Nov 21, 2023 interview

山崎貴 監督が語る 『ゴジラ-1.0』のこだわりの詰まった超豪華な音と映像を余すところなく体感してほしい

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何もないところで、人は生きるためにどう抗うのか

池ノ辺 今回の時代設定は、どう決めたんですか。

山崎 昭和時代というのは最初から思っていて、というのも僕は初代のゴジラが好きなんで、ああいう画を作りたいというのがありましたから。それでいろいろ考えているうちに、敗戦直後の、兵器が何もないときにゴジラが来てしまったら、人はどうやってゴジラに抗うんだろうか、という設定が面白いと思ったんです。そこから、当時の日本の戦闘機や戦艦などの残存兵器を調べまくりました。これはすでに沈められている、これは引き揚げ船として使っているので日本に権利がある、そういう細かいところを調べていって、本当に狭い範囲のあの時期に決定したんです。

池ノ辺 神木(隆之介)くんは、ようやく日本に戻ってきた帰還兵の役でした。さらにヒロインにはNHK連続テレビ小説『らんまん』で夫婦役だった浜辺美波さん。私はその朝ドラを毎日見てましたから、2人がどんどん役者として成長していって遂にゴジラに出演かと思ったんですが、ゴジラの方が先だったんですね(笑)。

山崎 朝ドラを見て決めたと言われるのは本当に腹立たしいんですよ(笑)。僕たちが先ですからね。

池ノ辺 監督もドラマは見てたんですよね。

山崎 もちろんです。まあ、決まったものはしょうがないですからね。「らんまんロス」を補うように、ゴジラの2人を見にきてくれる人が増えればいいかなと、気持ちを切り替えました。

池ノ辺 あの2人が見られるので皆さん喜んでると思います。監督があの2人に決めたのはどうしてですか。

山崎 まずは昭和感です。昭和の世界にいて違和感のないタイプで、かつ(演技が)上手い人たち。怪獣映画というのは、目の前に見えていないものを恐れなければいけないので、実は難しいお芝居が求められるんです。リアクションの出来によっては怪獣がちっとも怖くなくなってしまうということもある。ですから、リアクションする人間のお芝居はすごく大事です。あとは、文芸作品にしたかったので、そういうところでちゃんと映画として成り立つような人たちをキャスティングしました。

池ノ辺 そういう意味では、2人は確かに昭和の感じがありました。

山崎 浜辺さんは、もちろん現代ものもできるんですけど、メイクや髪型によっては、東宝のあの時代の作品に出てくるような昭和の女優の風情が備わっている人でした。時代を超えた不思議な感じがあるんですね。

池ノ辺 神木くんは、精神的に追い詰められた感じもすごく出ていました。

山崎 それは本人の努力によるものが大きいと思います。最初にシナリオを読んでもらった段階でいろいろと話はしました。戦争に行って、仲間が死んでいく中で自分だけ生き残ってしまった、自分は生きてちゃいけないんじゃないかと思う、それはどんな人間なんだろうな、どんな気持ちなんだろうな、ということなどを話しました。後から聞いたのは撮影の最中に鏡を見ながら「お前なんて生きてちゃいけないんだよ」と話しかけてたとか。それは危険だからやめなよと言いましたけどね。

池ノ辺 それは途中で辛くなったのでやめたと、どこかのインタビューで話してましたね。役者として本当に素晴らしいところまで達していた2人でしたが、私が気になったのは明子ちゃんです。あの子はどこから見つけてきたんですか。素晴らしかったけど、あれは演技じゃないですよね。

山崎 当時まだ2、3歳ですからね。撮影は大変でした(笑)。撮るとなると、現場に緊張感がはしるんで、敏感に察知して泣いてしまうんです(笑)。後からつなげてみると何とかナチュラルに見られますけどね。