Nov 14, 2019 interview

『影踏み』で再タッグ!篠原哲雄×山崎まさよしが語る“俳優論”、影響を受けた映画と音楽

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いまも人気を誇る『月とキャベツ』(96年)の篠原哲雄監督と山崎まさよしが再びタッグを組んだ『影踏み』は、硬質な筆致で幅広く支持されている『クライマーズ・ハイ』などの横山秀夫原作のミステリー。自らの過去に向き合いながらある事件に隠された秘密と謎を解き明かす孤高の泥棒という、ダークヒーローを見事に体現した山崎と、盟友・篠原監督の和やかな対談をお届けする。

『月キャベ』との違い、二人が語る俳優論

――お二人が『月とキャベツ』でご一緒されてから20年以上が経っていますが、お互いにここは変わっていないという点や、逆に変化したと思われた点はありましたか?

山崎 いや、篠さんは基本的に変わってないです。

篠原 白髪が増えて、少し太った。

山崎 そうですね、はい(笑)。

篠原 山ちゃんも少し太ったくらい。あとは一重が二重になった。

山崎 そうですね、あの当時は一重だった(笑)。

――内面的なところはそんなに変わっていない?

山崎 変わってらっしゃらないと思いますね。

篠原 でもやっぱり当時よりは僕にしても山ちゃんにしてもどこか図太くはなったんじゃないですか。

山崎 そうですね、当時は全部が初めてでしたし。

篠原 俳優ということに関して言えば、『月キャベ』ではミュージシャン役であったぶん、自分を投影することが役に近づく一番の近道だった気もするんですけども、今回は泥棒の(真壁)修一という、まったく違う人間を作り上げなければいけないから、自分の中にある修一に当たる部分――簡単に言うとダークな部分を引き出さなきゃいけなかったから、けっこう大変だったと思います。

山崎 まぁ、そうですね。

篠原 当然、役ってなりきるということはあり得なくて、どれだけ自分を投影できるかとか役に近づくかとか、あるいは役と自分を行ったり来たりする作業が演じながらきっとあったと思うんですけど。山ちゃんのライブでの観客への投げかけ方にはユーモアがあるけど、この作品はユーモラスな瞬間はないですからね。そういう意味では、俳優・山崎まさよしという存在が大きく浮上したんじゃないかと思ったりします。

山崎 やっと俳優と認めていただいて…、や、冗談ですけど(笑)、自分ではそういう“俳優然”としたものは持っていませんから。ただ、篠さんの現場は過去にも経験してますから非常に安心感をもってできました。

――篠原監督はあまり細かく指示するほうではないということですね。

山崎 丸投げ放置プレイです(笑)。

篠原 僕が何もしてないみたい(笑)。僕が演じるわけではなく、演じるのはその役を演じる人自身ですから、ある意味、俳優には好きなように演じてほしいんです。もちろん役についてこういうことなんじゃないかという考えは思っているけど、俳優さんは違うふうに考えていることもあるから、僕はよく「どう思う?」って聞いて、「なるほど、こう考えることによって役に近づこうとしているのか」と、僕自身も納得できるヒントが欲しいというようなことがあるんです。

山崎 僕の少ない(役者としての)経験から考えるに、俳優という仕事は“主観”と“客観”の入れ替わりがずっと続いているということなのかな、と思うんです。例えばカットがかかった後は、「このキャラクターやったらこうするんだろうな」って役を客観視する。次に用意スタートがかかった時は、「自分だったらどう動くのか」って主観的に考えるという切り替えができる――そういうタイミングで切り替えられるのがプロの俳優さんなんだろうなと漠然と思ってるんですね。

篠原 なるほど。

山崎 僕の場合は、現場でおそらくプロの俳優さんはこういうふうにされているんだろうなっていうような漠然とした理由で動いていました。例えば「もっと怒れ」とか「もっと押し殺して」という演出があればそうするし。でも何も言われないっていうことはたぶん自分の判断で、主観と客観の入れ替わりはうまいことできてるのかなと思ったというか。

――篠原監督が「OK」であればそれはもう100パーセント信頼するという。

山崎 そうですね。たぶん監督も数パターンを想定されてたとは思いますけど、「山ちゃんやったらこうなるんだ」っていうこともくんでいただいてると感じてましたが――間違いですかね?

篠原 いや、正しいですよ。いまの主観と客観の話はもう俳優論ですね。客観というのは、事前にこの役はこういうことなんだろうって解釈することですけど、主観とは、芝居が始まり、自分が意図をもって動き、相手と呼応しながら変わっていく自分も感じていく。そこに客観的視点も生まれて役を体現していくのですよね。だから“客観”と“主観”が入れ替わっているというのはとても良くて、自分を客観視する視点もあるということだと思うし、俳優としての態度も正しいし、そういうふうに言葉で言うようになったんだなって。

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