Jan 14, 2019 interview

最新作は遺作その1?! 堤幸彦監督が“十二人の次世代を担う俳優たち”と影響を受けた映画作家を語る

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次世代を担う役者たちを見て、堤監督は何を感じたか?

 

──12人の役者さんのうち半分をオーディションで選ばれたと聞きました。

それぞれキャラクターに合うかどうかということだけで選ばせていただいたので、そういう意味では非常に素直なオーディションでした。そこにいまをときめく役者さんが混じっているのもいいですよね。これだけ揃っていると潔くないですか(笑)? もうひとつ良かったのは、大御所の俳優さんがいないこと。きっと変な緊張をせずにやりやすかったんじゃないかなと思います。

 

 

──監督はそれぞれのキャラターの心情を丁寧に説明しながら演出されたと資料にありましたが。

いえ、そんなに説明する必要はなかったです。それよりも役者の理解力を知りたかったですし、もしも僕の考えと役者の考えに違いがあってもそれを楽しんでいたというか。各々が自分なりにキャラクターを消化して挑んでいたので、「君、このキャラクターの解釈は間違っているよ」なんてことは一切なかったです。逆に「そういう風に理解したんだな」と良い意味で驚かされることはありました。

──若い役者さんたちの芝居をご覧になって何か発見はありましたか?

先ほどもお話したように、大御所の方がいなかったせいか、リラックスしている雰囲気はありましたね(笑)。でも、そんな中で共演者の芝居を見て「ここまでやらなきゃいけないんだな」と刺激を受けた子もいたと思います。まるで高級な演技学校にいるような感じで、彼らを興味深く見ていました。

 

 

現代社会に対する危機感、作品に込められたメッセージ

 

──本作はもちろん、2015年公開の『悼む人』や昨年の『人魚の眠る家』など、人の死を扱った作品も精力的に手掛けられていますが、死生観について世の中に発信したいお気持ちが強まっているということはありませんか?

確かに人の死の重さに対して、最近どんどん軽くなってきているのではないかという認識はあります。ただ、私自身は社会的なことを自覚し始めた16~17歳ぐらいから死に対する思いはそんなに変わってない気がします。どちらかというとSNSの普及によって言葉で気持ちを伝えることが少なくなったことや、行動に移すということに対して多くの人が無感覚になっていることに危惧を覚えているというか。この映画をご覧になればわかると思いますが、僕は杉咲花さん演じるアンリというキャラクターにとても感情移入できました。彼女の覚悟を持った行動に対して「いかん!」という気持ちもありつつも理解できるんです。それは日本人に脈々と流れる三島由紀夫の美意識のようなものかもしれませんね。そういう美しさは無視できないと思っていて、むしろそれこそがリアリティを感じさせてくれるような気がします。

 

 

──最後まで観ると単純に“自殺をしてはいけない”というメッセージだけが込められた作品ではないことがわかります。

12人の中には親の問題を抱えている子もいますが、その親たちが責任を持った生き方をしてこなかったからこそ、自分の娘や息子があの場所に来ざるを得なかったんです。子どもたちだけじゃなく親も含めて多様な問題を抱えていて、その問題を生む原因を作った日本の社会に対するメッセージがこの作品には込められているのではないかと思います。