Aug 24, 2017 interview

日本史上最大の野戦である「関ヶ原の戦い」を初めて映画化!原田眞人監督インタビュー

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司馬遼太郎宅に電話した新人時代の思い出

 

──原田監督の前作「日本のいちばん長い日」も日本が重大な歴史の岐路に立った物語でしたが、閣僚たちがポツダム宣言を受け入れられずにいる状態が続きました。『関ヶ原』でも関ヶ原の戦いに従軍しながらも最後まで東軍と西軍のどちらに付くのか決めかねていた戦国大名たちが多かったという事実に驚きました。原田監督の群像劇を観ていると、物事を即決即断できない日本人像、日本人論が描かれているように感じます。

日本という国は合議社会であることは確かにあるでしょうね。太平洋戦争と関ヶ原の戦いでは時代も大きく異なり、考え方も違ってきますが、どちらも一族の存亡が掛かっているわけで、簡単には決断できなかった。日本人はトップが独断で決めて、それに向かって突き進んでいくということがどうもできない。日本人論を意識して描こうと思ったわけではありませんが、家康ではなく三成がもしも関ヶ原に勝っていたら、日本人の思考性はもっと違ったものになっていたんじゃないかと僕は思います。三成が勝っていたら、日本人は今よりはもう少し合理的に物事を考える人種になっていたんじゃないですか。でも、家康が勝ち、情の世界が根づくことになり、そのことは日本人観にけっこうな影響を与えているように思いますね。三成が海外に行きたがっていたという史実はないんですが、僕が考える三成だと彼は関ヶ原に勝っても豊臣政権での役職には固執せずに、新しいことに挑戦したような気がするんです。もしかしたら新しい世界を求めて海外に旅立ったんじゃないかなと。幕末の志士たちのように西洋まで渡航したかもしれませんよね。

 

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──権力の座に執着せず、新しい世界へと旅立つ―。やはり男のロマンを感じさせます。毎回、クリエイターのみなさんに愛読書や読書遍歴をお聞きしているのですが、原田監督は学生の頃に「関ケ原」を読んでいたそうですね。

母親の影響もあって、中学生の頃から大衆小説を読んでいました。「桃太郎侍」で知られている山手樹一郎や「柳生武芸帳」の五味康祐を読んでいました。司馬先生の「関ケ原」は高校に入ってから読みましたが、僕が特に読書家だったわけではなく、当時はけっこうみんな本を読んでいて、仲間とよく小説の話をしていました。沼津東高では柔道部だったこともあって、血湧き肉躍るような小説に惹かれましたね。

──司馬作品で原田監督のおすすめがあれば教えてください。

司馬先生の小説で最初に読んだのは、長宗我部盛親を主人公にした「戦雲の夢」でした。それから歴史小説にハマるようになったんです。司馬作品の面白さは司馬先生の饒舌さ、地の文でぐいぐい読ませるところです。「筆者は考えた―」とところどころに出てくるところがチャーミングだし、司馬先生の人柄を感じさせ、また「この人に会いたい」という気にさせてしまう。司馬先生の作品で好きなのは「国盗り物語」「燃えよ剣」「新撰組血風録」で、昔に映画化したいと思ったのは「尻啖え孫市」です。「孫市」は中村錦之助主演で一度映画化されていますが、これは原作のダイジェスト的なもので終わっていました。実は僕は映画監督デビューしてすぐの頃に、一度司馬先生の自宅に電話したことがあるんです。新橋にあった日本ヘラルドの事務所で、誰かから司馬先生の連絡先を聞き出して電話したんです。自宅に電話したところ、司馬先生ご本人が出られ、「先生、「孫市」の映画化権を僕にください。米国映画として撮りたいんです」と伝えると「元気のいい方ですね」と苦笑されていました(笑)。雑賀孫市たち鉄砲衆を異人たちの集団として映画化したいと考えていたんです。これも、いつかハリウッド作品として実現させたいですね。

