Jun 17, 2021 interview

映画『いとみち』横浜聡子監督インタビュー「映画を撮りながら青森のことを知っていく」

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映画『いとみち』が 6月18日(金)より青森で先行上映、そして 6月25日(金)に全国公開を迎える。「市井の人々を描きたい」という横浜聡子監督が、青森を舞台に4度目のメガホンを取った本作。だが、クランクイン直前に緊急事態宣言が発令され、予定していた青森での撮影はすぐさま延期となった。製作期間が伸びたことで費用はかさみ、予算的にも苦労したという。その苦節を乗り越えて無事に公開を迎えられるというのは心から喜ばしい。

本作は、津軽三味線で奏でるローカル青春グラフィティとも見える。柳町にいる”家族”、弘前で触れる”社会”、その2つの駅を結ぶ五能線沿いの”友人”。その小さい世界で新しい自分を見出していく主人公いと。本作の結びで奏でられる津軽三味線の逞しい音色は、いとを見守ったすべての観客の心を震わせるだろう。

この度、横浜聡子監督に『いとみち』のキャストについて、またコロナ禍での製作について、時間の許す限り話を伺った。


■横浜聡子監督プロフィール
1978年、青森県生まれ。横浜の大学を卒業後、東京で1年程OLをし、2002年に映画美学校で学ぶ。2009年オール青森ロケで『ウルトラミラクルラブストーリー』(出演:松山ケンイチ、麻生久美子)が公開、トロント国際映画祭他、多くの海外映画祭でも上映された。2016年には安田顕主演の『俳優 亀岡拓司』を監督、麻生久美子、染谷将太、三田佳子、山崎努ら豪華キャストが共演した。近年はドラマ「バイプレイヤーズ~もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら~」「ひとりキャンプで食って寝る」「有村架純の撮休」などにも監督としても参加。


『いとみち』横浜聡子監督インタビュー

—本作は越谷オサムさんの小説が原作となっていますが、そちらを初めて読まれたときの率直な感想を教えてください。

私自身青森出身なので、文字を読みながら、頭の中で知っている風景が広がり、登場人物も知人の顔が呼び起こされることが多かったです。読み物として本当に面白く最後まですらっと読めてしまったのですが、逆に映画化する余白をどこに見出すかというのを最初は悩みました。

—プロデューサーの松村龍一さんから本作の映画化のお話があってから、監督がお返事に時間を要したのはそのような理由だったのですね。

そうですね。ちょうどTVドラマの撮影も重なっていたので、少しお返事を保留にしていました。そうしたら半年も経ってしまい…もう頭で考えるより、まずは動き出して映画としての面白さを見つけていこうと。最後は、『いとみち』を青森で撮りたいという松村さんの強い気持ちにほだされたかたちです。

–そんな中で実際に脚本を仕上げていくのはどうでしたか?

最初は別の脚本家の方にプロットを書いてもらったんです。私と主人公いととは年齢差があるので、若い方の視点を取り入れたいなと思ったんです。ですが、やはりその後自分で書こうと思い直して、ゼロから原作に向き合って脚本を書き上げました。

—原作と映画では、キャラクターの持つ特徴や背景に違いがありました。特に豊川悦司さんが演じた いとの父親は大きく違っていましたね。

シナリオを書き上げたときは「青森生まれ、青森育ちで、今も青森で大学教授をしている津軽弁を話すお父さん」だったのですが、豊川さんにお願いできることが決まってから、シナリオの新しい選択肢として「東京生まれの人間」というのが浮かんだんです。

『いとみち』sub1
いとの父親を演じた豊川悦司

–撮影時に、豊川さんとは具体的にどのようなコミュニケーションがありましたか?

毎回、次のこのシーンは、どうやって動くかっていう説明を私からするんです。最初にここにいて、こうやって動いて…みたいな。すると豊川さんが、こういったのはどうだろうって。お互いが具体的に動きを提案しながらシーンを作っていくっていうのは楽しかったですね。