Apr 20, 2017 interview

グルメ+時代劇!?野武士が突然登場する異色のグルメドラマ『野武士のグルメ』竹中直人×久住昌之インタビュー

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おふたりが語る面白かった本は?

 

──ここで話題を変えて、最近読んで面白かった本を教えていただけますか。

久住 僕の先生の赤瀬川原平さんの単行本になってなかったものだけを集めた『レンズの下の聖徳太子』っていう本が最近出て。ほとんどの文章を読んだことがあるんですけど、初めて読んだ21歳以来読んでなかったから、先生のものは何でも面白いんだけど、今久しぶりに読むとすごく面白かったですね。

竹中 沢木耕太郎さんの『流星ひとつ』です。芝居の旅公演に行くときは、いっぱい本を持っていきます。藤圭子さんと沢木さんとの40年ぐらい前の対話が物語になっています。

久住 へ~。そんな本が出てるんだ。

竹中 藤圭子さんの歌はリアルタイムで聞いてます。彼女の歌に対する思いが伝わってきます。俺も音楽やっているので心の底から歌わないといけないなと思いました。宇多田ヒカルさんもちゃんと聴かないといけない!と思い、いちばん新しいアルバム(『Fantôme』)を買いました。そのアルバムがより深く響いて。特にKOHHとやった『忘却』って曲は、その本を読んだことで深く響きました。涙が止まらなかった。

久住 そうなんですか。絶対読んでみよう。

竹中 スバらしいです。『流星ひとつ』。宇多田ヒカルさんにまで深く行ってしまった。

久住 旅公演のときに本を持っていくんですね。

竹中 今はケータイがあるから、昔よりは持っていく量が減りましたが。装丁やタイトルで直感的に本を買うんです。松浦寿輝さんの「花腐し」とか、いいタイトルだなって。レコードを買うのと同じで、ジャケ買いですね。「旅公演1週間、さあ本屋さんに行こう」って。探すのが好きでした。

久住 楽しいですよね。僕も旅行に行くときとか、電車に乗るときがいちばん本を読みますね。本を読んでれば待ってる時間が全然苦じゃないんで。

──先ほど竹中さんが「音楽やってる」とおっしゃいましたが、劇伴が久住さんのバンドで、エンディング曲は竹中さんが歌う『白い砂のサボテン』です。

竹中 エンディング曲は、もともと曲ができてたんです。『野武士のグルメ』とは別に玉置浩二さんとアルバムを作っていたんです。それで、もしかしたら、この作品のエンディングに合うんじゃないかという事になりました。

久住 すごく合ってますよ。曲も詞も歌も声もすごくいい。

──このドラマ用に書き下ろしたのかと。

久住 思いました、思いました。

竹中 そうですか。だったら、よかったです。

 

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取材・文/武富元太郎
撮影/吉井明

 

プロフィール

 

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竹中直人

1956年、神奈川県出身。多摩美術大学在学中から8ミリ映画を作成。卒業後は劇団青年座に入団。以後、テレビや舞台、映画などで活躍。主な出演作は、ドラマ『秀吉』、映画『シコふんじゃった。』など。自身の監督作としては、映画『無能の人』『連弾』『山形スクリーム』などがある。

 

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久住昌之

1958年、東京都出身。漫画原作者、漫画家、エッセイスト、デザイナー、ミュージシャン。漫画家・泉晴紀とコンビを組んで泉昌之名義で『ガロ』でデビュー。手がけた主な漫画は、『かっこいいスキヤキ』(泉昌之名義)、『中学生日記』(Q.B.B.名義)、『孤独のグルメ』(漫画:谷口ジロー)、『花のズボラ飯』(漫画:水沢悦子)など。

 

作品紹介

 

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Netflixオリジナルドラマ『野武士のグルメ』全12話

映像配信サービスNetflix製作の全12話の異色グルメドラマ。原作は、久住昌之のエッセイ『野武士のグルメ』をもとにした、『漫画版 野武士のグルメ』(原作:久住昌之、漫画:土山しげる)。制作陣には久住原作のドラマ『孤独のグルメ』のスタッフが参加している。長年務めた会社を定年退職した香住武。暇を持て余した香住は昼の散歩中に入った定食屋でビールを飲みたくなるが、罪悪感に悩まされてなかなか注文できない。そんなとき、自分の心に潜む野武士が姿を現し……。主人公の香住武は竹中直人、その妻を鈴木保奈美、野武士を玉山鉄二が演じる。温水洋一、玉袋筋太郎、黒部進、伊吹吾郎などと各話のゲスト出演者もバラエティ豊か。

出演:竹中直人 玉山鉄二 鈴木保奈美
原作:久住昌之 土山しげる「漫画版 野武士のグルメ」(幻冬舎刊)
監督:藤井道人 星護 宝来忠昭
制作プロダクション:共同テレビジョン
製作:Netflix
2017年3月17日(金)より世界190ヵ国同時ストリーミング開始
Netflix:https://www.netflix.com/jp 

 

原作紹介

 

『漫画版 野武士のグルメ』 原作:久住昌之、漫画:土山しげる/幻冬舎

久住昌之が飲食店で経験した出来事について書いた同名エッセイを、『食キング』『喰いしん坊!』などのグルメ漫画の名手・土山しげるが漫画化。漫画化にあたって、主人公に「長年務めた会社を定年退職して、時間と金を自由に使えるようになった男で、名前は香住武」という設定が与えられるなど、漫画版ならではのフィクションの要素を強くするアレンジが加えられている。

 

おすすめ紹介

 

-竹中直人さんおすすめ本

『流星ひとつ』 沢木耕太郎/新潮社

『一瞬の夏』『深夜特急』など数々のノンフィクションで知られる沢木耕太郎が、1979年に引退を決意した28歳の藤圭子にインタビューして書き上げた1冊。引退を表明した藤圭子に、沢木がその真相などを聞いた会話のみで構成した濃密なノンフィクション。長らく封印していたこの作品を発表した沢木の思いもつづられている。

 

-久住昌之さんおすすめ本

『レンズの下の聖徳太子』 赤瀬川原平/幻戯書房

『レンズの下の聖徳太子』 赤瀬川原平/幻戯書房 千円札を模した作品を作って偽札として事件となった前衛美術家であり、芥川賞作家でもあり、ベストセラー『老人力』のエッセイストでもある赤瀬川原平。2014年に他界した赤瀬川の単行本未収録の全10篇の私小説を収録。表題作は、千円札事件の裁判へと至る若き時代を描くが、長らく封印されていた伝説の処女小説。