Apr 25, 2017 interview

ベテラン殺陣師、辻井氏が語る木村拓哉主演『無限の住人』の撮影裏と三池組の凄み

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三池監督は常に次回作以降の予告編を撮っている!?

 

──クライマックスは、万次が幕府方を相手に戦う300人斬りシーン。

数は多いんですが、斬られ役はみんな立ち回りの経験者なので楽といえば楽なんです。役者同士だとどうしてもお互いに怪我をさせちゃいけないと気を遣いますし。今回は京都での撮影ということもあって、立ち回りのベテランを多く集めることができ、東京や各地からも手練を集めています。三池監督の『一命』(11年)のときも75人くらい集めましたが、「こいつらなら絶対に勝つ」と思える屈強そうな顔ぶれをそろえるんです。一人でも動きの鈍いヤツがいるとダメ。「つけ回し」と呼んでいるんですが、役者が一歩動くとそれに合わせてダダダッと動かなくちゃいけない。1カットでも動けないヤツがいると目立ってしまうんです。

 

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──プロたちが集まった現場なんですね。いろんな三池作品に参加されてきた辻井さんですが、今までで最高に大変だった現場は?

『クローズZERO』の現場もすごかったけど、いちばん大変だったのはやっぱり『十三人の刺客』でしょうね。でも三池監督の作品に『岸和田少年愚連隊 血煙り純情篇』から参加してきて、三池監督は常に次回作以降の予告編みたいなつもりで撮っているんじゃないかという気がするんです。例えば『十三人の刺客』で牛が暴れるシーンがあるんですが、あのシーンはちょっと変ですよね。でも、今回はCGで牛を表現しているけど、本当の牛を使ったら、すごかっただろうなと思わせるものがある。あの映画にはもしかしたらいらないシーンかもしれないけど、次に何かあったらもっとすごい映像を撮るんだろうなと、三池監督は次の作品への期待を常に抱かせるんですよ。

──現場はハードだけど、三池監督と共にスタッフやキャストも進化していくような手応えが感じられるわけですね。

三池組はいつも新しいことを試しているので、参加している僕らも楽しいし、面白いんです。三池監督は「このシーン、こんなふうに撮りたいんだけど、何かアイデアある?」と常に新しいアイデアを求め、監督が求めている以上のものを僕らは懸命に考えるんですが、監督はさらにその上を行きますからね。まぁ、すごい監督ですよ。ハリウッド並みに潤沢な予算があれば、とんでもない映画を撮る? いやぁ、ひとつの作品に半年や1年も掛かりっきりになるのは嫌だと言うんじゃないかな、あの人は(笑)。

──「otoCoto」では毎回クリエイターのみなさんに、最近気になった本や愛読書をお聞きしています。辻井さんにとっての思い出の本は?

勉強するのが嫌で、この世界に入ったので、あまり本は読んでいません(笑)。体を動かすのが好きで、「がんばれ元気」は大好きでしたね。漫画はよく読みました。「翔んだカップル」とか「プロゴルファー猿」とか。小説はほとんど読んでいませんが、ノンフィクションものは嫌いじゃないですね。落合信彦さんの「二〇三九年の真実 ケネディを殺った男」や広瀬隆さんの反原発ものは印象に残っています。今回の『無限の住人』のように原作があれば、原作も読んで参考にならないか考えますし、台本はじっくり読み込むようにしています。最近はボディケア関係の本を読むことが増えてきたかなぁ。この仕事は体が資本ですからね(笑)。

 

取材・文/長野辰次
撮影/名児耶洋

 

プロフィール

 

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辻井啓伺(つじい・けいじ)

