『スプリット』では2つの欧州映画を参考にした
──脚本のアイデアを練る際に、さまざまな題材をヒントにすると思うのですが、今回の来日で日本のコミックを探索するそうですね。
そうなんだ。取材が終わったら、コミックストアに行こうと思ってる。日本のティーンエイジャーがどんな作品に興味あるのか、調査したくてね(笑)。
──『ということは、これまでに日本のコミックから何かインスピレーションを受けたことはあるのですか?
いや、今のところは、まだ(笑)。脚本家として、過去の多くの映画はもちろん、小説や絵画からは常にインスピレーションは受けているけどね。ただ、脚本を書き始めたときに、無意識に参考にした小説や絵画は、その後、記憶から消えてしまうことも多い。正確に「この作品」と断言できない場合もあるね。
──では、今回の『スプリット』で参考にした小説や映画で、今も思い浮かぶものは?
小説や絵画は思い出せないが、映画ならフランスの『隠された記憶』(05)とギリシャの『籠の中の乙女』(09)だな。脚本を書くうえで、その2作に影響を受けたんだ。撮影中に意識したのは、ロバート・アルトマン監督の作品だね。カメラをズームする動きやカット割りなんかは、アルトマン映画に近づけたよ。
──自作への影響に関係なく、好きな小説はありますか?
ひとつ挙げるなら、アイン・ランドの『水源』だね。何度も読み返している小説だ。2人の建築家が主人公で、1人は経済的に成功し、周りから賞賛も集めている。もう1人は揺るぎない信念を持ち、頑固な性格。そのせいで厳しい人生を送る。この対比が面白いんだ。
──では最後に、次回作について教えてください。簡単なヒントでもいいので……。
ちょっと今は話せない。でも、あと数時間、待ってくれればわかるよ。正式な発表があるんだ(笑)。
※この後、シャマラン本人がツイッターで次回作を発表。タイトルは『Glass』(原題)で、『アンブレイカブル』の続編であり、『スプリット』の続編でもあるという。『アンブレイカブル』からはブルース・ウィリス、サミュエル・L・ジャクソンが、『スプリット』からはジェームズ・マカヴォイとアニヤ・テイラー=ジョイが出演予定。
取材・文/斉藤博昭
撮影/名児耶洋
M.ナイト・シャマラン
1970年生まれ、インド出身。生後すぐにアメリカのフィラデルフィアに移住。少年時代から映画を撮り始め、『スチュアート・リトル』(99年)の脚本を執筆。メジャー作品での監督デビュー作は『翼のない天使』(98年)。続く『シックス・センス』(99年)が大ヒットし、アカデミー賞作品賞・監督賞などにノミネート。人気監督となる。その他の代表作は『アンブレイカブル』(00年)、『サイン』(02年)、『ヴィレッジ』(04年)、『ハプニング』(08年)、『ヴィジット』(15年)など。TVシリーズ『ウェイワード・パインズ 出口のない街』(15~16年)でも製作総指揮・監督を務めた。
映画『スプリット』
女子高校生3人が正体不明の男に誘拐・監禁される。犯人のケビンは解離性同一性障害で、さまざまな人格に代わり、3人を弄んでいくという衝撃のサスペンス。ケビン役のジェームズ・マカヴォイが、9歳の少年から、潔癖性の青年、上品な女性まで、さまざまな人格を巧みに演じ分ける。いつ、どんな人格が現れるかもわからず、観客も監禁された少女たちの目線になって、緊迫感とスリルを味わうことになる。ケビンに宿った人格の数は23だが、24番目の人格が出現するクライマックスは、信じがたい展開に息をのむはずだ。全米では3週連続ナンバーワンという異例の大ヒットを記録。M.ナイト・シャマラン監督にとって新たな代表作となった。
映画『スプリット』
監督・製作・脚本:M.ナイト・シャマラン
製作:ジェイソン・ブラムほか
出演:ジェームズ・マカヴォイ、アニヤ・テイラー=ジョイ、ベティ・バックリー、ジェシカ・スーラ、ヘイリー・ルー・リチャードソンほか
配給:東宝東和
2017年5月12日(金)よりロードショー
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公式サイト:http://split-movie.jp/