May 09, 2019 interview

朝井リョウは映画『チア男子!!』をどう観た? 映画版ならではの魅力、目標の青春スポーツ小説を語る

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横浜流星と中尾暢樹がW主演を飾る『チア男子!!』。男子チアリーディングに青春を捧げる大学生のひたむきな姿を爽やかに綴った本作の原作者は、デビュー作「桐島、部活やめるってよ」や「何者」なども映画化されている朝井リョウ。物語の成り立ちから映画を観ての印象まで、小説家としての視点を交えつつ率直に語ってくれた。

青春スポーツ小説の描写の難しさ、チアリーディングを題材にした理由

――原作は朝井さんの母校・早稲田大学の男子チアリーディングチーム“SHOCKERS(ショッカーズ)”から着想されたそうですね。

青春スポーツ小説が子どもの頃からすごく好きなんです。「バッテリー」、「風が強く吹いている」、「DIVE!!」、「800」……名作だらけなんです。このジャンル特有の、いつ読んでも面白いし楽しい、“読書のふるさと”感も好き。特に私は「一瞬の風になれ」が大好きすぎて、ああいう小説を自分でもいつか書いてみたいとずっと思っていたんです。

――それで「桐島、部活やめるってよ」に続く2作目のテーマとして選ばれたんですか?

デビューした後、当時の担当編集者さんと2作目はどうしますかという話をしていて、「青春スポーツ小説が好きなのでいつかやってみたいんですよね」と軽はずみに話したら、じゃあやりましょうということになったんです。当時はスポーツを文章で描写するということがどれだけ難しいかわかっていなかったので、逆にすんなり挑めました。今だったらそんな簡単に手を出せません。

――どういう点が難しいと感じるのでしょう?

複数の人間が同時に違う動きをする描写、必然的に増えてしまう登場人物の書き分け、練習のシーンが少ないとリアリティがなくなるし多すぎると物語が展開しない等々キリがないですが、さらにチアリーディングって文脈が読者に共有されていない競技なんです。例えばサッカーの小説で「ボールを蹴った」と書けば、映像が思い浮かびますよね。だけど「人をトスした」と書いても、えっ!? ってなるじゃないですか。それを全部説明しないといけないという意味で、チアはハードルがすごく高い。だからこそ、そういう技術的なことを何も知らない時代に勢いで挑んでおいて本当に良かったなと思っています。

――確かにチアリーディングの映像は思い浮かばないですよね。そういう競技を小説の題材として選ぶ決め手になったのは?

ひとつは、青春スポーツ小説の様式美から逃れたかったからです。青春スポーツ小説ってどうしても「メンバーを集めて、チームができて、練習を重ねて、モメて分裂して、でももう一回団結して、そして本番!」みたいな定型があるんですが、意識せずに書いたらそれをそのまま踏襲しちゃうなと思ったんですね。ただ、このジャンルにおいて全く新しい革命的な発明って正直もう生まれないだろうし、自分が青春スポーツ小説を読むときは新しい発明を求めているわけではなく、全身マッサージを受けるときみたいに、押さえてほしいツボをきちんと押さえてもらいたいんですよね。定型をブチ壊す必要はないにしても、少し違う風味を加えたいなと思っているときにSHOCKERSの演技を見て、単純にレベルの高さに圧倒されたんです。バンバン人が飛ぶ姿を見ながら、これは誰も書いたことがないだろうな、と。また、私はダンスをしていたので、複数の人数でショーを作ることの光と闇を体感的に知っていたということも大きかったです。この競技を題材にすれば様式美にちょっとスパイスを加えられるのではと思って、ちょっとずつ構想を練っていった感じですね。

――スパイスと言うと?

まずは、チアリーディングは人を応援するスポーツだということ。これは他の競技にはない特徴です。また、青春スポーツ小説では「異性にモテるためにそのスポーツを始める」というのがよくあるんですけど、SHOCKERSのメンバーはモテるために始めた人は意外と少なかった。とは言っても結果、彼らはめちゃめちゃモテてるんですけど(笑)、でも競技を始めるきっかけに人それぞれの物語があったので、様式美の気持ち良さもありつつ、ちょっと違う種類のものが書けるかもという予感がありました。

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