Sep 22, 2019 interview

西島秀俊が振り返る『任侠学園』での“新鮮な経験”と“反省会”、映画漬けだった日々

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映画を“浴びるように”観ていた日々

──西島さんのルーツになった作品や影響を受けた人物を教えてください。

20代後半に黒沢清監督と初めてご一緒させていただいたのですが(99年の映画『ニンゲン合格』)、ご一緒する前から監督の作品が好きで拝見していたのでワクワクしたのを覚えています。念願の黒沢組は演出も含めて何もかもがおもしろくて驚きの連続でした。そんな中、現場で黒沢監督とお話をしていたら「僕は3000本以上の映画を観ているんだよ」とおっしゃって、おそらく劇場で鑑賞された本数だと思うのですが、「いまから一日一本観ても3000本観終えるのに10年はかかるよな」と計算している自分がいて(笑)。その日から時間が空けばとにかく劇場に行ってひたすら映画を観るという日々が始まりました。最近は劇場に行く機会が減ってしまいましたけど、当時は時間があれば映画館で浴びるように観ていたので、その経験は自分にとってすごく大きなことだったと思います。

──当時は映画から何かを吸収する気持ちでご覧になっていたのでしょうか?

いえ、「こんなにぼんやり観ていていいのかな」と思いながら鑑賞することが多かったです(笑)。でも、そんなふうにただひたすら純粋に映画を観ていた日々は、いま振り返るととてつもなく豊かな時間だったのではないかと思います。

──現在はなかなか映画館に行く時間がないとおっしゃいましたが、家で気軽に観られる動画配信サービスを利用されることはありますか?

たまに観ています。特に海外ドラマがおもしろくて、観始めると止まらなくなります(笑)。話数が多いせいかストーリーが複雑な展開になりがちですが、それでも脚本が秀逸なのでまったく飽きないように作られているのがすごいなと。最近『ザ・ボーイズ』(19年~)という、欲と名声に取りつかれて腐敗したスーパーヒーローたちが活躍するドラマを観始めたのですが、スーパーヒーローたちが人気の作品の裏側を見ているような、そしてそういったヒーロー映画に対する批判的なことも描きながらちゃんとおもしろいドラマに仕上げているところに驚かされます。興味がある方はぜひご覧になってみてください。

取材・文/奥村百恵
撮影/中村彰男

プロフィール
西島秀俊(にしじま・ひでとし)

1971年、東京都出身。『居酒屋ゆうれい』(94年)で映画初出演。『ニンゲン合格』(99年)で第9回日本映画プロフェッショナル大賞・主演男優賞を受賞。近年の主な映画出演作に『劇場版 MOZU』(15年)、『クリーピー 偽りの隣人』(16年)、『ラストレシピ ~麒麟の舌の記憶~』(17年)、『散り椿』(18年)、『人魚の眠る家』(18年)、『名探偵ピカチュウ』(19年/声の出演)、『空母いぶき』(19年)など。待機作として2020年公開の『風の電話』がある。

公開情報
『任俠学園』

社会奉仕がモットーで困っている人は見過ごせない、義理と人情に厚すぎる弱小ヤクザ“阿岐本組”。組長は文化事業に目がなく、次から次へと厄介な案件を引き受けてしまう。今度はなんと、経営不振の高校の立て直し。いつも親分に振り回されてばかりの阿岐本組No.2の日村は、学校には嫌な思い出しかなく気が進まなかったが、“親分の言うことは絶対”! 子分たちを連れて、仕方なく学園へ。待ち受けていたのは、無気力・無関心のイマドキ高校生と、事なかれ主義の先生たちだった――。
原作:今野敏『任俠学園』(中公文庫)
監督:木村ひさし
脚本:酒井雅秋
出演:西島秀俊 西田敏行  伊藤淳史 葵わかな 葉山奨之 池田鉄洋  佐野和真 前田航基 ・ 戸田昌宏 猪野学 加治将樹 川島潤哉 福山翔大 ・ 高木ブー 佐藤蛾次郎 ・ 桜井日奈子 白竜 光石研 中尾彬(特別出演) 生瀬勝久
主題歌:『ツギハギカラフル』 東京スカパラダイスオーケストラ
挿入歌:『また逢う日まで』 歌:西田敏行/演奏:東京スカパラダイスオーケストラ
配給:エイベックス・ピクチャーズ
2019年9月27日(金)
©今野 敏 / ©2019 映画「任俠学園」製作委員会
公式サイト:https://ninkyo-gakuen.jp/

書籍情報
『任俠学園』今野敏/中公文庫