Feb 19, 2019 interview

「猫が幸せになれば、人間も幸せになれる」岩合光昭が語る幸福論、写真家としての心掛けと映画への想い

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猫好き俳優たちとタレント猫たちとの共演

 

──元小学校教師の大吉(立川志の輔)や漁師の巌(小林薫)たちが暮らす小さな島に、若い美智子(柴咲コウ)が移住してくる。NHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」(17年)など勝ち気な役を演じることが多い柴咲さんですが、猫たちを抱きしめるときは普段は見せないとても素敵な表情ですね。

柴咲さんの出演しているシーンで僕がすごく好きなのは、彼女が鯛のカルパッチョを作るシーンです。なぜ好きかというと、柴咲さんが包丁を手にして真剣に料理しているからなんですね。猫と同じなんです。猫が小首を傾げている仕草を僕がかわいいとは思いますが、愛おしいとまでは思いません。僕が愛おしいと思う瞬間は、猫が何かに夢中になっているときなんです。例えば毛づくろいしていたり、鳥を見つめていたり……。猫ってマジメな動物なんです。僕はそのマジメさが好き。柴咲さんも包丁を持って集中している様子を横からカメラで撮りながら、「あ~、美しい人だなぁ」と感じました。猫に例えて申し訳ないけれど、人間も何かに夢中になっている姿は美しいと思うんです。ベーコンも柴咲さんにすっかり懐いていました。志の輔師匠の膝の上にいたのに、柴咲さんが顔を見せるとぱぁ~と走って柴咲さんのところへ行ってしまう。「しようがないなぁ、ベーコンも雄だからなぁ」と師匠と笑っていました。

 

 

──柴咲さんが猫好きなことは、猫たちにも伝わるようですね。

その人が猫好きかどうかは、猫にはすぐ分かりますね。猫からアプローチしてくる分にはいいんですが、でも「私、猫が好き」と人が猫に駆け寄ると猫は嫌がるものです。猫の生態を長年見ていると、猫はこう動くだろうなとだいたい予測できるようになるので、今回も猫の動きを予測しながらの演出でしたね。猫は命令されることを嫌がります。だから、僕は猫にひたすらお願いし続けました。猫待ちしているキャストやスタッフのみなさんは、大変だったと思います。

 

撮影現場も編集作業も“猫優先”だった

 

──撮影現場で「監督は猫のことしか考えていない」と指摘されたそうですね。誰の言葉だったんですか?

柴咲さんです(笑)。怒った感じではなく、「監督は猫のことしか考えてないでしょ?」とすごくお茶目な感じでおっしゃったんです。図星でした(笑)。でも最初の方のシーンで、柴咲さんからそう言ってもらってよかった。さすがプロの女優さんです。それからは猫だけでなく、俳優のみなさんにも真剣に向き合うようにしました。小林薫さんからも、いろいろとアドバイスをいただきました。俳優のみなさんはすごいなぁと改めて思ったのは、アドリブが絶妙だったことです。

 

 

──猫の動きに対し、その場のアドリブで対応したわけですね。

そうなんです。猫の動きに合わせて、みなさん巧みにアドリブされました。小林薫さんが猫たちに刺身を食べさせるシーンでは、最初に小林さんのもとに近寄ってきたのは、小林さんが「おんな城主 直虎」で共演した猫だったんです。それで小林さんは喜んでいたんですが、後からやって来た猫たちと本気のケンカを始めてしまった。そのとき、小林さんがとっさに巌として「ほら、ケンカするんじゃねぇよ」と即興で台詞を口にしたんです。あの台詞がなかったら、あのシーンは使えませんでした。子猫が手水鉢に登って水を飲むシーンでは、子猫が脚を滑らせてしまいました。柴咲さんは「あっ」と言いながら、とっさに子猫を救い上げたんです。猫好きじゃないと、あれほど素早くは動けなかったでしょう。柴咲さんの動きにはびっくりさせられました。他にもいろんなシーンで、みなさんから助け舟を出していただきました。

──編集作業も大変だったのではないでしょうか。

編集の加藤ひとみさんも本当に猫好きな方で、自宅で猫を飼われているんです。猫の出演シーンはすべて覚えてくれ、僕が「こんなシーンなかった?」と尋ねると、「このシーンですか?」とすぐに出してくれましたし、「この猫なら、こっちのカットもいいですよ」と教えてくれるんです。俳優がかっこよく映っているカットか、猫がよく映っているカットかで僕が悩んでいると、加藤さんが猫好きなこともあって「俳優さんには泣いてもらいましょう」と。それですべて“猫優先”になりました(笑)。

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