Jun 11, 2019 interview

前田敦子、“幸せ”な黒沢清監督の現場と“毎日が初挑戦”の日々を語る

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国内外で圧倒的評価と人気を誇る映画監督・黒沢清が、1カ月におよぶオール海外ロケに挑んで完成させた『旅のおわり世界のはじまり』。主人公を演じるのは、シングル「セブンスコード」のミュージックビデオとして制作された映画『Seventh Code』(14年)、『散歩する侵略者』(17年)に続き黒沢監督と3度目のタッグとなる前田敦子。「カメラに映ると、他の何者にも似ていない強烈な個性を発揮するものすごい女優」と黒沢監督絶賛の前田が、本作の撮影を振り返りながら語ってくれた。

出演者は“黒沢ワールド”に染まる?

──黒沢監督とは3度目のタッグになりますが、“舞台で歌う”という夢を胸に秘めたテレビリポーターの主人公・葉子を演じるにあたり、監督から「愛想笑いはしないでください」「普段の前田さんのままで」というリクエストがあったそうですね。

ロケ地のウズベキスタンの街中ではゲリラ撮影も多く、現地の方々が普通に生活している場所を葉子が訪れるので、「普段の前田さんのままでいてください」とか「基本的には笑わないでください」という監督からのリクエストがありました。でも、現地の方と目が合うと、どうしても反応したくなってしまうので、“笑わない”というのはすごく難しかったです。

──劇中では現地の方が少し怖いと思ってしまうような描写もありますが、実際は優しい方ばかりだったのですね。

そうなんです。皆さんニコっと微笑みかけてくださるので「心を開かないでくださいって言われても無理です~!」と思いながら(笑)。とはいえ葉子のキャラクターを考えるとそういうわけにもいかず、申し訳ない気持ちでいっぱいになりながら撮影に挑んでいました(笑)。

──以前の黒沢監督の演出方法とは全く違っていましたか?

劇団イキウメの演劇を映画化した『散歩する侵略者』の時は、監督が「舞台っぽくしたいです」とおっしゃって、例えば「ここからここに動いてここに座って、この時はこんな感じで立ってください」と、全ての動きを考えて指示してくださいました。それより前にご一緒したミュージックビデオや映画『Seventh Code』の時も全く違う演出方法でしたし、今までは事前にしっかり決めていただくことが多かったので、今回のような基本的に普段の私のままでという演出に少し不安を抱いていたんです。ただ、リポートしたり、街を歩くシーン以外の、葉子一人だけのシーンの撮影の時はしっかりと演出をつけてくださいました。そのように同じ役に対して違う演出方法をされた場合でも、完成作を観ると人物像はちゃんと統一されていて「あ、なるほど」と腑に落ちるのは、撮影中にすでに監督の頭の中できちんと形になって繋がっているからなんですよね。本当にすごい方だなと改めて感じました。

──黒沢監督の現場での様子を教えていただけますか。

穏やかな雰囲気や人の良さが監督から滲み出ていて、それがスタッフさんやキャストに伝染するんです。みんなが居心地良さそうにニコニコしながらも「黒沢監督のために何かをしたい」という真剣な想いを持っている。ごくたまに「もしかしていま監督から意地悪なことを言われてる……?」と思う時もあるんですけど、お茶目な感じでおっしゃるので、全く嫌じゃないんです(笑)。加瀬亮さん(カメラマン岩尾役)が、「みんな黒沢作品に出演すると“黒沢ワールド”に染まるのがどうしてなのか不思議に思っていたけど、岩尾が一人でしゃべるシーンを撮り終わった時に自分もそうなっていたから腑に落ちた」とおっしゃっていました。そんなふうに私も監督の世界観に飲み込まれてるんだろうなと思います。

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