Mar 10, 2024 interview

プログラム・ディレクターが解説 「ガンダム」シリーズ「火垂るの墓」などや海外の長編アニメ作品が上映される、第2回新潟国際アニメーション映画祭

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6日間で65作品以上が新潟で上映

新潟国際アニメーション映画祭の魅力は、新潟という都市で6日間65作品以上が上映される規模の大きさだろう。

数土さんも、「昨年の開催実績と、海外の映画祭などで営業した甲斐あって、昨年以上に多くの作品が集まった」と話す。 上映される作品は、世界各国から出品されたアニメ映画から、審査員が事前に選んだノミネート作品を上映する「長編コンペティション部門」の12作品。これは制作コストがかかる40分以上の作品に限定し審査している。近年のアニメ映画作品で、顕著な貢献をしたと認められた技術スタッフや制作会社を表彰する「大川博賞・蕗谷虹児(ふきやこうじ)賞」の4作品。アニメーションの今を様々な視点で取り上げる「世界の潮流部門」15作品。今回は故・高畑勲監督の14作品を上映する「レトロスペクティブ」部門に大きく分かれている。

このほか、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』をはじめとするイベント上映6作品。今回は「時代劇」をテーマに選んだ4作品を夜通し上映する「オールナイト新潟」があり、まさに“アニメ映画漬け”の6日間を体験できる。これらの作品は単に映画が上映されるだけでなく、製作関係者が登壇し、トークイベントも行われる作品も多い。

「『ガンダム』のイベント上映は、富野由悠季監督のアニメ業界歴60周年を記念して決めました。『コンペティション部門』では、12作品中8作品は登壇者がいます。残りの4作品はスケジュールが合わずでしたが、ビデオメッセージをいただいておりますので、それを上映に流す予定です」(数土直志 談)

登壇者も「ガンダム」の生みの親である富野由悠季監督や、『この世界の片隅に』の片淵素直監督、『アリスとテレスのまぼろし工場』をはじめ多数のヒット作の脚本を手がけてきた岡田麿里監督、そして『君たちはどう生きるか』で作画監督を務めた本田雄氏など、日本を代表する著名なクリエイターが新潟に集まるのも特徴だ。

国際色と地域色がさらに高まる第2回

第2回目となる映画祭では、審査委長を“ポスト・ジブリ”とも評されるアイルランドのアニメーションスタジオ「カートゥーン・サルーン」のノラ・トゥーミー氏が務める。監督として手がけた『ブレンダンとケルズの秘密』や『ブレッドウィナー/生きのびるために』は、アカデミー賞長編アニメ映画賞にノミネートされており、世界的には高い評価を受けているアニメーターだ。

『ブレッドウィナー』© 2017 Breadwinner Canada Inc./Cartoon Saloon (Breadwinner) Limited/ Melusine Productions S.A.

長編コンペティション部門にノミネートされた作品は、29カ国・地域49本の応募から12作品にのぼり、昨年の10作品から2作品増えた形だ。12作品のうち、日本の作品は岡田麿里監督の『アリスとテレスのまぼろし工場』と、塚原重義監督の『クラユカバ』の2作品のみで、これ以外はヨーロッパや北米、東南アジアや南アメリカといった文字通り世界中から集まった作品が並んでいる。

左上から『クラユカバ』©塚原重義/クラガリ映畫協會、『アザー・シェイプ』、『スルタナの夢』、『コヨーテの4つの魂』、『ケンスケの王国』、『アダムが変わるとき』、『深海からの奇妙な魚』、『マントラ・ウォーリアー』、『オン・ザ・ブリッジ』、『マーズ・エクスプレス』、『インベンター』、『アリスとテレスのまぼろし工場』©新見伏製鐵保存会

「ノミネート12 作品をざっと見ていて、いい映画が並んだなって我ながら惚れ惚れしているんですよ」と語る数土さん。続けて、こう腕を鳴らす。

「エントリー数が増えたことで、昨年以上に質の高い作品がノミネートに残ったと思います。今回選考された委員4人の方が、あまり監督の名前や過去の実績にとらわれずに本当に良いと思った作品を選んだので、名作が集まったと自負しています。集まった12作のうち、日本の2作品以外は違う国の作品ということで、多様性が広がったことも良かったと思います」

一方で、地域色も強まる取り組みがある。「世界の潮流」部門では「新潟から世界へ」というテーマが今回追加され、『銀河英雄伝説』の8話と『劇場版 シルバニアファミリー フレアからのおくりもの』が上映される。この2つはいずれも新潟県内の企業やスタジオで生まれており、それを国際映画祭の場で取り上げるのが目的だ。

「これほど素晴らしいアニメーションが、新潟で生まれているんだということを多くの人にアピールしたいという意味で立てた企画です。トークイベントの数も増やしましたので、楽しみにしてほしいですね」(数土直志 談)