今や世界的ブームとなった「ポケットモンスター」は、これまでTVアニメや映画にもなり、大ヒットを記録してきた。そのポケモンが、ついに実写化。しかもハリウッドで! 人間とポケモンが共存するライムシティを舞台に、自称“名探偵”キャラとなった名探偵ピカチュウが大活躍する物語。ピカチュウはもちろんCGだが、その声を担当するのが、『デッドプール』シリーズのライアン・レイノルズだ。外見はキュートなモフモフながら、声やしぐさは妙にオッサンという不思議なピカチュウが完成。じつは声以外にも秘密が……などなど、ライアンが役作りから、ポケモンへの想い、家族の反応、そしてデッドプールとの関係まで楽しく語ってくれた。
知らない間にオーディションが行われてた? 物語の魅力、脚本で一番惹かれた部分
――『デッドプール』(16年)で話を聞いた時、「日本のカルチャーでパッと思い浮かぶのは『ドラゴンボール』かな」と言っていましたが、ポケモンは最近知ったのですか?
ポケモンは名前を聞いたことがあるくらいで、どういうものか、どういう世界なのかはわかっていなかったんだ。だから今回、一夜漬けのようにいろんな知識を頭に詰め込んだよ。その結果、世界でどれだけ人気があって、いかにファンが多いのかを改めて実感したね。
――ピカチュウ役がライアンさんになった決め手はなんだったと思いますか?
製作陣はCGのピカチュウにいろいろな俳優の声をかぶせていったようだが、その中で僕の声が一番ハマっていると確信したそうだ。つまり知らない間にオーディションが行われ、合格したようなものだよ。
――その後、脚本を読んでオファーを受けたわけですね。
僕は脚本を読む時、注目されやすい派手な部分を取り除いても、ちゃんとストーリーとして成り立っているかを常に重視している。今回は愛や喪失、希望、そして息子と父親の関係も描かれていたので、納得できたんだ。そこにポケモンの要素がプラスされるわけだから、さらにスゴい映画になると確信したよ。脚本で一番惹かれたのはミステリーの部分かな。物語がどこへ向かうのか、全くわからない。ピカチュウが解こうとする謎と、ティムが解こうとする謎。その2つが融合されて彼らが一緒に冒険に出る。そこが映画の最大の魅力じゃないかな。
些細な表情の動きもキャプチャー!日々進化するテクノロジー、“寂しかった”撮影秘話
――人間ではない役柄の声を演じたわけですが……。
いや、ピカチュウは、主人公のティムとは人間の言葉で話すわけで、人間の要素もあると思って演じたよ。
――役作りのために、日常でもピカチュウになりきって生活したというのは本当ですか?
あっ、それはプロモーションの中で思わず言ってしまったジョークだよ(笑)。でも、僕自身がピカチュウに似ているので、役のオファーが来たんだと思ってる。「自由にアドリブを入れながら演じてほしい」とも言われたくらいだから、周りから見ても似ているんじゃないかな。
――CGのピカチュウは、あなたの表情などをキャプチャーしたそうですね。
モーション・キャプチャーも、フェイシャル・キャプチャーも両方やったよ。前に一度だけ、『デッドプール2』(18年)で、ジャガーノートを演じたシーンでモーション・キャプチャーは経験した。でも、その時点からさらにテクノロジーが進化していた。今回は“マイクロ・フェイシャル・エクスプレッション”といって、ものすごく些細な表情の動きも取り込むことが可能になっていたんだ。完成したピカチュウを最初に見た時は、正直言って怖かったね。思わず、目を背けてしまった感じ。だって自分の魂が、本当にピカチュウに入り込んだみたいなんだよ(笑)! それくらい精密なテクノロジーだったんだ。
――表情だけでなく、ピカチュウの肉体の動きも演じたのですか?
全ての部分だ。肉体の動きもモーション・キャプチャーなので僕のものだよ。ピカチュウが走るシーンなんかも実際にやってる。もちろん僕の頭や手、足の動きをピカチュウのボディに当てはめるわけだけどね。
――撮影現場のプロセスを教えてください。
(人間のキャストを演じた)ジャスティス・スミスやキャスリン・ニュートンと違って、僕は小さな部屋でカメラに囲まれ、動きがキャプチャーされていった。撮影初日から3日間だけは、メインの現場に行ってジャスティスと息を合わせるため、セリフの読み合わせなんかをしたけど、あとは別々のプロセスだったよ。その後、彼らとは今回のプロモーションのツアーで再会した。こういった撮影のプロセスは僕にとっても初めてだったね。
――孤独な仕事だったわけですね。
映画の最初の方でピカチュウが「寂しかったんだよ!」と叫ぶシーンがあるけど、あそこは本当に僕の感情が込もってる(笑)。