Feb 19, 2019 interview

「猫が幸せになれば、人間も幸せになれる」岩合光昭が語る幸福論、写真家としての心掛けと映画への想い

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猫たちが集会を開くのはなぜ?

 

──猫たちの幸せそうな表情でいっぱいの映画に仕上がりましたが、人間社会の独居老人問題などにも本作は触れています。世界各地を取材旅行されている岩合監督は“幸せの在り方”をどう考えていますか?

その答えは、すごく単純です。猫にとって居心地のよい場所は、人間にとっても居心地がいいんです。島は風通しがいいし、寒いときは猫は暖かい場所を見つけて集まります。人も同じだと思います。人間の身体の中に秘めている動物としての部分が出ることで、世の中は動いていくんじゃないかと僕は思うんです。もっとルーツに戻ることを意識して、ルーツに立ち返るにはどうすればいいのかを、みんなで考えてみることもおもしろいと思うんです。「猫が幸せになれば、人間も幸せになれる」と僕はよく言っているんですが、結構本気でそう思っています。

 

 

──動物の生態に詳しい岩合さんに質問です。空き地などに猫がたくさん集まって集会を開いていることがありますが、猫たちはいったい何を話し合っているんでしょうか?

その答えも、さっきと同じです。猫は居心地のよい場所に集まる動物です。単純にその場所が気持ちいいから、猫たちはそこに集まっているんでしょう。夏の夕暮れどきなどが多いと思いますが、猫たちは気持ちいいので夕涼みに集まっているんじゃないでしょうか。人間みたいに何かを話し合うために集まっているわけじゃないと思います。

 

 

──猫たちは何かを企んでいるわけではないんですね(笑)。岩合さんは監督のオファーが届く前から、ねこまきさんの原作コミックは読まれていたとのこと。普段はどんな本を読んだりして、過ごされているんでしょうか?

ねこまきさんは「岩合光昭の世界ネコ歩き 番組ガイドブック」(クレヴィス)に挿絵を描いてもらっていたこともあり、そういうご縁もあって、『ねことじいちゃん』は読ませてもらっていました。第2巻の帯文は僕が書かせてもらっています。各地を取材旅行で回っていますが、飛行機の中ではもっぱら映画を観ていますね。昔から映画が好きなんです。特に好きなのは、フェデリコ・フェリーニ監督の『道』(54年)やルキノ・ヴィスコンティ監督の作品です。柔らかいところでは、ジャック・タチ監督の『ぼくの伯父さん』(58年)なども大好きです。ユーモラスだし、かわいいですよね。

──映画好きが高じて、映画監督も引き受けたわけですね。映画好きになったきっかけは?

小学生の頃、父親に連れられてよく日本映画を観に行きました。僕が子どもの頃は、日本映画がすごく華やかな時代でした。黒澤明監督の『椿三十郎』(62年)は、映画館が満席で父親に肩車されて観た記憶があります。面白かったので、オヤジの頭のところで「キャッ、キャッ」と騒いで、「おい、動くな」とオヤジに言われたことを覚えています(笑)。