Jun 08, 2019 interview

岡田准一が語る『ザ・ファブル』、“闘いの連続”だった現場とコミカルシーン撮影秘話

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原作で気付いたファブルの細かい心情

──どのようにして原作のビジュアルに寄せていきましたか?

まず体作りから始めました。3カ月ほどかけてトレーニングして。漫画のファブルは細いんですけど、僕の中のプロの殺し屋のイメージはある程度体格は大きいので、これなら戦えると思えるぐらいの体にしていきました。例えば原作通り細い体でやったとして、気にならない方もいるかと思いますが、中には「そんなペラペラな体で勝てるのか?」と言う方もいると思うんです。だからやりすぎない程度に“プロの殺し屋”という説得力が出せる範囲で作っていきました。

──原作に忠実にしなければいけない部分とリアルに説得力を持たせる部分のバランスを取っていくのは難しそうですね。

そうですね。そこのバランスは難しかったです。いつものように心を整えて演じるだけではなく、髪型などを原作になるべく寄せて、シビアに役作りしていきました。とてもありがたかったのが、スタイリストの伊賀大介さんが「一体どこでこの服を見つけてきたの?」というぐらい絶妙な衣装を用意してくださって(笑)。漫画の登場人物たちが着ている服にそっくりだったんです。最近はこういう衣装で芝居してなかったので新鮮でした(笑)。

──(笑)。内面に関してはどんなところを意識して演じられましたか?

プロの殺し屋として生きている彼は一般の人とは住む世界が違うので、そこの軸だけはちゃんと持ちながら演じるようにしていました。例えば、大晦日に屋上でヨウコとファブルが話している場面が原作にあるんですけど、「(来年も)正月をむかえられるか」ということをファブルが言うんです。その描写で、彼が自分の死がすぐ近くにあることを意識していたんだと気付いたというか。そこを心の支えにして演じていたように思います。漫画原作だと、そういう細かい心情を知ることが出来るのがいいですよね。原作者の方が込めた想いも伝わってきますし。もちろんファブルが死を近くに感じているような直接的な描写は原作にもないんですけど、達観しているのか物悲しさを抱えているのか、ボーッとしているように見えて実はそれは哀愁なのか、ハッキリとしたことは不明であっても、そういう部分は大事に演じるようにしました。

──映画ではファブルの子ども時代も少し描かれていましたが、そこも役作りに反映されましたか?

あれは原作にはなかった描写ですが、彼のバックボーンのようなものは掴めた気がします。よくファブルが子どもっぽく見えたとおっしゃる方がいるのですが、おそらく子ども時代のパートがあったので自然とそう見えたのではないかと。僕自身は子どもっぽさは特に意識してませんでした。ただ、熱々の魚を齧った瞬間のリアクションとかは少し可愛く演じた記憶があります(笑)。