『君の膵臓をたべたい』、なんともセンセーショナルなタイトルの映画は、住野よる作の同名小説の実写化作品である。おどろおどろしく見えるが、じつはとても純粋で心を打つストーリーになっている。今回、膵臓に病を抱えるヒロイン・桜良を演じた浜辺美波さんとクラスいち地味なクラスメイト【僕】を演じた北村匠海さんによる対談をお届けします。
──作品の撮影は昨年の秋ごろに行われたそうですね。国内の様々な場所でロケをされたようですが特に思い出深いのは?
北村 滋賀、福岡、愛知、京都、色々な場所で撮影しました。監督の決めたロケーションがどこも本当に美しくて、目に映る景色に釘付けになってしまいました。特に印象的だったのは、映画のメインビジュアルにも使用されている橋。京都にあるのですが、まさに原作にぴったりの雰囲気ですよね。
浜辺 たしかに京都の橋もとても印象的ですけど、私は学校の屋上をよく思い出します。学校のシーンは主に滋賀で撮影することが多かったのですが、学校の屋上から見る景色がとてもきれいで。特にめずらしいものが見えたとかではなく、下にグランドがあって、上には青空があって。どこにでもある風景なんでしょうけど、なんだかとても好きでした。
──『君の膵臓をたべたい』というタイトルは、初めて目にした人はハッとしてしまうインパクトのあるものですね
北村 僕も最初にタイトルを聞いたときは、どんな映画なんだろうかと全く想像がつかなくて。原作と脚本を読んだ後に、この言葉に秘められた思いが胸に飛び込んできました。真意を知ると全く違う印象になるタイトルなんですよ。美しさ、切なさ、儚さがこもっていて、改めて原作者である住野よる先生の生み出す言葉の力を感じました。僕自身、映画の中でタイトルと同じセリフを言うシーンがあるんですけど、大切に演じようと意識していました。
浜辺 私も本屋さんなどでタイトルを目にしたことはあったのですが、どういうストーリーなのかは全く知らなかったんです。初めは言葉の響きから、もしかしたらグロテスクな内容なのかもしれないなって。でも桜良を演じるお話をいただいてから原作を読んでみたら、なんて素敵な言葉なんだろうって印象が180度変わって。色々な人の思いのこもった言葉だと知ってからは大好きになりました。
──それぞれ演じられた【僕】と桜良について聞かせてください。
北村 【僕】という役は、中学生時代の自分かな?と思うほど、似ている点が多いんです。他人との間に壁を作って、ひとりの世界に閉じこもってしまう、そんな部分があの頃の自分にそっくりで。限りなく近いからこそ、あえて演じすぎないようにしようと心がけていました。原作と脚本を読んだだけで【僕】の行動や人柄、目線の持って生き方が手に取るようにわかったんです。だからこそ、自分から出てくる言葉が【僕】の言葉に通じてるんじゃないかと考えました。
浜辺 私は北村さんとは真逆で。桜良は自分とは全く違う人間なんです。私自身は【僕】寄りの人間だから、壁を作ってしまう気持ちはわかるけど、その壁を壊して相手の方へ入っていくタイプの気持ちは想像の上で演じるしかなくて。
北村 たしかに美波ちゃんが【僕】系だなっていうのは最初にお会いしたときから感じていたから(笑)、桜良のような女の子を演じるのは苦労することもあるんじゃないかなって。僕自身も、少し前の作品でテンションが高い役が続いたんですけど、たまに役のテンションに追いつけない瞬間があって(笑)。
浜辺 それ、すごくわかります(笑)。
北村 高いものを低くするよりも、低いものを高く跳ねあげ続ける方がエネルギーを使うと思うんです。でも美波ちゃんの演じる桜良は、原作を読んで想像した桜良そのものだなって思いました。