公開前からメディアや批評家から「スパイダーマン映画史上最高傑作」と絶賛を受け、公開されるや全米初登場1位を獲得。さらに、スパイダーマン映画シリーズで初めてアカデミー賞の長編アニメーション賞、ゴールデン・グローブ賞のアニメーション作品賞にノミネートされ、見事受賞した『スパイダーマン:スパイダーバース』。そんな話題沸騰の本作において、CGアニメーターとして参加している日本人スタッフの若杉遼さんにお話を伺った。
ハリウッドCGアニメーターの仕事の流れ
──若杉さんはソニー・ピクチャーズ・イメージワークスに所属されていますが、本作に参加された経緯は?
基本的には上司から「次はこのプロジェクトだよ」と言われる感じです。今回のケースでは、作業は終盤の詰めの段階でした。その時、ちょうど自分が参加していた別の映画が終わったので、応援に呼ばれて参加したという流れです。
──若杉さんの今回の役割についてですが、どういったところを担当されたのでしょう?
この作品に限らず、ソニーではキャラクターごとではなく、カットやシークエンスごとに割り振られるので、作業する箇所によっては全部のキャラクターがいたりします。僕が関わったのは短い期間でしたが、今回は全部のキャラクターを触りました。
──CGアニメーターのお仕事って、具体的にはどういうことをされるんでしょうか。操り人形を動かすようなものだと伺いました。
そうですね。3Dで作られた空間に人形が置いてある感じです。造形はありますが、色も質感もまだありません。何のポーズもとってなくて、顔も無感情なところから始まります。そこで“コントローラー”と呼ばれるシステムの数値を動かして、まぶたを上げたり、眉毛を上げたり、肩を上げたり、腕を曲げたりとポーズを作って、そのポーズの連続で動いているように見せるという仕組みです。アニメーターが動きを完全に作り終えると、次の部署に移って色や質感を加えていくという流れですね。
──キャラクターの動かし方について、もちろん脚本や絵コンテに沿った上でですが、ある程度はアニメーターの裁量に任されるんですか?
そうですね。監督から「このカットはこういうイメージでこんな動きにしてほしい」という、“キックオフ”と呼ばれる説明があります。それに対して、自分たちで、どうやれば監督の頭の中のイメージを再現できるかを考えてアニメーションを作っていきます。
──そうなると、Aさんが付けたものと、Bさんが付けたものでは違いが出る気がしますが、その辺りはどうやって調整を?
そこは完全に監督やスーパーバイザーの力です。日本との違いの一つなんですが、日本だとほぼアニメーションを作り終えたところで調整が入るので、1、2回の直しで終わることが多いようです。でも、こっちでは早い段階から頻繁に監督に見せるので、かなり細かい所まで指示が入るんです。そうやって監督が全体を見ながら擦り合わせをしていきます。