Mar 05, 2016

インタビュー

第1回:僕は「お茶の水博士」になりたかった!

レジェンド声優:水島裕
インタビュアー:藤井青銅(放送作家
/作家/脚本家)

 

 

藤井青銅 
(以下 藤井)

水島さん達「レジェンド声優」の皆さんに共通しているのが、最初から声の仕事を志していたわけではないこと。
以前お話をお伺いした古川登志夫さんも、平野文さんも子役出身。そして水島さんも劇団若草出身です。ちなみに若草には当時どういう方がいらっしゃったんですか?

水島裕 
(以下 水島)

僕がお世話になったのは音無美紀子さん、桃井かおりさん……後輩には坂上忍さんや斉藤こずえさん、杉田かおるさんがいました。

藤井

さすがにそうそうたる面子ですね。水島さんは当時、自分から積極的に役者への道を志したのでしょうか?

水島

いいえ、まったく(笑)。小学生の頃の僕はそもそも『鉄腕アトム』のお茶の水博士になりたかったんですよ。ロボット博士かパイロットになりたいなぁって。「俳優」という道を考え始めたのは妹の影響ですね。
当時、4歳離れた妹がNHKの東京放送劇団に加入していたのですが、保護者代わりということで遠足などの課外実習だけ僕が父兄の代わりに参加していたんです。そこで劇団という“もう一つの放課後”を知って興味を持ったのがきっかけでした。

藤井

劇団若草にはどのようなご縁で?

水島

実は、当初は妹と同じ東京放送劇団に入ろうと思っていたんですよ。ただ、当時の僕は博士になりたかったので、けっこう真面目に受験勉強をしていまして……それを諦めた時には東京放送劇団の入団年齢制限をオーバーしてしまっていたんですね。
あきらめようかなと思っていたのですが、たまたま家から歩いてすぐのところに劇団若草があったというわけです(笑)。

藤井

まさかそんな理由だとは!

水島

本当、本当(笑)しかも、その時点でもまだ「演劇」がどういうものなのかわかっていませんでしたからね。楽しい空間としての「劇団」に入りたかったというだけだったんです。遊び場感覚ですね。

 

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藤井

入ってみたらいかがでしたか?

水島

中学一年生の秋、入ってすぐにオーディションに行かされました。松本幸四郎さん主演のミュージカル『王様と私』で五代目 中村勘九郎さん(後の十八代目 中村勘三郎)の歌の代役というものでした。ちょうど同い年くらいだったんですよね。

藤井

この頃、既に勘九郎さんは舞台の第一線で活躍する一流の役者でした。私も含め、同世代は皆、彼の早熟ぶりを何となく意識していたように思います。そして、水島さんの初オーディションはその勘九郎さんがらみのものだったんですね。でも、「歌の代役」っていったいどういうことだったんですか?

水島

ちょうど勘九郎さんが変声期に入ってしまっていて、歌が心配だと。その「影歌」のオーディションだったんです。ようは「吹き替え」ですね。当時の僕は歌が大嫌いで、実際、そのオーディションも現地まで歌のテストだって隠されていたほどだったんですが、なぜか「失敗しなかった」という理由だけで選ばれてしまって……(笑)。
競い合った子がすごく上手だったんですけど、最後の最後で失敗してしまったんですよ。舞台はそれだけは絶対にNGですから、たとえ音痴でも水島にしておこうってことになったみたいです。いや、本当にたまたま、たまたまです。

藤井

すごいロケットスタートですね!

水島

本当にね。いつか、勘九郎さんにお会いすることがあったらその話をしようと思っていたのですが、残念ながらそれは叶わぬことになってしまいました(注:十八代目 中村勘三郎さんは2012年12月、57歳で早世)。

藤井

声優デビューはどの作品でいつごろだったんですか?

水島

声優としてのお仕事をいただいたのは、それからしばらくした後。中学二年生のころにいただいた『くまのプーさん』のクリストファー・ロビン役が初めてです。そのほか、『大草原の小さな家』や『ゆかいなブレディー家』など、主に洋画・海外ドラマの吹き替えを中心にやらせていただきました。

藤井

その当時の仲間で、今でも声優として活躍されている方はいらっしゃいますか?

水島

実はあまりいないんです。事務所は違うんですが、志垣太郎さん(『ベルサイユのばら』アンドレ役など)くらいかなぁ。劇団若草は子役の劇団だったので、声の仕事でないものも多かったですしね。

藤井

水島さんのプロフィールに『笑点』の「ちびっ子大喜利」なんてものもあって驚かされました(笑)。

水島

その初代メンバーなんですよ。山田隆夫(現・山田たかお)さんたちと一緒にやっていました。その後、僕は高校受験で辞めちゃうんですが、山田さんたちが座布団10枚集めて『ずうとるび』として歌手デビューしたときには驚きましたね。紅白にも出たりして、その時は、正直うらやましかったです(笑)。

 

構成 / 山下達也  撮影 / 田里弐裸衣

 

 

過去のレジェンド声優インタビュー

 

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水島 裕(みずしまゆう)

1956年1月生まれ。DJ、アイドル声優として人気を得、親しみやすく明るいキャラクターが受け、NHK総合『連想ゲーム』のレギュラー解答者など、クイズ・バラエティ番組等でタレントとしても活躍。趣味も幅広く、ガラス工芸、A級ライセンス(四輪)、スキューバライセンス、現代狂言など。主な声の出演にサモ・ハン・キンポーの吹き替え、「魔法の天使クリィミーマミ」俊夫役などがある。NHK「連想ゲーム」などテレビ出演も多く、現在はTBS系「ひるおび」(月~金11:00~13:50)でナレーションを務める。著書に『口ベタでも大丈夫 困ったときの質問会話術』(亜紀書房)。

 

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藤井青銅(ふじいせいどう)

23歳の時「第一回・星新一ショートショートコンテスト」入賞。これを機に作家・脚本家・放送作家となる。書いたラジオドラマは数百本。腹話術師・いっこく堂の脚本・演出・プロデュースを行い、衝撃的デビューを飾る。最近は、落語家・柳家花緑に47都道府県のご当地新作落語を提供中。 著書「ラジオな日々」「ラジオにもほどがある」「誰もいそがない町」「笑う20世紀」…など多数。
現在、otoCotoでコラム『新・この話、したかな?』を連載中。