映画を見て自分たちのトークの進化がわかった
──先ほど、いとうさんが「企画屋」とおっしゃいましたが、今回の映画化という企画はおふたり発信のものですか?
みうら いやいや、WOWOWさんからですよ。
いとう 僕らはこういう企画は出さないね。自分たちを押し出すタイプじゃないから。たとえば、「ウクレレえいじが面白いから、ウクレレえいじ主演の映画を作ろう」とかいうのは好きなわけ。
みうら 映画版は、いとうさんと俺にそっくりな偽物が出た方がいいよね(笑)。
いとう そういう余計なことを言ってダメにするケースがたいていなんだよ(笑)。
──では今回の映画に関して、おふたりはあくまで撮られる側ということですか?
いとう そうそう。
みうら そのつもりだったんだけど(笑)。今まで撮ってたまってる素材もかなりあるから、僕らはインタビューを受けるだけ。インタビューは『ラスト・ワルツ』(ザ・バンドのドキュメンタリー映画)みたいに撮ってって言ったんだけどね。ロビー・ロバートソンがしゃべってるようにカッコ良く撮ってほしいって(笑)。
いとう 「ロングインタビューはふたり一緒にやるより、ひとりひとり聞いたほうがいいんじゃないの?」とは、俺たちが言ったんだよね。そこは企画屋として。
──完成した映画をご覧になって、いかがでしたか?
いとう 正直言って、こんなに面白くなると思ってなかった。「自分たちにとっては過去のネタだし、それを集めても想像以上には行かないんじゃないかな。WOWOWの人たちはやる気になってるけど」と思ってたけど、見てみると面白かった。ひとりひとりで『スライドショー』に関してロングインタビューをされたことが案外なかったんだけど、みうらさんのインタビューを見たら「ああ、やっぱりみうらさんもああ考えてたんだな」と。
みうら そうそう。同じだったんですよ。流石、レジェンド仲良し(笑)。
いとう この20年間の歩みの大事なところで、同じ判断をしてたってことがわかった。
みうら ブレてなかったって映画を見て改めて思いました。節目節目で何回かあるんですよ。
いとう 「規模を大きくしていくか?」「大きくしないなら、客をがっかりさせないためには何をやればいい?」とか。
──そういうところでの判断がおふたりとも一緒だったんですね。
いとう 「ツアーやんないか?」はみうらさんが言ってきたでしょ(2007年の『ザ・スライドショー10 JAPAN TOUR2007』)。僕の要求は「ツアーをやるなら、各会場で同じネタじゃないようにしてくれ」ってことで。僕は同じネタにはツッコめない体質があって。でも、それはネタを集めるみうらさんにはものすごい苦労があるわけ。5カ所で600枚ぐらいの写真を使うわけだから。
みうら 地方公演は映像に残ってないものも多いんですよ。
いとう 「撮ってくれ」って言ってたんだけど、スタッフもそれどころじゃなかったりして。だから、幻の『スライドショー』がいくつかあるんですよ。
みうら 東京でやって、当然、地方でも手を抜くわけにはいかないから。それが映像に残ってないのは悔しいけどね。
いとう 完全な即興芸だから、もう一回やれって言われてもできないから。
──ということは、映像に残ってないショーは再現不可能なんですね。
いとう 直後はなにやったかさえ覚えてないからね。後で映像を見て初めて「ああ、そうだったそうだった」って思い出すんですけど。
みうら 映画で時系列で見てみると、進化してるのがわかるんですよ。それはおもしろかった。
いとう そう。停滞したり、慣れ合ったりしないまま来たわけですよ。20年走ってみると、すげえ筋肉ついてるなってことがわかった。
──スクリーンに映し出されるビジュアルだけでなく、おふたりのコメントで笑いが増幅されてますよね。
みうら そこがお客さんと共有するところだからね。
──みうらさんが見せる写真には何の変哲もなくて、ただ見るだけだと面白さがわからないものもありますよね。そこにおふたりのコメントが入って、面白さがわかる。
みうら この20年間の中盤からはそういうものを入れるようにしてます。すぐ「おかしい!」って笑うものより、揉んでおかしいほうが、より高度で面白いんじゃないかと。
いとう 写真が出た時点で面白いものは、みうらさんひとりでも成立するじゃないってことなんです。写真はトークのきっかけにすぎないって変換した時期が一番大きいと思う。
みうら そうだね。やっぱり、VOW(雑誌『宝島』の読者投稿コーナー)的なネタは世間でも認知されちゃったから。
いとう そういうネタをやる人も出てきて。
みうら だから、いとうさんが僕にツッコんでたように「あんたがおかしいよ!」ってネタにしてい った。
いとう 「そんなものを撮って集めてくること自体がおかしいよ」って。
──各回のサブタイトルにも入ってる要素ですよね(「みうらさん、あんた、どうかしてるよ!」「みうらさん、まだあんのかよ!」など)。
みうら サブタイトルは全部ツッコミだから(笑)。
いとう その時点のおかしさについて言ってるからね。