Jun 11, 2019 interview

前田敦子、“幸せ”な黒沢清監督の現場と“毎日が初挑戦”の日々を語る

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本番で気付いた名曲「愛の讃歌」の壮大さ

──葉子が、フランスの国民的歌手エディット・ピアフの「愛の讃歌」を歌うシーンがすごく印象的でしたが、どのような気持ちで挑まれたのでしょうか?

監督から「『愛の讃歌』を歌ってください」と言われた時に「なんでそんな難しい曲を?」と思いました(笑)。脚本を読んでみると、「愛の讃歌」を葉子が歌うシーンはこの作品の醍醐味にも感じたので、いつもだったら「とりあえずやってみよう」と思うタイプなのですが、今回は自分が出来る範囲のことは徹底的にやって準備しなければ、と気合いを入れました。

──どのぐらい練習されたのですか?

1週間に1~2回ほど練習して、それを三カ月ほど続けました。その頃ちょうど「そして僕は途方に暮れる」という舞台に出演していたので、声を使うことも多く、舞台にもプラスになりました。とにかく「いま私が出来ることはこれが精一杯です」と言い切れるほど練習しなければという気持ちで。歌いやすいようにキーを調整していただきましたし、監督がアレンジにもこだわってくださったので、今までにない「愛の讃歌」になっていると思います。だからこそ「自分らしくどう歌えるのか」と、大きなプレッシャーを感じたりもしました。

──エディット・ピアフが歌うフランス語版の「愛の讃歌」の歌詞は狂気に近い愛の歌を表現していますが、本作で前田さんが歌われたものは、和訳された歌詞の中でもオリジナルに近いものだったそうですね。

和訳されたものがいくつかあって、その中からエディット・ピアフの歌詞に近いものを監督はセレクトされたそうです。練習している時は平気だったんですけど、いざ本番で歌い始めたらこの曲の壮大さや歌詞のすごさに気付いてしまって、一瞬パニックになってしまって(笑)。歌いながらもこの曲が持つ世界に負けそうになったというか……負けました(苦笑)。

──歌っているうちにどんどん心が追いつかなくなるような感覚だったのでしょうか?

昔から愛されている名曲というのは、歌そのものに魂が宿ってるんだなと思い知らされたんです。ただ、直接胸にズキっと刺さるような歌詞なので、詞の世界に浸り過ぎてしまうと逆に伝わらないよと監督がおっしゃって。撮影は実際に山へ行って8テイクほどワンコーラスをフルで歌ったんですけど、なるべく客観的な視点で歌えるように気をつけながらトライしていました。気付いたら結構時間が経っていて、綺麗に日焼けしていたのも良い思い出です(笑)。

──前田さんは歌手としても活動してらっしゃるので、歌手を夢見るという役は感慨深いものがあったのではありませんか?

私はどちらかというとポップな歌を歌ってきたので、魂を持っているような曲を歌うのは今回が初めてでした。ただ、台詞に関しては歌手を夢見る葉子に共感できる部分も多かったです。