母親へのアプローチ
ーー今回演じられた杏奈という役柄にからめて、深川さんは田舎暮らしってどう思いますか?
憧れますね。あまりにも交通の便が悪いと、仕事に通うのはちょっと大変なので‥‥。都心に出やすい田舎だったら住めそうです (笑)。
ーーでは結婚観についてですが、杏奈たちと同じように夫婦別姓って選択はありますか?
考えたことはなかったですが、選択肢も広がっている世の中なので、全然ありだと思いますね。そんなに重要なことじゃないのかも。もしそういう選択をするタイミングになったら自分が実際どうするかは分からないですけど、あんまり抵抗はないかもしれないです。
ーー役柄の印象、ご自分との共通点などありましたら教えてください。
年齢も同じぐらいですし、私もイラストを描くのが大好きでイラストレーターになりたいと子どもの頃に思っていたので、親近感がありました。
東京を離れても、リモートで好きな仕事を続けているという芯の強さも感じるし、こだわりがあって、現代にいる等身大の女性なんだろうなと感じます。そういう部分はブレずに演じたいなと思っていました。
物語の前半は、どんどん巻き込まれていく側の役柄なので、自分たちが何か仕掛けるというよりも、身の回りで起こることに、新鮮な気持ちで反応することを意識していました。
ーー役作りで、苦労された点はありましたか?
自分が実体験で子どもを持ったことがないので、産まれたばかりの赤ちゃんを他人に干渉されて、どのぐらい過敏になるのかなどは、想像を膨らませたり、お子さんがいるお友達に話を聞いたりしました。やっぱり自分の命にかえても守りたいという、守るべきものができたときの力強さはものすごいエネルギーになると思ったので。
母親としての杏奈の心境の変化は、作品の中でもとても大きなキーポイントになってくるので、特に大切にしていました。
ーー母親役ということで、具体的に監督に相談されたことを教えてください。
「仕事しながら育児は大変だから、私が面倒見るわね」ってよし子さんが家に来て、掃除や赤ちゃんのお世話をしているシーンがあるんです。でも杏奈は家に来てほしくないと思っている。
そのシーンは、1階にベビーベッドで赤ちゃんが寝ていて、杏奈は2階で仕事をしていて‥‥っていう状況なんですね。
子どもがいる友達にお話を聞いたとき、「1人目だと特に敏感になるから、まだ勝手がわからないし、ベビーカメラを置いて仕事しながらも逐一見てた」っていう意見が結構多かったんですよ。
なので撮影に入る前に、そういうのってどう思いますか?と監督に相談しましたね。
映画としての見せ方もあるので、成立しない場合もあるけれど、普段は穏やかでも、どこまで敏感になったり、神経質になったりするのかとか、母親としての心理や行動がちぐはぐにならずにちゃんと繋がるようにしたいなと思っていました。
ーー今回の役に限らず、深川さんが演じる上で、気をつけていることはありますか?
相手の言葉を受けて反応するということを、大事にしたいと思っています。
7年前ぐらいのオーディションの時なんですけど、自分の頭の中で「こういう風にやりたい」と固めすぎて、当日その場で言われた演出に柔軟に対応できなかったことがあったんです。
オーディションだから、自分が考えてきたものが表現できるようにと思って用意して、もちろん、それも必要なことかもしれないけど、その時は自分の頭の中で固めすぎちゃって「次は違う感情でやってみてください」って指示が来たときに、すごく硬くなっちゃったんですよ。
それですごい反省しました。それからは現場に行ってから、相手と直接やり取りして生まれる気持ちや新鮮な空気感を大切にしようと思うようなりました。
あのときは「失敗したー」って思いましたね(笑)。もう同じ間違いをしないように意識してます。