それは役者の育成から始まった
池ノ辺 私も拝見しましたが、私にとっては文章でわからなかったところが映像化されたことで「そういうことだったのか」とわかった感じでした。それと、キャスティングが素晴らしかった。
内片 オーディションとワークショップを行いました。最初は100人くらいからスタートして、そこからさらにオーディションで段階的に人数を絞っていきました。それが撮影の1ヵ月くらい前です。
池ノ辺 K-POPのサバイバル番組みたいですね。
内片 確かに。実際のワークショップは作品名も詳しい内容も言わずに進めていきました。作品名を伝えると原作を読むから、自分がどの役の何を求められているのかがある程度わかってしまいますからね。そういう余計な色はつけたくなかったんです。それで彼らは、なんの作品かもわからない、「Huluの連続ドラマらしい」というだけでついてきてくれました。
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池ノ辺 ドラマを観て、役柄にぴったりだと思ったのは、そういうわけだったんですね。撮影現場ではどうでしたか。
内片 特に“十角館”の中は若者しかいないんですよ。大学生の設定なので、芝居を引っ張ってくれるベテラン俳優はそばにいない。つまり良い芝居にするには、自分たちで協力し合わなければいけない、という状況だったんです。
池ノ辺 まさにストーリーそのままの状況だったんですね。
内片 本当に合宿のような感じになっていました。そんな中で、自分たちでもよく話し合って、こちらの話もよく聞いてくれて。
池ノ辺 そうやって、どんどん出来上がっていったわけですね。
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内片 一方で、監督としては例のトリックをどう撮ってどう映像で成立させてみせるか、それはもう1つの重要なファクターとしてあったので照明・撮影部含め全員で臨みました。1つ1つのショットがどう繋がるか、ちゃんと機能しているか、本当に全部のショットに対して神経を使いましたよ。
池ノ辺 綾辻先生は、出来上がった作品を観てなんとおっしゃっていましたか。
内片 笑顔で「マルです」と。ホッとしました。
池ノ辺 「してやったり」ですか(笑)。
内片 いや、そんな偉そうなことは思わなくて(笑)。綾辻さんとしては、読者の皆さんをがっかりさせたくないというのがまずあって、同時に内片に期待もしてくださっていたと思うので、まずは喜んでもらえたならよかったと。映像化するにあたって「作品は自分の子どもみたいなものだから、簡単には『うん』と言いたくないんだ」というようなことをおっしゃっていましたから、その気持ちを裏切りたくないというのは大きかったです。
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