1963年大阪府出身。1981年に「ジャパンアクションクラブ」に入団し、スタントマンとして出演。2001年に「スタント チーム ゴクウ」を代表者として設立する。三池崇史監督の作品には『岸和田少年愚連隊 血煙り純情篇』(97年)以降、『DEAD OR ALIVE 犯罪者』(99年)、『殺し屋1』(01年)、『妖怪大戦争』(05年)、『クローズZERO』(07年)、『十三人の刺客』(10年)、『一命』(11年)、『悪の教典』(12年)、『藁の楯 わらのたて』(13年)、『テラフォーマーズ』(16年)ほか多数参加。その他のスタントコーディネート作品に、園子温監督の『新宿スワン』(15年)、李相日監督の『許されざる者』(13年)、宮藤官九郎監督の『中学生円山』(13年)、松本人志監督の『R100』(13年)などがある。

 

作品紹介

 

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映画『無限の住人』

累計発行部数が750万部を突破している沙村広男のベストセラーコミック『無限の住人』の実写映画化。木村拓哉にとってはSMAP解散後、初となる映画主演作であり、三池崇史監督とのタッグも初めて。日本の芸能界において長きにわたってトップアイドルの座にあった木村拓哉が海外での評価も高い三池作品の中でどう変わったのか、それとも変わっていないのかに注目したい。不死身の男・万次役を片目の見えない特殊メイクを施して演じ通した木村の熱演ぶりに加え、愛する者を見送り続けてきたもう一人の不死身の男・閑馬を市川海老蔵、逸抜流を率いる天津影久(福士蒼汰)を慕う女剣士・槇絵を戸田恵梨香が演じ、木村と壮絶な殺陣シーンを繰り広げる。三池監督作品ならではのバイオレンスシーンの連続だが、『湯を沸かすほどの熱い愛』(16年)で日本アカデミー賞助演女優賞を受賞した杉咲花が演じるヒロイン・浅野凛の健気さが殺伐とした物語にひと筋の清涼感をもたらしている。

映画『無限の住人』
原作:沙村広男「無限の住人」(講談社『アフタヌーン』所載)
監督:三池崇史 
脚本:大石哲也 
音楽:遠藤浩二 
撮影:北信康
主題歌:MIYAVI「Live to Die Another Day 存在証明」
出演:木村拓哉 杉咲花 福士蒼汰 市原隼人 戸田恵梨香 北村一輝 栗山千明 満島真之介 金子賢 山本陽子 市川海老蔵 田中泯 山崎努
配給/ワーナー・ブラザーズ映画
2017年4月29日(土)より全国ロードショー
(c)沙村広男/講談社 (c)2017映画「無限の住人」製作委員会
公式サイト:http://wwws.warnerbros.co.jp/mugen

 

原作紹介

 

『無限の住人』沙村広男/講談社

全30巻に及ぶ沙村広男の漫画家デビュー作。時は江戸時代。謎の老婆にとって体内に“血仙蟲”を宿すことになった不死身の男・万次は両親の仇討ちを誓う凛を支え、剣客集団・逸刀流と戦うことに。今回の実写映画化では、原作コミックの1〜7巻を中心にしながら、逸刀流を率いる天津影久との決着戦までが一気に描かれる。江戸時代は幕府の許可なく女性が江戸市中から外へ出ることは厳しく禁じられていたが、凛が独断で天津の後を追い、江戸から抜け出すエピソードは読み応えあり。少女から大人へと凛が成長していく過程が、原作では誌面を割いてじっくりと描かれている。

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辻村啓伺アクションコーディネーターの思い出の1冊

 

「二〇三九年の真実 ケネディを殺った男」落合信彦/集英社文庫

1980〜90年代に国際ジャーナリストとして人気を博した落合信彦の代表作。1963年にダラスで凶弾に倒れたジョン・F・ケネディ大統領の暗殺の真犯人像と黒幕の存在について、独自の取材ルートで迫っている。米国では大統領よりも「軍産複合体」が力を持っており、ケネディ大統領はベトナム戦争の終結を進めようとしていたことから狙撃されたと言及している。1977年に「週刊文春」で連載され、ダイヤモンド社より『二〇三九年の真実 ケネディを殺った男』として書籍化されたが、2013年に『20世紀最大の謀略 ケネディ暗殺の真実』と増補改題され、小学館にて文庫化されている。

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