──学生時代に読み親しんでいた歴史小説が、群像劇を得意とする原田監督の作品スタイルの土台となっているようですね。

そういう部分はあると思います。歴史小説はどれも群像劇ですからね。翻訳小説では、アラン・ドロンとアンソニー・クインの共演作として映画化された「名誉と栄光のためではなく」や「傭兵」などで知られるフランスの作家ジャン・ラルテギーが好きでした。また、学生時代は映画館で戦争映画や西部劇もよく観ていました。黒澤明監督はトルストイの「戦争と平和」に影響されて「七人の侍」を撮ったそうですが、僕の場合も学生時代に歴史小説や戦争映画に親しんでいた体験が今回の『関ヶ原』のルーツになっているようですね。

 

取材・文 / 長野辰次
撮影 / 名児耶洋

 

 

プロフィール

 

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原田眞人(はらだ・まさと)

1949年静岡県沼津市出身。ロサンゼルス留学を経て、「さらば映画の友よ インディアンサマー」(79年)で監督デビュー。役所広司が主演した「KAMIKAZE TAXI」(95年)は海外でも高い評価を得た。「金融腐食列島 呪縛」(99年)、「突入せよ!あさま山荘事件」(02年)、「クライマーズ・ハイ」(08年)、「日本のいちばん長い日」(15年)など多彩な登場人物を配した社会派エンターテイメント作品を手掛けている。「検察側の罪人」が2018年に公開予定。文中で触れているトム・クルーズ主演作「ラストサムライ」(03年)には堪能な英語力を活かして俳優として出演した。

 

作品紹介

 

映画『関ヶ原』

秀吉亡き後の天下人の座を狙う徳川家康(役所広司)と豊臣家への忠義を誓う石田三成(岡田准一)とが日本を二分して戦った「関ヶ原の戦い」を真正面から描いた初めての歴史映画大作。現実主義者の家康vs理想の世界を追求する三成という極めて明快な対立構造で描かれており、関ヶ原の戦いに至るまでをスピーディーに見せていく。合戦の勝敗を左右することになる小早川秀秋(東出昌大)の苦悩ぶり、三成の間者として危険な任務を負う初芽(有村架純)の殺陣シーンも大きな見どころだ。

原作:司馬遼太郎「関ケ原」新潮文庫刊
監督・脚本:原田眞人
出演:岡田准一、有村架純、平岳大、東出昌大/役所広司
配給:東宝=アスミックエース 
2017年8月26日(土)より全国ロードショー
(c)2017「関ヶ原」製作委員会
公式サイト:http://wwwsp.sekigahara-movie.com/

 

原作小説

 

「関ケ原」司馬遼太郎/新潮文庫刊

司馬遼太郎が43歳のときに発表したのが全3巻にわたる人間絵巻『関ヶ原』。この年1966年には、司馬は代表作『竜馬がゆく』全5巻の刊行も終えており、歴史作家として充実ぶりがうかがえる。天下統一を果たした豊臣秀吉の没後、五大老の筆頭・徳川家康と五奉行の中核・石田三成との対立が深まっていく過程が綿密に描かれ、家康が秀吉子飼いの大名たちを次々と籠絡していく政治的手腕には思わず唸らせられる。映画版で原田監督が最後まで脚本に残したかったという「小山評定」の舞台裏などは、大事なプレゼンを控えているサラリーマンは是非読んでおきたい。NHK大河ドラマでもおなじみ黒田如水や真田昌幸たちが各地で活躍するエピソードにも紙面が割かれている。戦国マニア、必読の書。

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おススメ本紹介

 

「尻啖え孫市」司馬遼太郎/講談社文庫

司馬遼太郎が41歳のとき、「燃えよ剣」と同年(1964年)に発表した「尻啖え孫市」は戦国時代に勇名を馳せた鉄砲集団「雑賀党」を率いた雑賀孫市が主人公。若き日の秀吉こと木下藤吉郎と友情を育む一方、織田信長の軍勢と石山本願寺の戦いで全面対決することになる。鉄砲の名人であり、無類の女好きという快男児だったが、孫市の死と共に戦国の世も終わりを告げることに。1969年に三隅研二監督、中村錦之助、中村賀津雄、勝新太郎らのキャスティングで映画化されている。

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