ということになるとマコさんなんだと思います。おこがましいですが、男性版・野沢雅子を目指せたら素敵だなと(笑)。

あと、先輩声優ということでは『らんま1/2』で共演させていただいた山寺宏一さん(響良牙/Pちゃん役)からも素敵な言葉をいただきました。初めのころは、自信のなさから、OKをいただいたところでも「もう一度、やり直させてもらえませんか?」なんて言っちゃってたんですが、それを「録音監督さんがOKと判断したものを、君の判断で駄目と言うなら役者生命を賭けて言いなさい」と。何のためにテストがあって、本番があるのか、本番でベストな演技を出せなかったらそれはもうオンエアを見て泣くしかない、と教えてくださったんですよね。悔しい思いをして、それをバネにするんだって。

 

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──山寺さんにはotoCotoでもインタビューさせていただいていますが熱い方ですよね。

そうなんですよ。本当にありがたいことです。そして、高木渉君(『名探偵コナン』高木刑事役など)も常に意識し続けている存在です。『キャッ党忍伝てやんでえ』で出会って、お互いほぼ新人で、一所懸命にこの世界に居場所を探していたころからの友人です。そして、気がつけば彼とはもう30年来の付き合いになりました。本当にいつも刺激をもらっています。

──同じ時代を生き抜いてきた盟友、戦友といった感じでしょうか?

キャリアの積み上げ方が僕とは異なるんですよ。僕が、どちらかというと大きな役に恵まれてきた中、彼は主人公の脇を固めるいろいろな役で存在感を示し続けてきた。パッと見は僕の方が派手に見えるんですけど、じゃあ10年経った時に、役者としての引き出しはどちらが多いかと問われたらどうでしょうね。 素直にすげえなぁって思っていますよ。

──特に近年になって評価が高まっていますよね。

もともと業界内での評価は高かったでしょうけど、これまでとは違うジャンルで注目されてますよね。 最近では大河ドラマ『真田丸』に出演したりして。これは友人としてすごくうれしかった反面、うらやましかったですよ。渉君とはこれからも良い関係でありたいですね。

──山口さんは実写作品とかに興味はないんですか?

実は……あります(笑) 渉君や緒方賢一さんが今年、実写ドラマに出てくださったことで、声優という分野にとらわれずその可能性があるのでは?と思い始めています。もう50歳を越えてしまいましたが、これからはもっと積極的に世界を広げていきたいと思っています。

もちろん舞台もやっていきますよ。先日亡くなってしまった肝付さんの遺志も継いでいけたらいいなとも思っています。

──新しい活動があれば教えてください。

1年ほど前から、文化放送のインターネットラジオ局、超!A&G+で『山口勝平の殿様ラジオでGO!』という番組をスタートしています(現在はタイトルを『山口勝平の殿様ラジオでGO!ダッシュ』と改め2年目に突入)。ラジオは90年代にアニラジが流行っていたころにやっていたので久しぶりのチャレンジですね。

フリートークのスキルって、やっていないとどんどん衰えていってしまうんですよ。そこを改めて磨き直していきたいな、と。

──『山口勝平の殿様ラジオでGO!ダッシュ』はラジオドラマもやっておいでですよね。

そうなんです。『ひとやすみ和尚』というタイトルで、晩年の一休さん(一休宗純和尚)をモチーフにしたキャラクターを主役にしたドラマをやっています。ロードムービー的なコメディ作品です。

僕にとってはめずらしくおじいさん役なんです。これもまた世界を広げていきたくて脚本家さんにお願いしてそういう物語にしてもらいました。

これまでずっと少年役をやってきましたが、大人役をすっとばして、これからは老人役もやっていきたい(笑)。渋いおじいさんはまだ無理だとしても、永井一郎さんが(『らんま1/2』八宝菜役で)演じておられたような、小っちゃくてちょっとかわいげのあるおじいちゃん役がやれるようになりたいです。

「なんだ勝平、意外におじいちゃん役、向いてるじゃん」って思ってもらえたらすごくうれしいですね。

構成・文 /山下達也  撮影 /田里弐裸衣

 

 

Profile

 

山口勝平

5月23日生まれ、福岡県出身。 主な出演作品は、犬夜叉(犬夜叉)、らんま1/2(早乙女乱馬)、名探偵コナン(工藤新一/怪盗キッド)、ONE PIECE(ウソップ)、カミワザワンダ(ワンダ)、信長の忍び(木下秀吉)ほか。

 

関連リンク

 

山口勝平の人気ラジオ番組 『山口勝平の殿様ラジオでGO!ダッシュ』 
文化放送 超A&Gで日曜日の16時30分から絶賛放送中!

『山口勝平の殿様ラジオでGO!ダッシュ』公式ホームページ
http://coolwind.blue/?p=52

『山口勝平の殿様ラジオ~殿様ブログ~』
http://ameblo.jp/tonosamaradio