Aug 03, 2016 interview

スタジオぴえろ出世作『うる星やつら』に、若手デザイナー・高田明美が起用された理由

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(編集部):

『うる星やつら』のキャラクターデザインについてもう少し教えてください。高田さんが一番苦労したのはどのキャラクターでしたか?

高田

やっぱりラムですね。原作付き作品の場合、マンガを読み込んで、その中から“いい顔”をたくさん模写して最終形に収斂させていくのですが、ラムについてはそれにかなり時間をかけました。連載初期には高橋留美子さんのお描きになるキャラクターも安定しておらず、それで苦労した面もあったかも。

(編集部):

逆にスッと描けたキャラクターはいますか?

高田

う~~ん、実は当時の細かいこととってあんまり覚えていないんですよ。制作期間がすごく短かくて、めまぐるしすぎました。10月14日放送開始なのに、作業を始めたのが7月ですからね(苦笑)。

(編集部):

ええっ、たった3か月しかなかったんですか?

布川

『うる星やつら』はスポンサー探しがとても難航した作品で、それまでその時間の放送枠を押さえていた某社との兼ね合いもあって、なかなかフジテレビさんからゴーサインがもらえなかったんです。最終的に「決定」したのは放送2か月前の8月22日。さすがにそこから作り始めていたら間に合わないので、見切り発車で7月に制作をスタートしたという裏事情があります。

(編集部):

それは一般的な作品と比べてどれくらい短かったんでしょうか。

布川

当時はだいたい半年前にスタートするというのが一般的でしたね。今は多くの企業が関わる「制作委員会方式」が主流になったのでもっと前倒しされていますが、当時はぎりぎりまでスポンサーが決まらず動き出せないということがよくありました。まぁ、それでも『うる星やつら』は極端な例なんですけど(笑)。

(編集部):

放送開始以降で、印象に残っているエピソードはありますか? 『うる星やつら』は毎週毎週、新しいキャラクターがどんどん出てきたというイメージがあるのですが。

高田

確かにキャラクターの多い作品でしたね。しかも、予算が少ない回になるほど、絵面を派手にするためにキャラクターが増えるんです。いちばんすごい時で、A4の用紙3~4枚にずらっと箇条書きにされた、すごい数のメインキャラの衣装替えや、その回だけの新キャラを描いたことがあります。

 

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(編集部):

それは顔を描き分けるだけでも大変そうですね……。

高田

そうなんです。なのに、その回は顔が全部黒く塗りつぶされていたんですよ! せっかく描いたのに!!

布川

……よく覚えてるねぇ(笑)。

高田

できあがったのを見てガーンってなりましたからね……。後はラムの衣装変えが多かったのもよく覚えています。特に十二単を描かされた時は大変でした(笑)。

 

構成 /山下達也  撮影 /田里弐裸衣

 

 

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プロフィール

 

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高田明美(たかだあけみ)

東京都出身、牡羊座。
幼少時より、何よりも描く事に熱中、現在に至る。多摩美術大学でグラフィックデザインを専攻、
卒業後(株)タツノコプロに入社。
職業としてのキャラクターデザインを学ぶ。フリーになってからの代表アニメーション作品に「うる星やつら」
「魔法の天使クリィミーマミ」「きまぐれオレンジ☆ロード」「機動警察パトレイバー」「魔法のステージ ファンシーララ」がある。

上記作品のキャラクターデザイン及びパッケージイラストの他に、ジュブナイル装丁挿絵多数。
アメリカ、香港、台湾で原画展開催。
日本でも定期的に個展、グループ展を開いている。
ここ10年以上ジュエリー制作にも興味を持ち、
2次元を超えて “ 幸福な世界観 ” を立体的に表現する事にも興味を広げている。

現在、世界150カ国のNHK WORLD及び国内はMXテレビ、中京テレビで、猫のお姫様のショートアニメシリーズ〝 CoCO & NiCO〟を放映中。
[CoCO & NiCO]
https://www.facebook.com/CoCOandNiCO/
公式サイト [Angels]
http://www.takada-akemi.net

 


 

nunokawa

布川ゆうじ(ぬのかわゆうじ)

株式会社ぴえろ 取締役最高顧問
財団法人 日本動画協会前相談役(2009〜2014年理事長)
山形県酒田市出身
日本デザインスクール卒業後、虫プロ、スタジオジャック、タツノコプロダクションにてアニメーター、演出家として数多くの作品を手がける。
代表作「いなかっぺ大将」「キャシャーン」「タイムボカン」「ヤッターマン」など。
1979年 株式会社ぴえろ 設立
代表作「ニルスの不思議な旅」「うる星やつら」「魔法の天使クリィーミーマミ」「幽☆遊☆白書」「NARUTO」「BLEACH」「東京喰種」など。
テレビ作品80作品以上、映画20タイトル以上の企画、制作に携わる。
2013年 著書「クリィミーマミはなぜステッキで変身するのか?」出版