May 11, 2017 interview

今回もネタバレ厳禁!冒頭から悪夢に突き落とされる新作『スプリット』シャマラン監督インタビュー

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多様な映画を作ってきたシャマランも、いくつもの人格がある?

 

──複数の人格を持つ主人公が出てくる作品の場合、「どこにでもいそうな人が実は……」というパターンが多いと思います。『スプリット』は、けっこう最初から、解離性同一性障害であることを描いていますね。

それは僕の狙いだった。よくある映画のパターンは、たとえば全3幕の場合、最後の3幕目でいろいろな事実が明らかになる。『スプリット』は、その3幕目からスタートさせようと思ったのさ。観客はスタート地点から悪夢に突き落とされる。主人公に捕らわれた少女たちが、性的に乱暴を受けたり、肉体を切り刻まれたり、そんな想像をめぐらせることだろう。でもそれは、よくあるパターン。『スプリット』は物語が進むと、もっと奇妙な展開をみせるんだ。「こういう映画だと思ってたのに、何これ?」となる。その繰り返しで、面白い映画になると思ったのさ。

 

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──過去の解離性同一性障害を描いた映画で、何か意識したものは?

そんなにいっぱいはないよね。ぱっと思い浮かぶのは、『イブの三つの顔』(57)かな。大好きな作品のひとつだよ。『イブ~』では主人公の人格が変わると、顔自体も変化するのが映像で描かれていた。僕の『スプリット』では、顔は変化させていない。そこが大きな違いだね。あとはサリー・フィールド主演の『シビル』(原題/76)なども観たけど、内容は忘れてしまった(笑)。他に何かあったっけ?

──『殺しのドレス』(80)とかは?

そうだ! ブライアン・デ・パルマの傑作があったね。でも僕にとっては『イブの三つの顔』以降、解離性同一性障害を描いた“決定版”の映画は出てきてないと思う。この分野は、まだまだ映画として開拓できるんじゃないかな。

──あなた自身も、これまで多様な映画を作ってきたので、いくつもの人格があったりして?

そういう見解はおもしろいね(笑)。僕が得意なのは、いくつものジャンルを盛り込んだ映画で、そういう作品ができると、僕自身も満足するし、観客も安心して観てくれるみたいだ。未知のジャンルを撮って、評論家や観客から「これはあなたが作るべき映画じゃない」と批判された経験があるし(笑)。

──今年のアカデミー賞授賞式で作品賞発表のゴタゴタがあったとき、あなたが「このオチは僕が書いた」なんてツイートしていたので、意外にお茶目な人格もあるのかと……。

まぁ、ユーモアはあるかな。でも今こうしてインタビューを受けている時間もそうだけど、これがレギュラーの人格だよ。

──別の人格に変わったように、キレることは?

映画に関しては、たまにあるかも。たとえば友人が自宅を訪ねて来て、テレビをつけると『パルプ・フィクション』(94)が流れていたとする。もし友人が『パルプ・フィクション』を観たことがなかったら、「途中から観るのは禁止だ! 絶対に最初からじゃなきゃダメ!」と怒り出すだろうね(笑)。

 

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──人格を変える演技は俳優にとってもハードルが高いと思いますが、今回の主役、ジェームズ・マカヴォイはいかがでしたか?

本当に素晴らしかったよ。カットをかける度に、僕はジェームズに近づいて「今の演技、最高だよ!」なんて声をかけていた。でもその度に彼は「いやぁ、そんなことないけどなぁ」なんて照れてばかりいたな。

──おごりたかぶらない性格なんですね。

そうなんだ。ジェームズは、ものすごく謙虚な性格の持ち主(笑)。世界中でもトップクラスの演技力があり、あらゆる役を演じられる才能があると思うよ。そんなことを本人に言うと、さらに彼は謙虚になるけどね。

 

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