Aug 22, 2019 interview

デクスター・フレッチャー監督が『ロケットマン』に込めた“サークル・オブ・ライフ”というテーマ

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昨年、社会現象的なヒットを記録した『ボヘミアン・ラプソディ』(18年)に続き、今年はエルトン・ジョンの半生を、『ユア・ソング(僕の歌は君の歌)』など彼のヒット曲とともに綴る『ロケットマン』が完成した。エルトン自身も製作総指揮として参加し、本人の素顔に迫る赤裸々なストーリーが展開。セクシュアリティや薬物依存などの苦悩に踏み込みつつ、ポイントのシーンはド派手なミュージカルとして演出されるなど、映画自体がエルトン・ジョン、その人を体現している。『ボヘミアン・ラプソディ』でブライアン・シンガー監督が降板した後の撮影と仕上げを託されたデクスター・フレッチャーが、この『ロケットマン』の監督というのも話題。来日した彼に作品への想いや演出のポイントを聞いた。

完成までは“試行錯誤の連続だった”

――『ロケットマン』は5月のカンヌ国際映画祭でお披露目されました。その時の思い出を聞かせてください。

じつは、カンヌのことは“すっかり記憶の彼方”という感覚なんだ。ものすごく切羽詰まった状況だったんだよ。ワールドプレミアが木曜日だったのだけど、映画が完成したのが、なんと前の週の金曜日! まるでローラーコースターに乗ってるような1週間だったのさ。つまり監督の僕でさえ、ゆったりシートに座って冷静に作品を観たのが、あのカンヌの上映だったんだ。

――そんなギリギリの完成だったとはびっくりです。

話しながら、ようやく思い出がよみがえってきた(笑)。エルトン・ジョン本人がそこにいて、バーニー・トーピン、タロン・エジャトンが顔を揃え、さらにプロデューサーのマシュー・ヴォーンと彼の妻、クラウディア・シファー、そして僕の妻も一緒に出席した。祝福ムードに包まれた、最高に幸せな時間だったね。世界最大の映画祭の巨大なスクリーンに自分の監督作が上映されるわけだから。終了後は10分ものスタンディングオベーションを受け、かなり高揚した気分だったよ。

――この『ロケットマン』は、使われたエルトン・ジョンの曲の歌詞がストーリーにぴったりです。どのように曲とシーンを結びつけたのでしょうか。

最初にある程度、使用曲は脚本に書き込まれていた。ただ自分の意図と違っていたりして入れ替えようとしたり、模索したりした部分もかなりあったね。ひとつ例を挙げると、オープニングだ。僕としては『ピンボールの魔術師』で始めたかった。エルトンが自分のことを、何でもできる“魔術師”だと考えて、そこから過去に遡っていく構成だよ。ただ、よく考えるとあれはザ・フーの曲で、エルトンは作っていない(ロックオペラ『トミー』の映画版に出演したエルトンが劇中で歌った)。それで、エルトンを誕生させた母親の思いからスタートさせることになったんだ。母親が自分を“あばずれ”だと思っているので、『あばずれさんのお帰り』を使って、子ども時代に戻ることにした。あとは(エルトンと家族が入れ替わりながら歌う)『アイ・ウォント・ラヴ』の“あるバージョン”と“ないバージョン”を比べたり、かなり試行錯誤の連続だったね。

――使いたくても使わなかった曲もありそうですね。

エルトンはあまりにも名曲が多く、歌詞やメロディが本当に美しいからね。いろいろ入れたかったけど、ストーリーや一人ひとりのキャラクターを重視して曲が選ばれた。自分が誰にも見せていない一面や、本当に心に抱えている気持ちとか、そういう内面をさらけ出すツールとしてエルトンの曲を使うようにしたんだ。エルトンの母親はいつも微笑みをたたえているけど、じつはものすごく愛情を求めていた…とかね。そういう意図で適材適所に曲を当てはめたので、使いたいけど展開に沿わない『僕を救ったプリマドンナ』とか、泣く泣く削除した曲がいっぱいあったよ。

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