──最後の質問です。『追憶』の主人公・篤、啓太、悟たちは家族という存在に苦しめられ、また家族を守ることを生き甲斐にもしています。『追憶』の作者である青島さんにとって家族とはどういう存在でしょうか?
簡単には答えられませんが、小説『追憶』の最終章で、会社経営に苦しむ悟に「会社と家がなくなったら、どうやって家族を続けられるの」と言わせ、それに対して啓太に「本当の家族には決まった形などないのだ」「だが言えなかった。自分も悟も本当の家族がよく判らなかったからだ」と独白させています。家族の在り方というものは人それぞれで違っていいんじゃないでしょうか。「家族」とお互いに思いあえる相手がいれば、それが家族なんだと思います。
取材・文/長野辰次
青島武(あおしま・たけし)
1961年生まれ、静岡県出身。横浜放送映画専門学院(現・日本映画大学)を卒業後、映画の製作スタッフとしてキャリアをスタート。90年に高橋伴明監督の『DOOR2』でプロデューサーに。92年にVシネマ『とられてたまるか!』シリーズで脚本家デビュー(クレジット上は上田武郎)。主な脚本作に『光の雨』(01年)、『樹の海』(04年)、『日輪の遺産』(10年)、『ツレがうつになりまして。』(11年)、『あなたへ』(12年)、『東京難民』(14年)、『グラスホッパー』(15年)など。原案&脚本を務めた『追憶』の小説版で作家デビューを果たした。
『追憶』青島武/小学館
平凡な大学生がホスト、日雇い労働者、ホームレスへと身をやつしていく『東京難民』(14年)、職場のストレスから鬱病を患った夫を妻の視点から描いた『ツレがうつになりまして。』(11年)などの社会派作品、高倉健最後の主演作『あなたへ』(12年)の脚本家として知られる青島武氏の小説家デビュー作。北陸を中心にロケ撮影された映画とは異なり、青島氏が過去にロケハンで度々足を運んだ北海道を舞台にしている。また少年時代の篤、啓太、悟たちが涼子の営む喫茶店で過ごしたのは王貞治選手が本塁打通算世界記録を更新した1977年の夏と時代設定が具体的になっており、現役引退後も監督として活躍を続けた王選手とある事件を起こしたことからバラバラになる主人公たちとの30年の歳月が対称的に描かれている。血の繋がりが家族なのか、それとも喜びや悲しみを共に分かち合った仲間こそが家族なのか、これからの時代の家族の在り方について考えさせる物語だ。
映画『追憶』
監督:降籏康男
撮影:木村大作
原案・脚本:青島武 瀧本智行
出演:岡田准一 小栗旬 柄本佑 長澤まさみ 木村文乃 安藤サクラ 吉岡秀隆
音楽:千住明
配給:東宝
全国公開中
©2017映画「追憶」製作委員会
公式サイト:http://tsuioku.jp/
https://www.youtube.com/watch?v=pCm56z6A0Kg