Sep 05, 2017 interview

是枝監督が挑んだ心理サスペンス『三度目の殺人』、かつてない法廷劇を生み出した斬新な創作術とは!?

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役所広司の芝居を見て「この人は殺した」と思った

 

──福山雅治、広瀬すずは是枝作品には2度目の出演ですが、殺人事件の容疑者役の役所広司は初参加。ベテランの役所広司がひとり是枝作品に参加したことで、これまでとは違った風景が広がって見えます。重盛と三隅が対峙する接見室の迫力あるシーンはどのように撮影されたんでしょうか?

殺風景な何もない部屋で男たちが向き合うだけなので、接見室のシーンは最初は少ないはずでした。ですが、台本の読み合わせの段階で、役所さんと福山さんとの接見シーンがすごく盛り上がったんです。いちばんシンプルなシーンなのに、とても力強さが感じられることが分かった。それで「この映画は接見室が重要なんだ」と考え方を改め、脚本を書き直したんです。撮影当日は朝、通しでリハをやってカット割りを決めたぐらいで、リハらしいリハはやっていませんね。接見室と法廷シーンは、すべて順撮りでやっています。

 

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──是枝監督が思いもしなかった、予想外のアドリブ演技などもあったんでしょうか?

そうですね……。役所さんが鳥の話をしながら「(鳥籠から)今さら放されても」と言って、鳥を締める仕草をしてみせたんです。そのシーンを見て、「あっ、この人は殺したんだ」と思ったんです。そういった動作の部分は脚本には書かれていません。そんな細かい仕草があることで、重盛のざわつく心理状態もうまく表現されたんじゃないかと思います。自分で書いた脚本とは思えないくらい、役所さんの存在感が大きかったですね。

 

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──三隅というミステリアスなキャラクターについて、是枝監督は役所さんとどのように話し合ったんですか。

いや、実はそれほど話し合っていないんです。「最後まで謎が残ったほうがいいですよね」ってことぐらいです。三隅は、役所さんが独自に解釈して演じたキャラクターだと言っていいと思います。

──是枝監督は脚本を途中で書き換えながら撮り進めた。キャストも大変だったでしょうね。

どういう判決になるのか決めないまま、撮影を続けたんです。本編では使っていないんですが、最終弁論のシーンも撮影していたんです。最終弁論を撮る2日前まで、そのシーンの脚本は白紙状態でした。最後の接見室のシーンを撮り終えて、それからようやく書いたので、重盛役の福山さんはとても大変だったはずです(笑)。

 

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──『三度目の殺人』を撮り終えて、改めて気づいた点や発見などがあれば、教えてください。

ヒヤリングのときに感じたことですが、“みんな同じ船に乗っているんだ”ということですね。弁護士、検察、判事は必ずしも敵対している関係ではなく、それぞれが違う立場に位置することで、ひとつのシステムを動かしているんだということです。多分、そこが一般人が司法について感じている認識と、現実のシステムの中で働いている人との大きな違いじゃないでしょうか。そのことは、僕にとっての発見でしたね。でも、それを批判する為に作った映画ではないですけど。

──我々もまた、そんな社会というシステムの中で暮らしていると。

そうです。僕たちが暮らしている社会は、それを受け入れることで成立しています。また、そのことを認めているのは僕たち自身なんです。その怖さに気づけたことも、今回の映画をつくることで得られたものですね。

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