実際にあるお店を使っての撮影
──今回、Netflixで全12話が一挙配信されました。12話の中でお気に入りのエピソードを教えていただけますか?
久住 どれも好きなんですけど、3話の「朝のアジ」の中学生時代のエピソードは、僕の本当の話なんで、それがドラマの中でいい話になってたからうれしかったですね。7話の「雨漏りのコの字カウンター」も、実際に僕がそういう店に行ったんで。そのときは雨は降ってなかったんだけど、そこで聞いた話が、ドラマの中で最終的にいい話になっていて。どちらも僕の思い出で、それがドラマとしてきれいにまとまってるのが面白かったです。
竹中 現場の印象で考えると、12話の「想い出のハヤシライス」ですね。奥さん役の鈴木保奈美さんとの過去のエピソードがドラマチックでした。そこで出てくる写真も、作り込んだものに見えなくて、すごくいい写真だった。ロマンチックな話で好きですね。
──あそこでの鈴木保奈美さんのリアクションも素敵でした。現場での鈴木さんはいかがでしたか?
竹中 保奈美さんはやっぱり美しいですからね。美しくて、旦那がしいたげられてないから、いいですよね。
──竹中さんは実際に劇中で料理を召し上がってますが、印象に残っているものはありますか?
竹中 食べる場所、街の雰囲気も良く、どの店も美味しかったんですが、8話の「さすらいのイタリアン」で吉祥寺に行ったときはなつかしかった。学生時代によく行った街でもあったから。撮影の後に、久住さん、土山さんと食事ができたこともあり、印象に残ってますね。
久住 あのイタリアンの店は、土山さんの漫画でも描かれてて、ドラマの舞台にもなってるんです。
竹中 撮影でなかなか行くことのない、いろんな街に行けたのも良かったです。きどりのない、素朴な店が多かったので居心地がよかったですね。
──スタッフの方が店探し、ロケハンにもこだわったということでしょうか?
竹中 こんなお店、よく見つけたなって。毎回驚いていました。行ったことのない街に行けるのは、俳優という仕事をしている楽しみのひとつです。ライティングやカメラポジションのセッティングをしてる間の待ち時間に、ロケ場所の散歩をできるのは、本当に面白かったですね。
──『孤独のグルメ』のときに、久住さんはスタッフのかたにお店探しに関してリクエストを出されたそうですね。
久住 ネットを見ないで探してほしいって頼んだんです。
──今回もそれを踏襲したんでしょうか?
久住 特に聞いてないんで、知らないです(笑)。でも、違うドラマなんで違う探し方をしてるんでしょうけど、がんばって探してると思います。だって、僕が選びそうな店ばかりだもん(笑)。
野武士の突然の登場がシュールで面白い
──190カ国で配信とのことですが、海外でどう受け止められるんでしょうか?
久住 全然わかんないです。
竹中 外国の人じゃないから、わからないです。
久住 でも、『孤独のグルメ』と比べるのはアレだけど、『孤独』は10~11カ国で翻訳されていて、食べてる料理はわからなくても、「美味しそう」ってのは伝わるみたいですよ。言葉とかを越えてね。
竹中 それに野武士が出てきますからね。
──英語タイトルは「Samurai Gourmet(サムライグルメ)」ですから、海外にもアピールしそうです。
久住 野武士がやっぱり面白いんですよ。
──野武士役は玉山鉄二さんです。
竹中 玉山君とは10年以上ぶりの共演でした。玉山君の野武士は素敵でしたよ。いちばん最初に『野武士のグルメ』の話をいただいたときは、1人2役で野武士もやるのかなって思ったんです。自分の分身が出てきて、驚くっていう。でも、そうなると(香住武役と野武士役で)二重に料理を食べないといけないしね(笑)。
久住 アハハ、そこ気がつかなかった(笑)。
竹中 それを考えたらよかったなって思ってます。
──漫画版の野武士とは違うカッコよさがありました。では、改めてドラマの見どころを教えていただけますか。
久住 現代の本当にあるお店に野武士が出てくるっていうところが、ものすごくシュールで面白いです。ハッと気づいたら、まわりの人も時代劇の人になってる。あれは漫画で描いても面白くないんです。それからCGも使ってなくて、本当にやっているのも面白い。笑っちゃいましたね。
竹中 演じている側なので、見どころは見てくれた人が決めることだと思います。僕が言う事ではないと思います。でも野武士が出てくるのは本当に驚きますね。やっぱり、そこに集約されるんじゃないかな。出てくるまでの過程が面白い。そこだけ見られたら困っちゃいますが(笑)。