Sep 13, 2023 interview

齊藤工 監督が語る 素晴らしい俳優陣を世界に知らしめたいという夢を持って作った『スイート・マイホーム』

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変わりゆく映画に寄り添い続けたい

池ノ辺 今回は監督に徹しての映画作りでしたが、撮影中のエピソードなどありますか。

齊藤 新居、つまり主人公一家が住む家に関して言えば、語らない人間みたいな、家の人柄みたいなものが表現できないだろうかということはどこか思っていました。また、本当に恵まれた場所ではあったんですが、裏手に大きな観音様があったり、モデルルームなのでオフィス棟があったりして、アングルには随分創意工夫が必要でした。

池ノ辺 長野が舞台のお話なんですよね。

齊藤 撮影は仙台です。“寒さ” というのはこの物語の表現で重要なキモの一つなので、雪のショットを撮りたいとは思っていましたが、天候に関しては本当に神のみぞ知るで、思わぬところで降ったりいいところで降ってくれなかったり、それでも結果的には思ったより少し大降りではありましたが、なんとか雪のショットも撮れました。そこは映画の神様の微笑みをちょっと感じましたね。

池ノ辺 裏手の観音様も見守ってくれてたんですね。そういえば、監督は撮影中の食事にも気を遣ってられたと聞きました。

齊藤 撮影の現場では、長期戦になるほど、そこでの食事がスタッフやキャストのクリエイティビティに影響してくるんじゃないかとずっと思っていまして、徹底しているというほどではないんですが、なるべくオーガニックのものにしたり、毎食お味噌汁をつけたり納豆を差し入れたりということをしていました。特に発酵食品は日本の食の長所というか素晴らしい知恵だと思うので、これからも積極的に取り入れていきたいと思っています。窪田正孝さんも窪塚さんも、そうした健康志向の強い役者さんなので、そこはもっと徹底しても良かったかなと思いました。

池ノ辺 食事は大事なことですよね。体が資本ですから。

齊藤 クリエイティブとフィジカルと、全てつながっていると実感しています。

池ノ辺 最後の質問になりますが、齊藤監督にとって映画ってなんですか。

齊藤 映画は、100年以上の歴史がありながら、形は少しずつ変えてきています。そして今は、アメリカでの俳優たちのストライキ、そうしたことも含めて大きな変わり目に差し掛かっているという気がしています。日本には逆にそうした組合がないので、先行きはまた別の形になるかもしれませんが。

劇場のスクリーンは窓だと僕は思っていて、その窓から行ったことのない場所、例えば宇宙に行き、スーパーヒーローや別の生物になるという疑似体験をする。そして自分にとっての映画というものを考えた時、映画を観ることで自分の中に何かが積み重なり、何かが豊かに色づいていく感覚というのは確かにあって、その恩恵のみで今自分が存在していると感じています。それは自分の人生を形成している衣食住と同じくらい大事なものです。だからこの変わりゆくエンターテインメント、映画を観続け、これからも寄り添い続ける責務があるし、その選択肢しかないですね。今回の作品も、映画館で見てもらうために作った、その意識は作品に充満させています。

池ノ辺 次の作品も楽しみにしています。

齊藤 実は明後日からクランクインです(笑)。短編ですけど。

インタビュー / 池ノ辺直子
文・構成 / 佐々木尚絵
撮影 / 藤本礼奈

ヘアメイク /  赤塚 修二  
スタイリスト / 三田真一(KiKi inc.)

プロフィール
齊藤 工(さいとう たくみ)

監督

1981年生まれ、東京都出身。パリコレクション等モデル活動を経て2001年に俳優デビュー。 俳優業の傍らで20代から映像制作にも積極的に携わり、齊藤工 名義での初長編監督作『blank13』(2018)では国内外の映画祭で 8冠を獲得。『フードフロア:Life in a Box』(2020)では、 AACA2020(アジアン・アカデミー・クリエイティブ・アワード)に て、日本人初の最優秀監督賞を受賞した他、『バランサー』 (2014)がオレゴン短編映画祭2020で最優秀国際映画賞受賞、 『COMPLY+-ANCE』(2020)がLA日本映画祭2020でW受賞した。 俳優としての主な出演作に、『虎影』 (2015) 、『団地』『無伴奏』(2016)、『昼顔』(2017)、 『MANRIKI』(2019)、『糸』(2020)、『孤狼の血 LEVEL2』(2021)、『シン・ウルトラマン』(2022)、 『イチケイのカラス』『THE LEGEND & BUTTERFLY』『シン・仮面ライダー』『零落』(2023)など多数。

作品情報
映画『スイート・マイホーム』

冬が厳しい長野。スポーツインストラクターの清沢賢二は「まほうの家」と謳われた一軒のモデルハウスに心を奪われる。寒がりの妻と娘のために、たった1台のエアコンで家中を隅々まで暖められるというその家を建てる決心をする賢二。新居が完成し、家族に2人目の娘も加わって、一家は幸せの絶頂にいた。ところが、その家に越した直後から奇妙な出来事が起こり始める。まとわりつく様な何かの気配。赤ん坊の瞳に映るおそろしい影。地下に捕らわれ、泣き叫ぶ娘。次第に明かされる、秘められた過去‥‥。「家」を取り巻く恐怖の連鎖は家族だけに留まらず、関係者の怪死などに波及し始め、そして予想を超えた衝撃の結末に向けて加速していく。

監督:齊藤工

原作:神津凛子「スイート・マイホーム」(講談社文庫)

出演:窪田正孝、蓮佛美沙子、奈緒、中島歩、里々佳、松角洋平、根岸季衣、窪塚洋介

配給:日活、東京テアトル

©2023『スイート・マイホーム』製作委員会 ©神津凛子/講談社

公開中

公式サイト sweetmyhome

池ノ辺直子

映像ディレクター。株式会社バカ・ザ・バッカ代表取締役社長
これまでに手がけた予告篇は、『ボディーガード』『フォレスト・ガンプ』『バック・トゥ・ザ・フューチャー シリーズ』『マディソン郡の橋』『トップガン』『羊たちの沈黙』『博士と彼女のセオリー』『シェイプ・オブ・ウォーター』『ノマドランド』『ザ・メニュー』『哀れなるものたち』ほか1100本以上。
著書に「映画は予告篇が面白い」(光文社刊)がある。 WOWOWプラス審議委員、 予告編上映カフェ「 Café WASUGAZEN」も運営もしている。
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