“なるべくシンプルなコードで”制作した主題歌、ライブシーン撮影で感じたこと
――劇中では実際にお二人がギターを弾きながら歌っています。秦さんは曲を作る時に、なるべく弾きやすいコードにするといった考慮をされたりしたんですか?
秦 撮影に向けてギターを始められると聞いたので、なるべくシンプルなコードで作ろうというのは意識してました。すごく複雑なコードだったりすると、「こんなの作りやがって!」って嫌われちゃうかもしれないし(笑)。あとは、ハルレオはギターデュオなので、それぞれのギターのボイシング(コードを構成する音の並びを変えること)が重なって、綺麗に響くといいなってこともイメージしましたね。
――お二人は撮影前に毎日何時間もギターの練習をしていたとか。
小松 そうですね。家に帰って、「あ~今日も(ギターに)触って練習しなきゃ」という日もあれば、「今日は楽しく弾けるかも!」みたいな日もあったり、いろいろな感情の中でギターを弾いていました。一人で淡々と練習することもあったので、寂しいなって思ったこともありましたね。
門脇 やってもやっても、そう簡単には上手くならないしね。
小松 そうそう。一人で練習している時は、ずっと「麦ちゃんは今どれくらいできてるのかな?」とか「きっともう完璧なんだろうな」とか想像して、ヤバい! って思ってました(笑)。
門脇 でも、さっき秦さんが「楽しく歌って」とおっしゃってましたけど、たぶんギターもそれに似てると思うんですね。やっぱり不安な気持ちのまま練習してると上達が遅いというか。だから、気持ちだけでも「私はミュージシャンです!」みたいな(笑)。そういう気の持ちようと、「音楽って楽しい!」という気持ちで自分がノッてくるというのはすごくあったと思います。実際、菜奈ちゃんと二人で練習し始めてからは、一人の時よりずっと楽しくて、上達も速かった気がします。
――ギターに加えて、お二人はお客さんを目の前にして歌うという状況も普段なかなかないと思います。やってみて、いかがでしたか?
小松 不思議でした。自分がプライベートでライブを観に行く時は、客席からステージを見上げるのが普通なので、ステージから見る景色ってこんな感じなんだなぁって。空気感も会場によって全然違うから、今日はわりと静かだなとか、今日はすごく元気だなとか、そういうところで自分の気持ちも変わったし、気持ちが変わることで歌い方もまた変化したりしたので、面白いなって思いましたね。
――門脇さんはいかがでしたか?
門脇 私は舞台を何度かやったことがあって。でも、目の前にお客さんがいるのは同じなのに、やっぱり違いますね。舞台の場合、演出家さんの世界観や物語もあるので、お客さんもある意味、総合的なものを観に来てる気がするんです。それが、ライブの場合だと、アーティスト本人に視線が集まるじゃないですか。そういう感覚って舞台をやってる時にはないんですよね。そういう、身一つで勝負する感じっていうのは、すごく興味深かったです。それから、もう一つ印象的だったのが、いざステージに立ってお客さんを目の前にした時、自分の個人的な不安とかがくだらない感情に思えるというか。それよりも、目の前の人たちに楽しんでもらいたいっていう気持ちが、ものすごく湧いたんです。それは自分のモチベーションにもなりましたし、アーティストの気持ちにさせてもらえた時間でした。
――秦さんは完成した映画をご覧になって、どんな感想を持たれましたか? 劇中にはライブハウスのシーンもたくさん登場したので、ご自身のインディーズ時代と重なる部分もあったのでは?
秦 そうですね……ライブのシーンでは、お客さんがたくさん入ってていいなと思いました(笑)。僕はもうガラガラだったので。
小松 え~、そうだったんですか?!
秦 そうなんです。ああいうライブハウスに出ていた頃は、共演者しかお客さんがいないとか、ザラにあったので。
門脇 ええ~?!
秦 だから、(ハルレオは)すごく人気があるのに解散なんてもったいないなって(笑)。
小松&門脇 あははは(笑)。
秦 それから、映画に登場する金森ホール(北海道・函館)は僕もライブをしたことがあって、会場の雰囲気とかもわかるので、懐かしいなって思いましたね。あとは、楽しそうだなって。ギター1本持ってバンで移動するとか、僕はあんまりやったことがないんですよね。うらやましいなぁと思いながら観ていました。