Jan 14, 2019 interview

最新作は遺作その1?! 堤幸彦監督が“十二人の次世代を担う俳優たち”と影響を受けた映画作家を語る

A A
SHARE

「神のような存在」と仰ぐ、影響を受けた人物とは?

 

──監督はTVドラマや映画だけじゃなく、動画配信サービスParaviで配信中の、「ケイゾク」「SPEC~警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿~」シリーズの続編「SICK’S 恕乃抄 ~内閣情報調査室特務事項専従係事件簿~」のメガホンもとられました。時代に合った様々なメディアを使って世の中の人を楽しませようという意識をお持ちなのかなと思ったのですが。

どんなメディアでも表現するものに優劣はないわけで、たとえばiPhoneで全編撮影した映画監督なんかは僕みたいないろんなメディアを横断する人間には追い風になっているんです。21歳までテレビも映画もほとんど観たことがなかった僕が縁あってこの世界に入って、給料3万円からスタートして、そのあとドラマやバラエティ番組、映画に舞台、配信やCM、はたまた海外だろうとどこだろうと境界なくやってきました。なので何かひとつのメディアにハマるというわけではなく、もともと貧乏性なので(笑)、お仕事をいただけるならなんでもオッケーというスタンスなんです。これからもそれは変わらないと思いますよ。

──常に楽しみながらお仕事されている印象があります。

もう63歳なので疲れが出るようになりましたけどね(笑)。あと10年いけるかいけないかぐらいじゃないですかね。そろそろ遺作を…この作品を“遺作その1”にして、どんどん数が増えていくのも面白いかもしれません(笑)。

 

 

──(笑)。監督にはまだまだ沢山の作品を世に送り出していただきたいです! 最後の質問になりますが、監督がクリエイターとして影響を受けた作品や人物を教えていただけますか。

21歳まではロックばかり聴いていましたし、ロック映画しか観てこなかったんです。ギターを弾いたり歌を歌ったりロック漬けの日々で。そのあと『死刑台のエレベーター』というフランスのサスペンス映画に出合って、監督を務めたルイ・マルから大きな影響を受けました。『地下鉄のザジ』というコント映画や『鬼火』という精神を病んだ男の自殺を描いた作品など凄い作品を沢山撮っている人です。あと僕の監督デビューのきっかけを作ってくださった森田芳光監督の『家族ゲーム』や伊丹十三監督『お葬式』、ドラマでは「寺内貫太郎一家」や「時間ですよ」の久世光彦さんからも多大な影響を受けています。皆さん僕にとっては神のような存在で、神が作った作品に一歩でも近づけるように、これからの10年はもっとアクセル踏まないとダメだなと思っています。

取材・文/奥村百恵
撮影/三橋優美子

 

北村匠海×高杉真宙 インタビューはこちら

 

プロフィール

 

堤幸彦(つつみ・ゆきひこ)

1955年生まれ、愛知県出身。1988年にオムニバス映画『バカヤロー! 私、怒ってます』の一編で映画監督デビュー。ドラマ「金田一少年の事件簿」シリーズや「ケイゾク」「トリック」「SPEC~警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿~」シリーズなどのヒット作を手掛ける。主な映画監督作に『20世紀少年』3部作、『悼む人』、『人魚の眠る家』など。ドラマ「SICK’S」3部作の新シリーズ「覇乃抄」が2019年春にParaviで配信予定。

 

作品紹介

 

『十二人の死にたい子どもたち』

ある日、12人の未成年たちが安楽死を求め廃病院の密室に集まった。「みんなで死ねば、怖くないから」と。ところが彼らはそこで13人目のまだ生あたたかい死体に遭遇し、突然の出来事に安楽死の計画は阻まれてしまう。あちこちに残る不自然な犯行の痕跡や次々起こる奇妙な出来事に、「12人の中に殺人鬼が?」と互いを疑い始める。死体の謎と犯人をめぐって疑心暗鬼の中ウソとダマしあいが交錯。12人の死にたい理由がそれぞれ明かされていき、いつ誰が殺人鬼と化すかもわからない中でひとつひとつ状況を推理していく彼ら。果たしてみんなで安楽死できるのか、それとも怯えながら殺されるのか。そして密室サスペンスの謎は解けるのか――。

原作:冲方丁「十二人の死にたい子どもたち」(文春文庫刊)
監督:堤幸彦
脚本:倉持裕
出演:杉咲花 新田真剣佑 北村匠海 高杉真宙 黒島結菜/橋本環奈
吉川愛 萩原利久 渕野右登 坂東龍汰 古川琴音、竹内愛紗
配給:ワーナー・ブラザース映画
2019年1月25日公開
©2019「十二人の死にたい子どもたち」製作委員会
公式サイト:http://shinitai12.jp

 

原作本紹介

 

©冲方丁『十二人の死にたい子どもたち』(文春文庫 刊)

「十二人の死にたい子どもたち」冲方丁/文春文庫刊

「マルドゥック・スクランブル」や「天地明察」などで知られる冲方丁が、デビュー20年目にして初めて書いた現代長編ミステリー。集団安楽死をするために集結した性格も価値観も環境も違う12人の未成年らが、13人目の死体を発見したことで疑心暗鬼のなか謎を解きつつ嘘と騙し合いが交錯する物語となっている。

 

堤幸彦監督が影響を受けた作品

 

『死刑台のエレベーター』監督:ルイ・マル

ノエル・カレフの推理小説を、製作当時25歳だったルイ・マルが監督した傑作サスペンス。完全犯罪を計画した不倫関係にある男女が、犯行の実行途中でエレベーターの停電により計画が狂っていくというストーリー。手持ちカメラの映像やマイルス・デイヴィスの音楽などが印象的なヌーヴェルヴァーグの代表的作品。

 

『家族ゲーム』監督:森田芳光

松田優作を主演に迎え、息子の高校受験のために雇った風変わりな三流大学7年生の家庭教師がやって来たことによって一家に巻き起こる騒動をユーモラスに描くホームコメディ。食卓に横一列に座る食事シーンなど、森田監督の手腕が光る斬新な場面が話題を呼んだ。森田監督の代表作のひとつで、1983年に公開された。