映画は医者のようなもの
池ノ辺 今回は配信ドラマですが、監督は映画のお仕事もされてますよね。監督にとってドラマそして映画とはなんですか。
内片 僕は、エンターテインメントとしての映画やドラマは、医者と同じじゃないかと思うことがあります。我々のやっていることって、ともすれば、「こんなの意味がないんじゃないか」「何か生産性があるのか」とチラッと思うこともあるわけです。「ドラマ・映画がなくたって人は生きていける」的な。でも同時に「作品を観ることによって救われる人は絶対にいる」とも思うんです。それは、若い役者さんたち、若い演出家にもよく伝えています。
これは極端な例になりますが、ある役者さんがすごく落ち込んで、生きることも辛いというところまで追い込まれてしまった時があったそうです。でも、「その時に、内片組の作品にもう一度出たいという想いがあったから、私は頑張ってこられたんです」と言われたことがあった。自分自身が作品を撮り続けることが、誰かの救いになる、それによって生きたいと思える。それはお医者さんが病気になった人を治すのと一緒じゃないかと、そんなふうに思ったんです。自分の作品を観て、「面白かった!さあ、寝よう」「明日も頑張ろう」、そんなふうに良い気分になれたら、それだけでもう「やりがいのある仕事や」と思うし、そう思ってくれる人をたくさん作れるものが、映画とかドラマなんじゃないかと思っています。
池ノ辺 本当に、その通りですね。
インタビュー / 池ノ辺直子
文・構成 / 佐々木尚絵
撮影 / 岡本英理
監督
1970年兵庫県生まれ。大阪府立大学総合科学部卒業。南カリフォルニア大学テレビ映画画学科留学中、SPECコマーシャル「Balderdash」で優秀演出賞受賞。帰国後、テレビドラマを中心にテーマパーク演出、舞台演出も。監督、プロデューサーとして活動。代表作「石の繭」「孤高のメス」「邪神の天秤」(WOWOW)、「シグナル」(関西テレビ)、「安楽椅子探偵、登場」(ABC朝日放送)、「相棒」(テレビ朝日)。ハリウッド仕込みの映像演出で緊張感のある作風を得意とする。夢は子供の頃から一貫して「STAR WARS」の監督をすること。
十角形の奇妙な外観を持つ館‟十角館”が存在する、角島。1986年“十角館”を建てた天才建築家・中村青司は、焼け落ちた本館・青屋敷で謎の死を遂げた。半年後、無人島と化していた角島に、K大学ミステリ研究会の男女7人が合宿で訪れる。その頃、海を隔てた本土では、かつてミス研メンバーだった江南孝明のもとに、死んだはずの中村青司から1通の手紙が届く。調査を進めるなか江南は、島田潔という男と出会い、行動を共にすることに。一方“十角館”では、ミス研の1人が何者かに殺害される。疑心暗鬼に陥り、互いに仲間を疑いはじめるメンバーたち。孤島である角島から出ることができるのは1週間後。2つの物語から起こる、想像を超えた衝撃の結末とは。
監督:内片輝
原作:綾辻行人「十角館の殺人」(講談社文庫)
出演:奥智哉、青木崇高、濱田マリ、望月歩、長濱ねる、今井悠貴、鈴木康介、小林大斗、米倉れいあ、瑠己也、菊池和澄、池田鉄洋、前川泰之、河井青葉、草刈民代、角田晃広、仲村トオル
©綾辻行人/講談社 ©NTV
Huluで独占配信中
公式サイト jukkakukannosatsujin/