May 07, 2018 interview

白石和彌監督と松坂桃李が“共に勝負”した『孤狼の血』を熱く語り合う

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広島の架空都市・呉原を舞台に描き、“警察小説×『仁義なき戦い』”と評された柚月裕子の同名小説を役所広司、松坂桃李、江口洋介ら豪華キャストで映画化した『孤狼の血』。映画『彼女がその名を知らない鳥たち』(17年)でもタッグを組んだ監督・白石和彌と松坂桃李に、今作の撮影エピソードや松坂演じる新人刑事の日岡という役に込めた想いなどを語ってもらった。

 

松坂は“共に勝負できる人”――日岡の真っ直ぐさは「桃李くんが役に向かう姿勢と似てる」(白石)

 

──お二人は『彼女がその名を知らない鳥たち』以来、二度目のタッグですが、改めて今回の現場はいかがでしたか?

松坂 朝まで撮影が続いて体力的にキツいことはありましたけど、『かの鳥』の時と同様に、すごく心地良い現場で楽しかったです。

白石 確かに朝まで撮影したときはキツかったよね。ロケの時に300人ぐらい桃李くん目当てでギャラリーが集まってたけど、撮影が終わる頃には二人しか残ってなかったしね(笑)。

松坂 そうでしたね(笑)。さすがに徐々に減っていきましたよね。

 

 

白石 「桃李くん、ハグしてあげたら?」と思うくらい、残った人たちは頑張ってたと思う(笑)。

松坂 僕もハグしたい気持ちはありましたけどね(笑)。広島の呉の皆さんはとても温かかったですよね。

白石 温かかったね。

 

 

──監督は改めて松坂さんとご一緒してどんなことを感じましたか?

白石 『かの鳥』の時に、「桃李くんは共に勝負できる人だ」と感じましたし、今回の映画でガッツリ組むことが出来て、より彼の魅力に気付くことが出来たと思います。例えば、日岡が様々な物事に対して嘘無く真っ直ぐに向かっていく感じというのは、桃李くんが役に向かう姿勢と似てると感じたから日岡役にオファーしたところもあって、演じてもらっている間もその気持ちは変わらなかったです。

松坂 僕自身も役所広司さん演じるガミ(大上)さんに向かっていく日岡の感じは、僕が作品に向き合う時に彼のようにありたいと思えたというか。日岡と似ているかどうかは自分では判断できないですけど、ガミさんとの向き合い方にはとても共感できました。

 

 

名優・役所広司と再共演。現場での印象と、松坂が「すごく嬉しかった」エピソード

 

──松坂さんは『日本のいちばん長い日』(15年/原田眞人 監督作)でも役所さんと共演されていますが、今作の現場で役所さんに対してどのようなことを感じましたか?

松坂 『日本のいちばん長い日』の現場での役所さんは、誰ともお話しせずにピリっとした空気を纏っていて、近寄りがたかったんです。それはきっと演じる役柄に合わせて居方を考えてらっしゃったのではないかと。今回の現場ではスタッフさんやキャストさんとコミュニケーションを密に取っていらして、温かい雰囲気がガミさんとリンクしていたように思います。僕に対してもとてもフレンドリーで食事まで誘ってくださって、最初は驚きましたけど、内心すごく嬉しかったです。

 

 

白石 僕は『孤狼の血』での役所さんの感じは今まで見たことなかったなと、完成作を観て感じました。役所さんは変な小細工をせずに、ちゃんと腰を据えて演じようとしているというか。先日、日本アカデミー賞の会場で是枝(裕和)監督とお会いしたんですけど、「『三度目の殺人』の役所さん、すごかったですね。特別なことをしようとしてないのに、ああいうお芝居が出来るのはなぜなんでしょうか?」と尋ねても「わからないんですよね」とおっしゃっていたんです。きっとご本人は意識されてないと思うんですけど、今までの生き様や圧倒的な存在感みたいなものをすでに持っていらっしゃるからじゃないかと、そう感じるんですよね。そういう意味では、桃李くんもあまり小細工をせずに勝負できる役者だと思っています。