Dec 23, 2016 interview

肝付兼太、野沢雅子、2人の“レジェンド”が導いた声優・山口勝平誕生“前夜”

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──お話を先に進める前に、ぜひ、師匠である肝付兼太さんの話を聞かせていただけませんか? 肝付さんって、どういった方だったんでしょうか(編集部注:肝付兼太さんは、2016年10月20日、肺炎でお亡くなりになりました)。

劇団の主宰ですから、何でもかんでも自分で決めていくタイプの人でしたが、指導力のある人でした。若い人にお芝居を教えるのは抜群に上手かったと思います。

──どんなふうに指導されるんですか?

とても感覚的なことなので、具体的にどうこうってのはすごく言いにくいんですが、演劇論とか、テクニカルなことよりも、“気持ち”をすごく大事にする人でしたね。お客さんを楽しませる芝居を作るために、どういうことをやるべきか教えてもらいました。そのおかげで、自分が芝居をする時は、今でもそういう演技の組み立て方をしちゃいます。

あと、今でもよく覚えているのが、30代に入った頃に、肝付さんから「エノケンを勉強しなさい」と言われたこと。

──エノケン(榎本健一さん)ですか?

ちょうどその頃、劇団21世紀FOXでエノケンさんをモチーフにした「エナケン」という役に挑戦させていただける機会に恵まれて、その際に「勝平はエノケンのような芝居をやっていくべきだ」とアドバイスしてくださったんです。僕みたいな体の小さい役者なりの武器を見つけなさいと。

エノケンさんを初めて見たのは黒澤明監督の『虎の尾を踏む男達』(1952年)だったんですけど、本当に楽しそうに芝居をする方なんですよね。僕自身、見ている人が素直に楽しめる作品をやりたいとおもっていたので、すんなりと腑に落ちました。そこからはすごく傾倒しましたね。

──当時の山口さんが求めていたものが、そこにあった?

そうですね。かなり意識的に動きとかを採り入れようとしました。最初はモノマネから入っていって、だんだん自分のリズムに落とし込んでいく、みたいな。最終的には、それなりのかたちになったのではないかな、と。

──そして、これはかなり有名な話だそうですが、「山口勝平」という芸名を考案したのが肝付さんだったそうですね。

はい、その通りです。ある日、芸名を付けようと相談したら、肝付さんから「お前は田舎もんだから、田舎っぺ→いなかっぺい、がいいよ」と(笑)。福岡から出てきてずいぶん経っても、稽古の時によくなまりを注意されていたんですよね。ただ、もうすでに芸能界には伊奈かっぺいさんがいらっしゃったので、下だけ取って「かっぺい」に。漢字は高校生時代に好きだった六田登さんのバスケ漫画『ダッシュ勝平』からいただきました。

──苗字の「山口」は、どこから取ってきたんですか?

それは本名ですね。苗字をどうしようかと思っていたら、山口という苗字には、山口百恵さんや、山口良一さんら、芸能界で成功している人が多いから、それにあやかれば、と先輩にアドバイスされました。

……と、けっこう適当に決めてしまったんですが、後で調べて見ると意外に画数も良くって。字のバランスも悪くないと思いませんか?

──いや、とても素晴らしい芸名だと思います。

僕もすごく気に入っています。それに今、ふり返ってみると、もう本名で過ごした時間よりも「山口勝平」で過ごした時間の方がずいぶんと長くなってしまっているんですよね。なので、病院なんかで本名を呼ばれると逆に照れちゃいます(笑)。

あと、不思議なことに、この名前だと初対面の方からも「山口さん」って呼ばれずに、「勝平さん」と呼んでもらえるんです。こういう親しみやすい名前を付けてくださった肝付さんには、本当に感謝しています。

──もちろんそれは山口さんのお人柄があってこそだと思いますが、肝付さんはいろいろな意味で、山口さんの恩人なんですね。

はい、その通りです。肝付さんがいなければ今の僕はなかったと思います。

──野沢雅子さんはいかがでしょう? 声優学校をのぞいてみたのは野沢さんがお目当てだったとのことですが、その後、実際にお会いできたんですか?

それはもちろん。その後も、マコさん(野沢さんの愛称)にはずっとかわいがっていただきました。僕がまだ本名で芝居をやっていた頃から、「光雄、光雄」って、気さくに話しかけてくださって……。それは今でも変わらず。子供の頃に憧れていた方と、こんなふうにお話できるようになるなんて、いまだにちょっと信じられないと思うことがありますね。

さっき言った声優学校の一番最初のマコさんの授業で自己紹介をやらされたんですが、そのとき「私がやっている少年役とかできそうね」って言ってくださったんです。それがすごくうれしかったし、今でも励みになっています。

──あれ、でもそれって……。

そうなんです。2011年に放送された『ドロロンえん魔くん』(1973年)のリメイク作品『Dororonえん魔くん メ~ラめら』で、かつてマコさんが演じた、えん魔くんを僕がやらせていただきました。オーディションで決まったんですけど、決まった時は鳥肌が立ちましたよ!

──それについて野沢さんは何と?

喜んでくださいました。「誰がやるのかと思っていたから、勝平でよかった」って、応援してくださいました。なんて大きな人なんだろうって、思いましたね。

しかも、最終回にはお父さん役で登場していただいて……。女性のマコさんにお父さん役をやってもらった役者って、僕だけじゃないかな。ちょっとした自慢です(笑)。

──『ドラゴンボール』では、子供も自分でやっていらっしゃいますからね(笑)。

構成・文 /山下達也  撮影 /田里弐裸衣

 

Profile

 

山口勝平

5月23日生まれ、福岡県出身。 主な出演作品は、犬夜叉(犬夜叉)、らんま1/2(早乙女乱馬)、名探偵コナン(工藤新一/怪盗キッド)、ONE PIECE(ウソップ)、カミワザワンダ(ワンダ)、信長の忍び(木下秀吉)ほか。

 

関連リンク

 

山口勝平の人気ラジオ番組 『山口勝平の殿様ラジオでGO!ダッシュ』 
文化放送 超A&Gで日曜日の16時30分から絶賛放送中!

『山口勝平の殿様ラジオでGO!ダッシュ』公式ホームページ
http://coolwind.blue/?p=52

『山口勝平の殿様ラジオ~殿様ブログ~』
http://ameblo.jp/tonosamaradio