レジェンド声優インタビュー
柴田秀勝[声優道編]
arranged by レジェンド声優プロジェクト
アニメ黄金期の立役者である「レジェンド声優」と、自らもレジェンドである声優・古川登志夫さん、平野文さんが濃密トークを繰り広げるレジェンド声優インタビュー。今回は、声優業界のご意見番としても知られる声優・柴田秀勝さん。『タイガーマスク』のミスターXなど、数々のボスを演じてきた柴田さんが、その声優道をふり返ります。
七五調をやらせたら俺の右にでる声優はいない!
- 平野文:
(以下、平野) -
青二プロに移籍して、つまり専業の声優となった直後に『タイガーマスク』(1969年)の名悪役・ミスターXを演じることになったわけですが、その辺りのお話を聞かせていただけますか?
- 柴田秀勝:
(以下、柴田) -
当時の俺は、声優をやるぞという気持ちにはなっていたものの、やっぱりまだ実写の仕事にも未練があって、ちょろちょろとそちらの仕事にも色気を出していたんだよ。そうした社長がね、ミスターXは「タイガーめ……」って言ってるだけで良いんだから、とにかくやってみてくれって(笑)。
でもさ、俺は吃音症で「た」行の音が出せないから、その「タイガーめ……」が言えないんだよ。
- 古川登志夫:
(以下、古川) -
そういえば!
- 柴田:
-
案の定、やっぱり言えなくてね。さてどうしようと思った時に、フッとすごい解決策を思い付いたんだな。
- 平野・古川:
-
?
- 柴田:
-
「タイガーめ……」だと言えないんだけど、その前に含み笑いを入れれば「フフフ、タイガーめ……」になるだろ? そうするとちゃんと言えるんだよ(笑)。DVDとかを持っている人にはぜひとも確認してみてもらいたいね。基本的に全部「フフフ」から始まっているはずだから。
- 古川:
-
あの名演技の裏にそんな秘密があったとは(笑)。
- 柴田:
-
ナイスアイデアだろ? でも不思議なもんで、そうやってミスターXを演じているうちに、いつの間にか吃音症も治っちゃったんだよな。
- 平野:
-
まさに奇跡ですね。そして、そのミスターX役を、昨年、続編となる『タイガーマスクW』で再び演じることになりました(編集部注:ただし、第1作目のミスターXとは別人という設定)。これはどういう経緯で、柴田さんがやることになったんですか?
- 柴田:
-
そのちょっと前に、『銀河鉄道999』原作の松本零士先生と、『タイガーマスク』で監督を務めた東映の勝間田具治さんとでトークショーをやったのよ。そうしたら、勝間田監督が、今、タイガーマスク新作の企画に携わっているって教えてくれてね。しかもミスターXが出るっていうんだよ。それはもう俺がやるしかないでしょう? その場で監督に直談判して、『タイガーマスクW』でもミスターXをやらせてもらうことになったんだよ。「その役は人には渡せねぇよ」って。
- 平野:
-
ですよね。ちなみにミスターXを演じるのは何年ぶりだったんですか?
- 柴田:
-
47年ぶり。業界的にあり得ない話だって言われたよ。だいたい、全とっかえになっちゃうんだってさ。
- 平野:
-
でも、柴田さん以外のミスターXは考えられませんよね。結果的には大正解だったと思います。