Aug 26, 2016 interview

ブーム再燃中の『魔法の天使クリィミーマミ』リメイクの可能性を聞いてみた!!

A A
SHARE

レジェンドクリエイターインタビュー
布川ゆうじ×高田明美
(後編)

       arranged by レジェンド声優プロジェクト

スタジオぴえろ最高顧問:布川ゆうじ
キャラクターデザイナー:高田明美

 

 

(編集部):

前回は『うる星やつら』のお話をお伺いしましたが、今回は、その後に放映され、後に続く「ぴえろ魔法少女シリーズ」の礎ともなった『魔法の天使クリィミーマミ』についてお伺いしたく。まずはこの企画がスタートしたきっかけから教えてください。

布川ゆうじ
(以下 布川):

アニメの『うる星やつら』が始まって2年くらい経った頃、原作を連載していた小学館のサンデー編集部から押井ちゃん(押井守監督)の演出に対していろいろご意見をいただきまして(笑)。それはあくまで間をつないだキティ・フィルムさんからの伝聞なので、どこまで正確か分からないのですが、確かにアニメ版は“高橋留美子ワールド”というより、“押井守ワールド”ではありましたよね。

(編集部):

それはそれで新たな魅力を引き出していたとは思います。ただ、確かに一部の原作ファンから不興を買っていたかもしれませんね……。

布川

でも、それは押井ちゃんが『うる星やつら』に全力投球していたからこそ。ですので私としてはそれを尊重するようにしていたのですが、やっぱり周りにはそういうふうに考えないという人もいらっしゃるわけです(苦笑)。本人にもそれが伝わってくる中、押井ちゃんから劇場版『ビューティフル・ドリーマー』(1984年)でけじめを付けて、テレビシリーズからも降りたいという申し出がありました。

(編集部):

アニメファンの間では有名なエピソードですよね。それとほぼ時を同じくして、制作会社もスタジオぴえろからスタジオディーンに切り替わってしまいました。

布川

ただ、この作品で培ってきたものをここで終わらせたくないという気持ちがありました。そんな時、葦プロダクションさんのやっていた『魔法のプリンセス ミンキーモモ』(1982年)に続く、新しい魔法少女ものをやってみないかとお声がけいただきまして……。それでキャラクターデザインの高田ちゃん、脚本の伊藤ちゃん(伊藤和典さん)ほか、多くのスタッフをそのまま移行するかたちで『魔法の天使クリィミーマミ』に取り組むことになりました。

 

takada02_1

 

(編集部):

なるほど。そういう経緯があったんですね。

布川

あと、ビジネス的な面でもただ作るだけの「制作」から、企画から興行全般までを取り仕切る「製作」のメンバーに加わりたいという思惑がありました。それまでの経験で、前者だけでは金銭的な面で長く続けていけないということが分かっていましたからね。『魔法の天使クリィミーマミ』はスタジオぴえろ初の「製作」作品。そういう意味でも、非常に思い入れのある作品となりました。

(編集部):

高田さんに取っても原作なしアニメということでやりがいがあったのでは?

布川

高田ちゃんはタツノコ時代にたくさんのオリジナル作品をやっていましたから、決して初めてというわけではないですよ?

高田明美
(以下 高田):

そうですね。ですから、作業的にな不安はさほどありませんでした。ただ、やっぱりゼロから生み出すと言うことでリテイク(やり直し)はとても多かったですね。読売広告社に脚本の伊藤さんと一緒に行って会議室で打ち合わせをして、いただいた要望をもとに描き直して……ということをひと夏くりかえしました。

(編集部):

先方のこだわりポイントというのはどこにあったんでしょうか。

高田

関連商品としてお人形を出したいというのが、けっこう大きかったみたいですね。商品化が前提の企画だったので、それにまつわる要望が多かったです。

布川

ステッキとかもね。あれは毎回似たようなデザインになってしまうのを変えたくてシリーズ後半の『魔法のスターマジカルエミ』(1985年~)では棒状ではなく、大きなハート型にしたんです。でもそうしたら「これじゃ相撲の軍配だよ」って言われて、結局その次の『魔法のアイドルパステルユーミ』(1986年~)では元の棒状にもどっちゃいました。

 

takada02_2

 

(編集部):

アイテムひとつとっても細かい要望があるものなのですね。

布川

あとは当時人気だった東映の魔女っ子ものとは差別化を図りたいという意図があったようですね。

高田

とにかく、頭を大きく(頭身を低く)してって言われました(笑)。でも頭を大きくすると少女ものなのに、ギャグっぽくなっちゃうじゃないですか。そこはすごく苦労しましたね。

(編集部):

変身した後のマミの髪の色が紫というのも個性的でしたよね。これはどういう経緯で決まったんですか?

高田

う~ん、そこは何となく、ですね(笑)。ただ、『魔法のプリンセス ミンキーモモ』のモモのピンクとは違う色にしたいとは思っていました。それで茶色とかオレンジとかを提案した中で、選ばれたのが紫だったんです。

布川

紫には大人っぽいミステリアスなイメージがあるよね。

高田

『魔法の天使クリィミーマミ』の30周年イベント以降、当時、この作品のファンだったという人とお会いする機会が増えたんですが、いろいろな方から「この作品がきっかけで紫色が好きになった」と言われたのはうれしかったです。

布川

本当にこの紫は絶妙だよ。濃くしすぎると下品になっちゃうし、薄すぎると存在感がなくなっちゃうからね。

 

takada02_3

 

(編集部):

布川さんから見て、キャラクターデザイナー・高田明美の魅力はどこにあるとお考えですか?

布川

やはりセンスが突出していますね。30年以上経ったいまでも全く色合わせていないというんだから驚かされる。今、アキバの駅に降り立って、そこら中に乱立している最新のキャラクターの絵を見てもぜんぜん負けていない。むしろ最近の作品はみんなおなじに見える。高田ちゃんは、自分の絵に似ている人とか知ってる?

高田

う~ん、確かにあんまりいないかも。でも、ほかの人に描けない、描きにくいというのはアニメのキャラクターデザインとしてどうなんでしょう(笑)。

(編集部):

高田さんがキャラクターを描く時にこだわっている点はどこですか?

高田

若い頃は何となく描いていたんですが、最近は「かわいい」というのがどういうことかをずいぶん考えるようになりました。

布川

どういうこと?

高田

「かわいさ」って戦意を無力化する力があると思います。ぴえろの魔法少女物は、かわいさや優しさなど、戦って打ち負かす以外の方法で問題を解決出来ていると思います。

布川

今のヒロインはみんな戦ってるもんね。